【薬剤師検討会】調剤の一部外部委託、日薬安部氏「敷地内薬局と同じ轍踏まないように」

【薬剤師検討会】調剤の一部外部委託、日薬安部氏「敷地内薬局と同じ轍踏まないように」

【2022.07.14配信】厚生労働省は7月13日に「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開き、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(WG)の「とりまとめ」内容を報告した。この中で日本薬剤師会副会長の安部好弘氏は、今後の検証手法に関して言及し「短絡的な評価はすべきではない」と注文をつけた。敷地内薬局の規制緩和と現状を例に挙げ、想定外の事態を招く可能性を危惧し、「同じ轍を踏まないように慎重に対応しなければいけない」と警鐘を鳴らした。


安部氏「営利追求のビジネスモデルや地域の医薬品提供体制の混乱起きないように」

 日本薬剤師会(日薬)副会長の安部好弘氏は、十数分の時間を割いて、WGとりまとめへの意見を述べた。

 特に調剤業務の一部外部委託については、今後進むとみられる検証に対して注文をつけた。「一包化が正しくできた」などの「短絡的な評価はすべきではない」とした。

 外部委託に関してはWGで「一包化を対象」「委託元と委託先は同一三次医療圏内」などの許容できる最小限の実施に向かって検証が進むことになっている。一方、議論の過程では、今年3月の政府規制改革推進会議「第4回医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」でも取り扱われ、その際は機械化・システム化を進めることによるメリットのプレゼンがあった。これについては、「機械化・システム化 と、今回の議論の外部委託を混同すべきではない」との声も挙がっていた。

 安部氏は「調剤の一連の結果として、医療安全が保たれたのか」や「対人業務の充実につながるのか」の検証を求めた。さらに費用面に触れ、「二重の作業や設備投資が発生する費用がまかなえるのか」と懸念も表明。
 費用面については、野木渡氏(日本精神科病院協会 副会長)からも、「外部委託すると医療費は上がる」といった意見や、病院で一時期、給食の外部委託を進めた経験から、「どんどん値段を上げられても元に戻せない」ことへの危惧も表明されていた。
 
 安部氏も外部委託が実施された後の影響について言及し、「委託先から引き受けを断られた場合など、予測できない影響が考えられる」とし、「外部委託に依存する薬局が、薬局として果たすべき使命や本来備えるべき機能を維持・存続できるのか」と疑問を呈した。
 「法令改正を行う場合はこういった視点で検討を行うべきで、それが国民の命・健康を守る厚労省、またわれわれ薬剤師の役割だ」(安部氏)と述べた。

 日薬には外部委託はあくまで仮定の上の検証であるとの考えがあるようだ。
 安部氏は「対物業務の効率化は医療安全が前提。調剤業務の一部外部委託の対応方針には、“外部委託は法的に認められておらず評価が困難”とまず整理されている。実施例がないということから、外部委託が対人業務の充実につながるという仮定において、要件上の仮定を重ねたという印象だ」としている。

 さらに構造上の規制緩和が数多くの敷地内薬局を生み出している現状にも触れ、「外部委託でも敷地内薬局と同じ轍を踏まないように」と話した。「フェンスをはずすという小さなルール改正が結果として現在の事態を生み出した」として、外部委託においても規制緩和が想定以上の事態を招く可能性への危惧をにじませた。
 「外部委託についても同じ轍を踏まないように慎重に対応しなければいけない。営利追求のビジネスモデルであるとか、地域の 医薬品提供体制が混乱することがないよう、十分な検討が必要」(安部氏)。

 宮川政昭氏(日本医師会 常任理事)は外部委託に関して、災害時にリスクを分散できないとの考えを示した。
 「拠点に何かあったら丸つぶれだ。非効率であることで救われることがあるということを理解しないといけない。それを理解せずにただのモノの外部委託ということをすれば当然問題が起こってくるだろうことは明らか」(宮川氏)と話した。

 薬局の監視指導をする自治体の立場からも医療安全確保の重要性を指摘する声が上がった。
 中島麻由美氏(東京都福祉保健局健康安全部薬務課長)は外部委託について、 「資料にある通り、医療安全を確保することが非常に重要。実施にあたっては基準の作成、自治体で行う監視指導の方法を詰める必要がある。自治体にも早めに情提供をいただきたい。意見交換の機会もいただけると助かる」とした。

 こうした外部委託への慎重論が相次いだ背景には、すでに産業界で外部委託への準備を進める動きあることが伝えられていることがある。想定以上の変化が起きるとの懸念が高まっており、地域医療や災害時のリスク管理への影響が軽視できないとする考えが浮上している。

この記事のライター

関連する投稿


【日本薬剤師会・山本信夫会長】規制改革に「薬剤師の総力を結集して、理不尽な要求に対抗していかなくてはならない」

【日本薬剤師会・山本信夫会長】規制改革に「薬剤師の総力を結集して、理不尽な要求に対抗していかなくてはならない」

【2023.03.13配信】日本薬剤師会は3月11・12日の両日、第101回臨時総会を開いた。この中の会長演述の中で、会長の山本信夫氏は、調剤業務の一部外部委託や訪問看護ステーションに配置可能な医薬品の対象範囲の拡大を求めている規制改革の要望に対して、薬剤師は「国民が安全に医薬品を提供できる環境を確保する、いわば“提供義務”を担う」として、「その責務が揺るがぬよう、会員をはじめ日本中の薬剤師の総力を結集して、理不尽な要求に対抗していかなくてはならない」との考えを示した。


【薬局規制改革の波_この人に聞きたい】イイジマ薬局(長野県上田市)飯島裕也氏/調剤業務の一部外部委託、「患者や地域住民の為になるのであればやるべき」

【薬局規制改革の波_この人に聞きたい】イイジマ薬局(長野県上田市)飯島裕也氏/調剤業務の一部外部委託、「患者や地域住民の為になるのであればやるべき」

【2023.01.12配信】調剤業務の一部外部委託など、押し寄せる薬局業界への規制改革の波。この規制改革の波を薬局業界はどう受け止めたらいいのか。薬局業界関係者の中にも迷いがある人も少なくないのではないだろうか。本紙ではこうした問題について、厚労省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」に参考人としても出席していたイイジマ薬局(長野県上田市)開設者である飯島裕也氏に聞いた。


【規制改革推進会議WG】調剤外部委託、経団連などが「一包化以外対象に」「距離制限撤廃」を要望

【規制改革推進会議WG】調剤外部委託、経団連などが「一包化以外対象に」「距離制限撤廃」を要望

【2022.09.22配信】政府の規制改革推進会議は9月22日、「第9回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」を開き、「薬剤師の対人業務の強化のための調剤業務の一部外部委託について(フォローアップ)」を議題とした。日本経済団体連合会(経団連)などから、一包化以外の薬剤取り揃えを対象とすることや、三次医療圏などの距離制限を撤廃すべきとの意見が出た。事務局は意見にのっとり、今後、議論していく方針を示した。


【薬剤師WG】「調剤業務の一部外部委託」法改正へ/一包化、三次医療圏内で

【薬剤師WG】「調剤業務の一部外部委託」法改正へ/一包化、三次医療圏内で

【2022.06.23配信】厚生労働省は6月23日、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(WG)を開催し、とりまとめ(案)を提示した。おおむね事務局案が了承された。外部委託に関してはまずは一包化業務に限定し、委託先は委託元薬局と同じ三次医療圏内とする。現在、外部委託は法律で認められていないことから法改正を見込む。法改正がされたのちに、安全性や対人業務拡充の効果検証、対象業務や委託先の範囲についてさらに議論を行う方針。


【日本薬剤師会】規制改革への意見「従来から変わっていない」/薬剤調製の外部委託や薬剤師の員数規定見直し議論に

【日本薬剤師会】規制改革への意見「従来から変わっていない」/薬剤調製の外部委託や薬剤師の員数規定見直し議論に

【2022.04.28配信】日本薬剤師会(日薬)は4月28日に定例記者会見を開いた。この中で前日に開かれていた規制改革推進会議ワーキング・グループ(WG)で答申への検討項目案として薬剤調製の外部委託実現や薬剤師の員数規定見直しが挙げられたことに関連して、会長の山本信夫氏は、「従来からスタンスは変わっていない」と述べ、改めて反対との姿勢を示した。


最新の投稿


【ウエアラブルデバイス】うつ病の再燃予測に貢献するアルゴリズム構築/塩野義製薬、京都大学、奈良先端科学技術大学院大学の共同研究

【ウエアラブルデバイス】うつ病の再燃予測に貢献するアルゴリズム構築/塩野義製薬、京都大学、奈良先端科学技術大学院大学の共同研究

【2023.03.28配信】いわゆるウエアラブルデバイスから収集できる情報を、いかに健康管理に生かすかの研究が各所で進んでいる。そうした取り組みの1つとして、塩野義製薬では京都大学、奈良先端科学技術大学院大学との共同研究により、デジタルデバイスから得られたデータを分析することでうつ病の再燃予測が可能となるアルゴリズム作成に成功した。現在、特許出願中という。3月1日に塩野義製薬が主催した「SHIONOGI DATA SIENCE FES 2023」で、同社データサイエンス部の秦彩乃氏が内容について講演した。同「FES」は、これまで人材育成の側面もあり、同社社内に限定して実施してきたものを、今年は広く公開し、視聴可能とした。


【大阪・吹田市など】「親子健康応援アプリ “すいろぐ”」 の配信開始

【大阪・吹田市など】「親子健康応援アプリ “すいろぐ”」 の配信開始

【2023.03.27配信】吹田市(市長: 後藤圭二氏)は、 国立研究開発法人国立循環器病研究センター (理事長:大津欣也氏)、 興和株式会社 (代表取締役社長: 三輪芳弘氏) 及び一般社団法人日本セルフケア推進協議会 (代表理事: 三輪芳弘)と、四者協定を締結し、子供・子育て世代に対するICT を活用した健康増進に係る実証事業として、3月27日から 「親子健康応援アプリ “すいろぐ”」 の配信を開始する。


【サプライチェーン全体の在庫の可視化】日本IBMが製薬企業・卸などと運用検証を開始

【サプライチェーン全体の在庫の可視化】日本IBMが製薬企業・卸などと運用検証を開始

【2023.03.27配信】日本アイ・ビー・エムは3月27日、サプライチェーン全体の在庫の可視化に関して、4月からプラットフォームの運用検証を開始すると発表した。製薬企業や卸、物流企業が参加・協力する。


【大木製薬】夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用

【大木製薬】夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用

【2023.03.27配信】大木製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:松井 秀正氏)から発売している夜用スポットケア「アバンタイム トーンショットクリーム」は、 3月から女優の奥菜恵さんを店頭販促、Web・SNSのPRに起用した。


【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【厚労省】連携強化加算の要件の見直し/コロナ治療薬の対応を要件に

【2023.03.27配信】厚生労働省は3月24日付けで事務連絡「調剤報酬点数表における連携強化加算の施設基準等の取扱いについて」を発出し、4月からの要件としてコロナ治療薬への対応などを含めた。適用は4月1日からだが、9月30日までの経過措置も設けている。


ランキング


>>総合人気ランキング