埼玉県薬剤師会会長の斉藤祐次氏は、大野知事からの要望の中に、「休日に薬剤師が不在で検査キットを買えない場合があるため、なるべく対応してほしい」という内容があったとし、「当会への要望であるため、特に会員の中でドラッグストア業態もあれば周知していく」と話した。
 埼玉県薬剤師会だけでなく、日本薬剤師会はかねてから、薬局で抗原検査キットを販売するよう周知に努めてきた。ただ、土日の薬剤師配置となると、経営上の負担が重くなることも考えられ、どこまで徹底するかは個別の薬局の判断に委ねるしかないのが実情だ。斉藤会長は、「特に第1類医薬品は薬剤師が販売するべきものであり、相談の窓口として薬局が機能を担うべきだ」との考えを示している。
 販売店舗や販売曜日・時間が限定される状況下にあるが、埼玉県薬剤師会では県内の会員薬局における検査キットの取り扱い店をホームページで案内。リストには薬局の販売対応時間なども掲載しているため、市民での活用を促している。
https://saiyaku.or.jp/
 
 販売店舗の状況に関しては、厚生労働省もホームページで公開。どこで入手できるのか分かりづらいとの声に応えている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082537_00001.html
 一方、大野知事が“ドラッグストアでの購入”について言及したことについては、ドラッグストアの中には薬局として許認可を受けている店舗と、店舗販売業という登録販売者だけでも許認可を受けられる店舗との、行政の許認可の違いがあることが、一般に知られていないのではないかとの懸念も薬局関係者からは挙がる。「店舗販売業」では薬剤師が配置されていないケースも少なくないため、許認可の違いを理解しておく必要もありそうだ。
 加えて、大野知事も参加している全国知事会では、コロナの抗原検査キットを登録販売者でも販売できるようにすることの検討などを提言書で求めている。
 医薬品のリスク分類に関しては、「副作用」や「患者背景」、「使用方法」等を鑑みることとされており、コロナ検査キットに関しては、これらの事項を総合的に判断して1類が妥当とされたもの。使用方法への十分な説明が必要との指摘も審議会では委員から出ていた。
 コロナの感染状況や病態の変化によっても考え方に変化が起きる可能性はあるとしても、現状は薬剤師によって販売される第1類薬に分類されているため、現状下では、より多くの薬局で検査キットが販売されることが理想的といえそうだ。アクセスを優先するか、専門家の介入を優先するかの議論は難しいが、少なくとも検査キットがOTC化されたタイミングにおいては、例えば陽性の結果が出た場合に医療へつなぐ役割も含めて薬剤師の専門的知見が必要とされる場面もあったのではないだろうか。
 
  【検査キット問題】埼玉県薬剤師会・斉藤祐次会長「再周知・徹底する」
【2022.11.21配信】コロナの第8波やインフルエンザとの同時流行への対策が進められる中、抗原検査キットの販売体制の不備を指摘する声が大きくなっている。大野元裕・埼玉県知事は11月18日、埼玉県薬剤師会に対して“休日対応”への要望を行った。この件について、埼玉県薬剤師会会長の斉藤祐次氏は本紙に対し、18日の時点で大野知事からコロナ検査キットの「販売体制の充実について」との要望を受け取ったとした上で、会員への再周知・徹底など、「しっかりと対応していきたい」と話した。
関連する投稿
【一般用抗原定性検査キット】コロナ“第11波”で薬局入手困難に
【2024.08.29配信】新型コロナウイルス感染症の“第11波”ともいわれる感染拡大で、一般用抗原定性検査キットが不足している。日本薬剤師会は厚生労働省に対し、不足解消に向けた措置を要望した。
【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上
【2024.07.25配信】厚生労働省は7月25日に「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」を開催し、体外診断用医薬品の特性を踏まえた制度の見直しについて議論した。その中で「研究等の医療以外の用途を標榜する試薬の提供業者への対応」を議題とした。
【抗原検査キット】取り扱い薬局リストの厚労省での公表が終了/日本薬剤師会のHPへ移行
【2024.04.10配信】日本薬剤師会は4月10日に定例会見を開いた。その中で抗原検査キットの取り扱い薬局リストについて、厚労省HPでの公表が終了することに伴い、当面の間、日本薬剤師会のHPに掲載すると報告した。
【抗原検査キットの販売実態】偽陰性の可能性説明、遵守低い結果/厚労省
【2023.09.01配信】厚生労働省は9月1日、「医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表した。今回の令和4年度調査では、一般用新型コロナウイルス抗原定性検査キットの販売時の情報提供の状況に係る調査も実施した。同品の販売にあたっては厚労省が販売時に偽陰性の可能性があること等について特に丁寧に説明することなどの留意事項を示しているが、これらの事項について情報提供を行っていた割合は低い結果だった。
【コロナ禍の薬局】時間外に抗原検査キット販売協力/八戸薬剤師会(青森県)の事例/会員146薬局中62薬局が対応
【2023.05.31配信】5類移行となったコロナ。これまでの間、薬剤師会、薬局、薬剤師はどのような活動をしてきたのか。ワクチン接種会場での協力や患者自宅への治療薬のお届けなど、その貢献は数多いが、本稿では八戸薬剤師会の事例から抗原検査キット販売協力への対応を取り上げたい。社会からの要請に応える形で、会員薬局の4割がイレギュラーな営業時間外で販売対応した。
最新の投稿
【東京都・厚労省】11月24日に「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動東京大会」
【2025.10.29配信】東京都薬務課は10月29日に定例会見を開き、令和7年11月24日(月曜日・祝日)13時30分から15時45分まで、令和7年度「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動東京大会」を開催することを説明した。今年は2年に一度の厚労省との共催年で、広い層に関心を持ってもらうため、多彩なタレントを招聘している。
【東京都薬務課】試買で指定薬物検出/前年9品目増の11物品から
【2025.10.29配信】東京都薬務課は10月29日、定例会見を開き、試買検査によって11物品から危険ドラッグを検出したことを説明した。9月29日に公表済み。前回公表の昨年11月の検査結果では2物品からの検出であり、薬務課では「11物品からの検出は多く驚いている」としている。今回の結果を受け、今後の試買を適切に行っていく方針。
【敷地内薬局】日医委員、診療所除外規定「削除も含めて検討すべき」/中医協
【2025.10.24配信】厚生労働省は10月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、「敷地内薬局」を個別事項として議論した。敷地内薬局を巡っては、令和2年度診療報酬改定において従来から存在する医療モールへの配慮として、「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」で除外規定が設けられていた。しかし昨今、特別な関係のある病院の敷地内にある保険薬局の同一建物に、別途診療所を誘致することで、ただし書きにより、特別調剤基本料Aの対象となることを回避する薬局事例などが問題になっていた。この問題に関連し、日本医師会委員は「ただし書きの削除も含めて検討すべき」と述べた。
【2025.10.24配信】厚生労働省は10月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、「敷地内薬局」を個別事項として議論した。この中で日本薬剤師会(日薬)副会長の森昌平氏は前回改定で答申書付帯意見に落ち着いた敷地内薬局の“グループ減算”について、「敷地内薬局問題の改善が見えないのであればこのグループ減算も含め、あらゆる措置を引き続き検討していく必要があると考える」と述べた。
【日本保険薬局協会】“48薬効”、一定販売実績は3カテゴリーのみ/調査公表
【2025.10.23配信】日本保険薬局協会は10月23日、定例会見を開き、「一般用医薬品等の取扱いに係る調査報告書」を公表した。それによると、地域支援体制加算の届出薬局等に求められる「基本的な48薬効群」に関して、1カ月間で販売実績があった割合が30%を超えたのはわずか3カテゴリーに留まったとした。協会では「一律的な備蓄」から、「地域医療のニーズや、薬剤師の専門的な知見に基づき推奨する品目を備蓄する」という、柔軟な仕組みを求めたい考え。
 
 
     
	      



















