【薬局業界ニュースは薬剤師国家試験出題に関係ない?】業界紙記者×国試対策校の対談

【薬局業界ニュースは薬剤師国家試験出題に関係ない?】業界紙記者×国試対策校の対談

【2022.12.02配信】このほど、業界紙「ドラビズon-line」は、「薬局業界ニュースは薬剤師国家試験出題に関係ない?」をテーマに、薬剤師国家試験対策校のメディセレ社長の児島惠美子氏と紙上対談を実施しました。


 編集部:児島先生、こんにちは。今日は「薬局業界ニュースは薬剤師国家試験出題に関係ないのか」というテーマでお話おうかがいさせていただきます。よろしくお願いします。

 児島先生:はい、よろしくお願いいたします。

 編集部:まず、当業界紙「ドラビズon-line」でも数多くのニュースを掲載してきたのがコロナワクチンについてです。コロナワクチンがたくさん出ましたね。具体的にはファイザー、モデルナ、武田の各社です。
https://v-sys.mhlw.go.jp/about/
 ワクチンの接種は薬剤師さんはできませんが、打つ前、打った後に地域の方々からの質問に十分に答えられる必要があるということが業界では話題になりました。そこで、mRNAワクチンとはなんなのか、組換えたんぱくワクチンとはなんなのか、国試問題に出るのではないでしょうか?

 児島先生:良い視点ですね。
 ただ、ワクチンが使用されてから、まだ2年に満たないです。
 ゆえにmRNAワクチンの出題は、まだ時期尚早かなと思います。
 しかし、mRNAやタンパク質は生物で学ぶ大切な事です。ゆえにそれを投与することで免疫反応で抗体を獲得するという生物の基礎知識がまずは大切です!ここは一般的な書き方でワクチンを踏まえて出題されると思います。

 編集部:なるほど、市場に出てからの期間も1つの目安になるのですね。

 続いて、コロナ経口薬に関してです。
 コロナ感染後の経口薬もたくさん出ました。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/medicine.html
 ラゲブリオ、パキロビッドなどです。
 そこで、これら経口薬に関する問題が出るのではないでしょうか?

 児島先生:これも気になる所ですよね。
 こちらについても、使用開始から日が浅く、医薬品の有効性や危険性について、不明な点が多く、実は問いづらい内容です。
 ただ、機序は今後、薬理で問われるかもしれません。
 まずは出るとしたら、ラゲブリオやパキロビッドより先にファビピラビル(アビガン)かなと。

 また催奇形性が問題となる医薬品ですので、その他の妊娠禁忌の医薬品を含めて問う可能性が今後はあります。

 編集部:なるほどです! とても参考になります。

 続いて、緊急承認制度についてです。
 塩野義製薬の「ゾコーバ」が緊急承認制度として承認されましたね。
 緊急承認という制度自体も新しいものではありますが、制度に関する問題なども出る可能性があるのでしょうか?
 これまで新制度について問題が出たことはありますか?

 児島先生:新制度(いわゆる法改正)に関しては、少なくとも1年経過しないと出題されません。

 緊急承認は2022年5月にできた制度なので、108回では出ないことが予想されます。でも、薬学生の知識としては知っておいて欲しいです。

 編集部:なるほどです。制度創設からの期間も出題に関係するのですね。
 関連ですが、コロナ検査キットについてはいかがでしょうか? 鼻ぬぐい液を検体とする検査薬を市販できるようになったのは初めてのことです。
 こうした検査の機序について出題の可能性もあるのでしょうか?
 これまで市販薬の検査、例えば妊娠検査薬や排卵日検査薬に関する出題はありましたか?

 児島先生:抗原検査薬の原理については、分析化学や生物学でよく問われる内容です。
 106回では妊娠検査薬が出題されました。

 この範囲については出題される可能性が高井ですので、コロナに限定せず、しっかり学んでおく必要があります。

 編集部:なるほど、「検査関連は出る」と。

 続いて、OTC医薬品に関してです。
 
 最近、OTC医薬品で注目を集めたのは、海外では抗肥満薬として使用されているダイレクトOTCの「アライ」(大正製薬)の了承です。
 新しいOTC医薬品ではセルフチェックシートを用いるのですが、こうしたOTC化の対応についてこれまで出題されたことはありますか?

 児島先生:スイッチOTC、ダイレクトOTCに関しては、セルフメディケーション推進の政策もありますので、大切です。
 セルフチェックシートの出題はまだありません。
 セルフチェックシートは、今年度できたものではないので、108回に出題される可能性は高いですよ!

 編集部:了解です! 児島先生、最後に総括をお願いいたします。こうした業界動向出題に影響を与えるのでしょうか? 薬学生もニュースをチェックしておいたほうが国試対策になりますか?

 児島先生:業界動向は国試でも出題されますので、大切です。
 ただ、国試はエビデンスがしっかりしたものを出題されます。

 ですので、法改定すぐ、新薬がすぐ、問題に出るのではなく、1年以上経って根付いてから出題される事が一般的です。
 ただ、大学での定期試験や卒業試験では、すぐに出てくる事がありますので、気をつけましょう。

 医療人として、医療のニュースにはアンテナを張っておいてくださいね。知識は誰からも奪われない財産となりますので。
 
 編集部:児島先生、今日はありがとうございました!

メディセレに関しては下記ホームページまで
https://www.medisere.co.jp/

この記事のライター

関連する投稿


【最新2023年度版 薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、慶應義塾大学、北里大学、星薬科大学、東邦大学

【最新2023年度版 薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、慶應義塾大学、北里大学、星薬科大学、東邦大学

【2023.10.15配信】文部科学省はさきごろ、薬学部における修学状況等 2023 年度調査結果を公表した。 https://www.mext.go.jp/content/202309011-mxt_igaku-100000059_01.pdf


【薬剤師国家試験の試験日決定】令和6年2月17日(土)および18日(日)/第109回薬剤師国家試験

【薬剤師国家試験の試験日決定】令和6年2月17日(土)および18日(日)/第109回薬剤師国家試験

【2023.08.31配信】厚生労働省は8月31日、第109回薬剤師国家試験について官報告示した。試験日は令和6年2月17日(土)および18日(日)。


【第108回薬剤師国試】 「正答率60%以上の問題」、前回228問から今回は264問に増加/メディセレ寄稿

【第108回薬剤師国試】 「正答率60%以上の問題」、前回228問から今回は264問に増加/メディセレ寄稿

【2023.02.27配信】厚生労働省は2月18日・19日、「第108回薬剤師国家試験」を実施した。本紙ではメディセレ社から、第108回国試の分析をいただいた。同社では、「正答率60%以上の問題」については、前回228問から今回は264問に増加していたと分析している。以下、株式会社Medisere(メディセレ)代表の児島惠美子氏による寄稿。


【21年度薬剤師国家試験】大学別“ストレート合格率”一覧/私大トップは京都薬科大学の87.5%

【21年度薬剤師国家試験】大学別“ストレート合格率”一覧/私大トップは京都薬科大学の87.5%

【2022.03.28配信】厚生労働省は3月24日、「第107回薬剤師国家試験」の合格発表を行った。そこで、ドラビズon-line編集部では文部科学省が公表している各大学の「2016年度入学時の入学者数」と国試の「新卒合格者数」によって“ストレート合格率”を推計してみた。あくまで機械的な計算。途中の留年者が一定数いても、国試では「新卒」としてカウントされるなど6年間での合格者を純粋に示さないので、留意が必要だ。計算上では私大トップは京都薬科大学の87.5%だった。


【メディセレ寄稿】薬剤師国試合格発表/次回以降を占う合格者数水準は9500人/今回試験から相対基準への経過措置が廃止

【メディセレ寄稿】薬剤師国試合格発表/次回以降を占う合格者数水準は9500人/今回試験から相対基準への経過措置が廃止

【2021.03.24配信】厚生労働省は3月24日、第106回薬剤師国家試験の合格発表を行った。ドラビズon-lineでは、薬剤師国家試験予備校「メディセレ」社長の児島 惠美子氏に、今回の国試合格発表に関して、寄稿をいただいた。薬剤師国試に関しては第101回から、従来の絶対基準から相対基準が用いられているが、前回の105回までは経過措置が講じられていた。つまり、今回が今後の相対基準の合格者数を占うに当たって重要なターニングポイントとなる。結果は合格者9634人であり、今後のベースラインとして捉えられる。(編集部。以下は児島社長からの寄稿文)


最新の投稿


【市民団体】緊急避妊薬OTC化の試験的運用で要望書を厚労省に提出/染矢代表「調査が条件課す根拠に使われないか、非常に危惧している」

【市民団体】緊急避妊薬OTC化の試験的運用で要望書を厚労省に提出/染矢代表「調査が条件課す根拠に使われないか、非常に危惧している」

【2023.11.28配信】適切かつ安全に緊急避妊薬にアクセスできる社会の実現を目指す「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」は11月28日、「緊急避妊薬OTC化の試験的運用の周知、及び迅速かつ全面的なOTC化実現を求める要望書」を厚生労働省に提出した。厚労省は医薬局医薬品審査管理課長の中井清人氏が受け取った。同日、試験的運用が開始されたことを受けたもの。


【日本薬剤師会】「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業」HP公開/都道府県別対応薬局リストも閲覧可能

【日本薬剤師会】「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業」HP公開/都道府県別対応薬局リストも閲覧可能

【2023.11.28配信】日本薬剤師会は11月28日、「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業」に関する一般向けのホームページを公開した。同日から同事業が開始されることに合わせたもの。


【医療保険者団体】診療報酬改定要望を武見厚労相に提出/薬価改定では「市場実勢価格引き下げ分は国民に還元を」

【医療保険者団体】診療報酬改定要望を武見厚労相に提出/薬価改定では「市場実勢価格引き下げ分は国民に還元を」

【2023.11.27配信】健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会、全日本海員組合、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会の6団体は連名で、武見敬三厚生労働大臣宛てに「令和6年度診療報酬改定に関する要請」を提出した。


【日本薬剤師連盟】薬剤師議員懇談会開催/賃金上昇への改定財源を改めて訴える/加藤勝信前厚生労働相など参席

【日本薬剤師連盟】薬剤師議員懇談会開催/賃金上昇への改定財源を改めて訴える/加藤勝信前厚生労働相など参席

【2023.11.27配信】日本薬剤師会は11月27日、自由民主党薬剤師問題議員懇談会総会を開催した。年度の会計報告を含めた総会を実施するとともに、改めて薬局が物価高騰・賃金上昇に対応するために必要な診療報酬改定財源の確保などを直接、国会議員に求めた。


【訃報】東邦ホールディングス濱田矩男最高顧問

【訃報】東邦ホールディングス濱田矩男最高顧問

【2023.11.27配信】東邦ホールディングスで長く経営トップとして活躍してきた濱田矩男最高顧問が死去した。83歳。


ランキング


>>総合人気ランキング