【文科省】薬学部の定員抑制へ/令和4年度中に制度化

【文科省】薬学部の定員抑制へ/令和4年度中に制度化

【2022.07.22配信】文部科学省は7月22日、「薬学部教育の質保証専門小委員会」を開き、薬学部の新設や定員増に抑制方針をとるとの「とりまとめ案」をおおむね了承した。細かな表現の見直しを経て、8月にも開催される親会議である「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」に報告する。委員会の中で事務局は令和4年度中に制度化を図り、令和7年度からの新設・入学定員分となる令和5年度の申請分から新制度が適用される見通しだとした。


 とりまとめ案の中では、6年制課程の薬学部・学科の新設・収容定員増について、「これまで大学の判断により自由に申請が可能であり、学校教育法及び大学設置基準等の法令に適合していれば原則として認可されてきたが、その原則を改め、抑制方針をとる」とした。「速やかに制度化を進める」方針。

 委員会の中で事務局は、令和4年度中に制度化を図り、令和7年度からの新設・入学定員分となる令和5年度の申請分から新制度が適用される見通しだとした。

 地域偏在への対応として新設・定員増に関して例外的な取り扱いを記載。都道府県の医療計画などで薬剤師不足が指摘され、他都道府県との比較で薬剤師の確保を図るべきと判断できる場合には、抑制方針の例外として取り扱うとした。

 ただ、その場合も、例外措置は一定期間のみ認めるとした。「一定期間」がどの程度の期間なのか、具体的な年数について方針は示されていない。また過度に定員が増加することがないよう、増加する定員規模の適切性について十分な検討を行うとした。

 入学定員の見直しは、 「入学定員充足率」「実質競争倍率」「標準修業年限内の卒業率」「国家試験合格率」「退学等の割合」などを基に実施される見通し。
 定員未充足の大学に対しては、私学助成について減額率の引き上げや不交付の厳格化などメリハリある財政支援を行うことで、一層の入学定員の適正化を求めていく方針。

 出席した委員からは適用が令和5年度からになることで、それまでの“駆け込み”的な申請に懸念も示された。

 そのほか、地域偏在に対応するための例外措置に対しては「その都道府県になければ薬剤師は確保できないのか」「薬学部で育成しても他県に就職することも考えられる」など、実効性を疑問視する声も上がった。「オンラインなどの活用を考慮すべき」との声もあった。

 今回の薬学部定員の抑制が、厚労省の薬剤師需給調査に基づいていることから、同調査の「需要」に着目することも重要との意見も出た。
 西島正弘氏(薬学教育評価機構理事長)は、「厚労省の検討会では、現在の調剤中心の薬剤師の職域を広げなければ需給問題は解決しないとの意見があった」と述べ、とりまとめ案にも薬剤師の職域拡大の重要性を記載してほしいと求めた。

 厚労省が2045年に最大で12万人の薬剤師が過剰になる可能性があるとの薬剤師の需給推計を公表したのが2021年の4月。ここから1年数カ月ほどで文科省の定員抑制制度化方針が決まったことになる。

 厚労省の対応が大きく事を動かした要因も大きく、加えて文科省の同委員会の主査である乾賢一 氏(日本薬学教育学会理事長)が薬学部の現状に強い危機感を持っていたことも促進力になったとの見立てがある。

 ただ、質の高い薬剤師をどう育成するかは、定員問題だけで解決したわけではない。
 今回のとりまとめ案にも記載されているが教職員の能力向上は不可欠。あるいは優秀な教員の確保の問題もクローズアップされている。
 厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」とりまとめ(令和3年6月公表)でも、薬学教育が6年制に移行し大学院が4年の博士課程になってから、大学院に進学する学生が大きく減少していることを問題視している。大学院の充実と定員の確保は、教員確保問題にも直結するからだ。関係者間では、特に臨床に係る知識・経験を有する教員の育成の問題が大きくなっていくとの危機感が強く、薬剤師として働きながら博士号の取得をしやすくする方策の必要性も指摘されている。そのためには大学だけでなく、医療機関や薬局とも連携して、社会人入学を支援するシステムを構築することが期待されている。

 加えて今後は、厚労省における詳細な需給調査も重要度を増すことになる。今後の新設・定員増の例外措置と直結することもあるが、基本的な薬剤師の確保の側面からも都道府県ごとの需給バランスが問われることになるだろう。一方で、薬学部に“空白”都道府県があることは、この詳細な育成バランス問題において、医学部のように簡単にはいかないハードルとなることが見込まれる。
 今後も関係者が一丸となった議論、取り組みが望まれる。

この記事のライター

関連するキーワード


薬学部

関連する投稿


【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【2024.04.02配信】姫路獨協大学(兵庫県姫路市)は4月1日、薬学部医療薬学科の学生募集を停止すると公表した。


【日薬】薬学部定員抑制の“例外区域“の告示案にパブコメ提出/「定員抑制の制度化の趣旨と齟齬」

【日薬】薬学部定員抑制の“例外区域“の告示案にパブコメ提出/「定員抑制の制度化の趣旨と齟齬」

【2023.08.09配信】日本薬剤師会(日薬)は薬学6年制課程の定員抑制の例外区域に関する基準の告示案に関して、パブリックコメントを提出した。8月9日の定例会見で明らかにした。定員抑制の制度化の趣旨と齟齬があるなどとしている。8日付けでは、都道府県薬剤師会会長宛てに連絡を発出し、意見提出を報告するとともに、都道府県薬で意見提出する場合には参考にしてほしいとしている。日薬では今後、文科省をはじめ関係機関に要請していく方針。


【日本薬剤師会】文科省の薬学部定員抑制“例外12県”に「容認し難い」/会員へパブコメの積極提出呼びかけ

【日本薬剤師会】文科省の薬学部定員抑制“例外12県”に「容認し難い」/会員へパブコメの積極提出呼びかけ

【2023.07.21配信】日本薬剤師会は7月21日に定例会見を開き、文科省中央教育審議会で薬学6年制課程の定員抑制の例外区域を設ける告示案が了承されたことについて、「当会としては容認し難い」とし、会員に対してパブコメの積極的な提出を呼びかける通知を発出したことを説明した。


【薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、北里大学、東京理科大学、星薬科大学、慶應義塾大学

【薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、北里大学、東京理科大学、星薬科大学、慶應義塾大学

【2023.01.25配信】文部科学省は、薬学部における修学状況等 2022 年度調査結果を公表した。 https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_igaku-100000059_01.pdf


【国会代表質問】薬学部新設で岸田首相が答弁

【国会代表質問】薬学部新設で岸田首相が答弁

【2022.10.07配信】国会の代表質問で10月7日、岸田文雄首相は薬学部新設に対して答弁した。


最新の投稿


【ドラッグストア協会】調剤売上1兆4025億円(前年比9.5%増)、市場シェアは17.8%に/第24回(2023年度)ドラッグストア実態調査

【ドラッグストア協会】調剤売上1兆4025億円(前年比9.5%増)、市場シェアは17.8%に/第24回(2023年度)ドラッグストア実態調査

【2024.04.12配信】日本チェーンドラッグストア協会は4月12日に定例会見を開き、「第24回(2023年度)日本のドラッグストア実態調査」(速報)の結果を公表した。


【日本保険薬局協会】薬剤師会の“傘下”のような取り組み、「違和感」/休日・夜間対応リスト作成で三木田会長

【日本保険薬局協会】薬剤師会の“傘下”のような取り組み、「違和感」/休日・夜間対応リスト作成で三木田会長

【2024.04.11配信】日本保険薬局協会は4月11日に定例会見を開いた。


【日本保険薬局協会】薬機法改正、「議論過程に入りたい」

【日本保険薬局協会】薬機法改正、「議論過程に入りたい」

【2024.04.11配信】日本保険薬局協会は4月11日、定例会見を開いた。


【抗原検査キット】取り扱い薬局リストの厚労省での公表が終了/日本薬剤師会のHPへ移行

【抗原検査キット】取り扱い薬局リストの厚労省での公表が終了/日本薬剤師会のHPへ移行

【2024.04.10配信】日本薬剤師会は4月10日に定例会見を開いた。その中で抗原検査キットの取り扱い薬局リストについて、厚労省HPでの公表が終了することに伴い、当面の間、日本薬剤師会のHPに掲載すると報告した。


【新生堂薬局】全店でたばこの販売を停止/2024年9月末までに

【新生堂薬局】全店でたばこの販売を停止/2024年9月末までに

【2024.04.09配信】株式会社新生堂薬局(本社:福岡市南区/代表取締役社長 水田怜氏)は4月8日、2024年9月末までに全店鋪でたばこの販売を停止することを決定したと公表した。


ランキング


>>総合人気ランキング