【日本薬剤師会・山本信夫会長/年頭所感】「調剤業務の委受託や員数規制の緩和、専門家不在時のOTC薬販売などの規制改革の圧力には薬剤師の必要性を主張していく」

【日本薬剤師会・山本信夫会長/年頭所感】「調剤業務の委受託や員数規制の緩和、専門家不在時のOTC薬販売などの規制改革の圧力には薬剤師の必要性を主張していく」

【2023.01.01配信】日本薬剤師会会長の山本信夫氏は、2023年年頭にあたり、「新年の挨拶」を公表した。その中で、調剤業務の委受託、員数規制の緩和、専門家不在時のOTC薬販売などの薬剤師として看過できない規制改革の案件に対しては、「医療安全の確保や責任体制の明確化等の視点で、薬剤師の必要性を主張していく」とした。


 日本薬剤師会・山本信夫会長の「令和5年新年の挨拶」は以下の通り。

 新年あけましておめでとうございます。皆様におかれましては、お健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。また日頃から、日本薬剤師会の活動にご理解を賜り、ありがとうございます。

 調剤報酬改定における調剤料等の再編、リフィル処方箋の導入、「薬学部の入学定員抑制」方針への転換等、昨年は薬剤師にとってエポックメーキングな年でありました。一方、政治面では、薬剤師参議院議員2人態勢の維持に寄せられた皆様のご支援、ご協力にあらためて厚く感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染者が確認されて以来、多くの薬局・薬剤師は自らの感染リスクも顧みず、地域住民への医薬品や抗原定性検査キットの提供、ワクチン接種体制への協力に加えて、感染拡大防止・公衆衛生等の知識啓発にも存在感を発揮し、「いかなる時も、医薬品の供給体制は薬局・薬剤師が守る」気概を、広く社会に示せたものと確信しています。一方、新型コロナウイルス感染症を奇貨として、迅速な開発力を有する製薬産業育成に向け「産官学」一体の長期政策が求められ中、一部製薬会社の不祥事に伴う医薬品供給のひっ迫は未だ先行きが見えず、医薬品全般にわたる供給不足は医薬・医療関係者に新たな負担を強いるばかりか、適切な治療の維持をも脅かしかねず、こうした事態再発防止への早急な対策が求められます。

 オンライン資格確認等システムや「電子処方箋」に対応すべく、薬剤師資格証(HPKIカード)の発行を進めておりますが、患者・医療現場に混乱が生じない「誰もが理解しやすい」仕組みとして活用できるよう積極的に関わって参りたく思います。

 また、逼迫する医療費を抑制する方針の下、本年4月に予定される中間年薬価改定は「その及ぼす影響が甚大かつ広範囲」であることから、「改定の対象範囲厳守」を求める一方、新型コロナウイルス感染症の影響や物価高騰による薬局経営の悪化等も考慮して、薬局に対する必要な財政的支援を要望しています。

 また、次期医療計画の基本方針や医療計画作成指針に、病院・薬局の薬剤師確保を盛り込み、医療計画全ての場面で的確な医薬品提供を可能とする、地域医療計画と整合性のある「地域医薬品提供計画」策定を要望しています。

 一方、規制改革の圧力はなお衰えず、調剤業務の委受託、員数規制の緩和、専門家不在時のOTC薬販売など薬剤師として看過できぬ案件には、医療安全の確保や責任体制の明確化等の視点で、薬剤師の必要性を主張して参ります。

 薬局・薬剤師も大きな業務の転換に迫られており、多職種連携、適切な患者フォローアップ、一元的・継続的な薬物療法の提供とともに、地域住民の健康維持支援の拠点としてその役割を着実に果たすことが求められています。

 我が国の医薬品安全と医療提供体制の確保に向け、全国の薬剤師とともに諸課題解決に取り組んで参ります。
 結びに、皆様のますますのご降盛を祈念申し上げ、新年の挨拶といたします。

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