【日病薬】卒後臨床研修の報告書公表/6カ月間の卒後病院研修を提案

【日病薬】卒後臨床研修の報告書公表/6カ月間の卒後病院研修を提案

【2022.06.13配信】日本病院薬剤師会は6月9日、「令和3年度卒後臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業の実績報告書」を公表した。6カ月間の卒後病院研修などの提案も含まれている。誰でもHPから見ることができる。https://www.jshp.or.jp/jyutakujigyo/sotsugorinsyo.html


 調査では薬剤師の卒後研修の現状・課題等を踏まえ、卒後研修モデル事業を実施している。また、実施のための調査・検討を行うことにより、将来的には卒前の薬学教育との連携を図りたい考え。医療機関等において用いられる薬剤師の標準的な卒後研修カリキュラムの作成に繋げるとしている。

 令和3年8月に特別委員会を設置し、9月に第1回委員会を開催し、モデル事業実施候補施設の選定
とモデル事業実施候補施設におけるプログラムの検討を行った。10月に第2回委員会の開催、11月 に第1回評価表作成班の開催やモデル事業実施候補施設における研修を行った。令和4年2月には 研修報告会を開催した。今後、7月開催予定の学術集会(第5回日本病院薬剤師会Future Pharmacist Forum:オンデマンド開催)で報告発表をする予定。

 研修者の評価として研修者の到達度を測るためにルーブリック評価を、研修者の考えを測定するために「研修参加による自己変化と研修の意義」と題したレポートの提出を報告会終了後に求めた。自己評価による施設評価のほか、テキストマイニングによるレポート解析も行った。

 一方、本事業には限界もあったと分析。卒直後ではなく入職後半年以上を経てから実施されたため、卒後研修の意義についての検証は難しい面があったとしている。卒後の所属施設が薬局か病院かで思考も確立されていた可能性も指摘された。マッチングに関しても希望を出す形式ではなく施設からの声がけになったとした。

 課題を残した調査ではあったが、報告書では「卒後研修に対する提案」も記載。

 薬剤師の資質としてジェネラリストであることが求められるため、薬局・病院の所属施設の区別なく研修を受ける必要性を指摘。
 期間については、最低でも1年とし、そのうち、6カ月間を病棟業務研修とすることを求めた。また、プログラムについては下図を案として提示した。

https://www.jshp.or.jp/jyutakujigyo/pdf/r3-sotsugorinsyo.pdf
卒後研修のプログラム案。実線で囲んだ項目を必須、破線で囲んだ項目を選択必修とした。上図では⾒やすいように履修項目を並べてある

卒前教育側と協力した検証が課題

 今後の卒前・卒後のシームレスな教育に関しては、パフォーマンス評価にどのような指標を用いることが適切かなど、検証が今後の課題とした。学部の実習についても検証が進んでないため、今後は卒前教育側と協力して検証していきたいとする。

 卒前・卒後のシームレスな教育を実現するためのコア・カリキュラムが考案されている医師の育成についても言及。学部教育と卒後教育の間で密接な連携が取られているとし、その一つの現れとして、厚生労働省は 2020 年 5 月 13 日に医道審議会医師分科会の報告書「シームレスな医師養成に向けた共用試験の公的化とスチューデントドクターの法的位置づけについて」を公表していることを紹介した。これに伴い、共用試験である CBT や OSCE も公的なものとし、その質や量も大きく改
変し 2025 年の運用をめざしていくこととされている。医師教育が進む一方で、薬剤師は卒後研修すら一般化しておらず、卒前・卒後のシームレスな教育についても議論が深まっていないと憂慮している。臨床能力の強化のために6年制が導入されてもそこで止まったままであり、「Doctor of Pharmacy(Pharm.D.)」を提示するにも至っていないと指摘。卒後教育の充実は卒前教育の改
善に繋がる一つの道筋でもあると提案。また、教育を展開することで研修施設の質の向上にも繋がるとして、卒後研修の展開をきっかけに、卒前・卒後のシームレスな教育を実現し薬剤師の資質向上に努めたいと述べている。

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