とりまとめ案の中では、6年制課程の薬学部・学科の新設・収容定員増について、「これまで大学の判断により自由に申請が可能であり、学校教育法及び大学設置基準等の法令に適合していれば原則として認可されてきたが、その原則を改め、抑制方針をとる」とした。「速やかに制度化を進める」方針。
委員会の中で事務局は、令和4年度中に制度化を図り、令和7年度からの新設・入学定員分となる令和5年度の申請分から新制度が適用される見通しだとした。
地域偏在への対応として新設・定員増に関して例外的な取り扱いを記載。都道府県の医療計画などで薬剤師不足が指摘され、他都道府県との比較で薬剤師の確保を図るべきと判断できる場合には、抑制方針の例外として取り扱うとした。
ただ、その場合も、例外措置は一定期間のみ認めるとした。「一定期間」がどの程度の期間なのか、具体的な年数について方針は示されていない。また過度に定員が増加することがないよう、増加する定員規模の適切性について十分な検討を行うとした。
入学定員の見直しは、 「入学定員充足率」「実質競争倍率」「標準修業年限内の卒業率」「国家試験合格率」「退学等の割合」などを基に実施される見通し。
定員未充足の大学に対しては、私学助成について減額率の引き上げや不交付の厳格化などメリハリある財政支援を行うことで、一層の入学定員の適正化を求めていく方針。
出席した委員からは適用が令和5年度からになることで、それまでの“駆け込み”的な申請に懸念も示された。
そのほか、地域偏在に対応するための例外措置に対しては「その都道府県になければ薬剤師は確保できないのか」「薬学部で育成しても他県に就職することも考えられる」など、実効性を疑問視する声も上がった。「オンラインなどの活用を考慮すべき」との声もあった。
今回の薬学部定員の抑制が、厚労省の薬剤師需給調査に基づいていることから、同調査の「需要」に着目することも重要との意見も出た。
西島正弘氏(薬学教育評価機構理事長)は、「厚労省の検討会では、現在の調剤中心の薬剤師の職域を広げなければ需給問題は解決しないとの意見があった」と述べ、とりまとめ案にも薬剤師の職域拡大の重要性を記載してほしいと求めた。
厚労省が2045年に最大で12万人の薬剤師が過剰になる可能性があるとの薬剤師の需給推計を公表したのが2021年の4月。ここから1年数カ月ほどで文科省の定員抑制制度化方針が決まったことになる。
厚労省の対応が大きく事を動かした要因も大きく、加えて文科省の同委員会の主査である乾賢一 氏(日本薬学教育学会理事長)が薬学部の現状に強い危機感を持っていたことも促進力になったとの見立てがある。
ただ、質の高い薬剤師をどう育成するかは、定員問題だけで解決したわけではない。
今回のとりまとめ案にも記載されているが教職員の能力向上は不可欠。あるいは優秀な教員の確保の問題もクローズアップされている。
厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」とりまとめ(令和3年6月公表)でも、薬学教育が6年制に移行し大学院が4年の博士課程になってから、大学院に進学する学生が大きく減少していることを問題視している。大学院の充実と定員の確保は、教員確保問題にも直結するからだ。関係者間では、特に臨床に係る知識・経験を有する教員の育成の問題が大きくなっていくとの危機感が強く、薬剤師として働きながら博士号の取得をしやすくする方策の必要性も指摘されている。そのためには大学だけでなく、医療機関や薬局とも連携して、社会人入学を支援するシステムを構築することが期待されている。
加えて今後は、厚労省における詳細な需給調査も重要度を増すことになる。今後の新設・定員増の例外措置と直結することもあるが、基本的な薬剤師の確保の側面からも都道府県ごとの需給バランスが問われることになるだろう。一方で、薬学部に“空白”都道府県があることは、この詳細な育成バランス問題において、医学部のように簡単にはいかないハードルとなることが見込まれる。
今後も関係者が一丸となった議論、取り組みが望まれる。

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