根本陽充常務理事「薬剤師として目指すべきところを皆様と共有させていただきたい」
東京都中野区の「なかのZERO」。1200人は収容できる大ホールで都薬主催の「調剤報酬改定伝達講習会」が行われていた。
改定項目について説明したのは根本陽充常務理事(46歳、北多摩)。会場には根本常務理事より年配の薬剤師参加者も多い中、自らの言葉を交えながら、改定項目の注意点や解釈にあたっての理念などを語った。
個別改定項目の説明の前に、根本氏は「医薬分業の目指すもの」との1枚のスライドを示し、次のように話した。
「個別改定項目のご説明に入ります前に、薬剤師として目指すべきところを改めて皆様と共有させていただきたいと思いまして示させていただきました。皆様ご存知のように、薬剤師がやるべきところ、それは患者さんの服薬状況をしっかり一元的・継続的に把握した上でその情報を基に薬学的知見に基づいた形で薬学的な管理、それから指導を行うというところでございます。これを行う中で、医師やその他、多職種の先生方々としっかり連携をし、薬物療法の有効性と安全性を向上し、最終的には患者さんの医療の質を向上するというところ。これを薬剤師として忘れてはいけないところだと思って、今回あえて示させていただきました。皆様には大変失礼な話かと思いますが、ここを忘れてはいけないと思いまして入れさせていただいております」
この“目指す姿”に基づき、今回の改定項目の算定に関しても、説明のところどころで、事例を出し、「例えば、こういった内容で算定することは薬剤師の存在意義を示すことになるのかを考えていただけたらと思います」などと、思いを語っていた。
さらに根本氏は、改定に係る答申書付帯意見も紹介し、次回改定までの課題として、「指導の部分を伴う薬学的管理というところが求められてくるというところでございます。その部分をしっかり薬剤師としてこの2年間で発揮できるよう皆様と一緒に頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします」と話していた。
犬伏洋夫理事「薬局業界の変化と会員薬局の未来像について」質問
都薬で次世代が活躍する場が目立ってきている。
3月5日に行われた日本薬剤師会の臨時総会では、東京ブロックの代表質問に犬伏洋夫理事(45歳、京橋)を充てた。
犬伏氏は、「薬局業界の変化と会員薬局の未来像について」として質問。質問の中で次世代だからこその薬局の将来への強い懸念を示していた。
「調剤報酬の改定をみまして、本当に色々な会議ですとかお疲れ様ですというか、本当に色々な議事録とか見ていますと、命がいくつあっても足りないくらい大変そうなことをされていて、感謝してもしきれません。薬局薬剤師を代表してありがとうと言いたいくらいです。個店にも期待をして頂いてる状況かと思います。個店もそれに応えていかなければいけないが、どうしても大手チェーンがあげているような大きな利益には個店はかなわない。大手企業の中には薬局をビジネスモデルとしてみている向きがあります。調剤報酬の変化に関係なく格差が広がっていくということがあります。個店は投資したくてもなかなかできない。今後、個店が経営していったときに最終的に行き着くところがM&Aではないかと思っています。いまチェーン店の比率は2割といわれますが、それがどんどん高くなっていったときに古きよき薬局というのはどういうふうにしていったらいいのでしょうか。私が考えても考えても答えが出てこなかったので、日薬の皆様方なら答えがあるのではと質問させていただきました」(犬伏氏)と話していた。
日薬執行部は、規模の小さな薬局が多い現状の中で、そういった小さな薬局が著しく不利益を被らないような施策を講じていきたいという思いを語っていた。
犬伏氏も「こんな薬局があると世にプロモーションとなるような」薬局を今後も運営していきたいとの考えを示していた。
また都薬の執行部として、犬伏氏は例えば緊急避妊薬の研修修了薬剤師のリスト化などの負担の重い業務を、会員外に関しても行っていることなどを説明。執行部の負担が重くなっている実態も吐露していた。
永田会長「若い人に歴史を伝えればちゃんと違う見方ができる」
都薬における次世代の活躍はこれだけでなく、例えば薬剤師認定制度認証機構(CPC)からの「生涯研修認定制度」のプロバイダー(実施機関)としての承認においても、研修実施責任者の宮川昌和常務理事(51歳、西武)も奔走。また田極淳氏(南多摩)、和田早也乃氏(足立区)など、30代での理事入りも目に付く。
なぜ、次世代が都薬では活躍しているのか。
犬伏氏は「(永田泰造)会長に、(次世代への)愛情があるからではないですか」と話す。
犬伏氏は初めての日薬でのブロック代表質問の前に、いろいろ悩みが生まれ、永田会長に相談すると、「対面でじっくり1時間をかけて話を聞いてくれた」とする。
永田会長の毎月の都薬会見の様子において見受けられるのは、昔ながらの“親分”スタイルで、時には厳しく指導をしているようにも見えることもある。若い世代から決してウケがいいスタイルとは思えないが、指導を受けている側が「愛情がある」と思えているからこそ、実働が伴っているのだろう。
次世代からこうした声があることを永田会長本人にぶつけると、「だって人がいなかったら、一人では何もできないじゃない」と話し、薬剤師の職能向上のために人を育てていく重要性を指摘する。
加えて、次世代に歴史をつなげていきたい思いを明かす。
「若い人は歴史をしっかり知らないこともある。それをしっかり伝えて、“だから今、こうしたことが起きているんだよ”と伝えれば違う見方もちゃんとできるようになる」(永田会長)
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新型コロナウイルス感染症拡大においては、ワクチン接種会場への協力や経口治療薬の配備など、国や自治体との密接な連携に基づく都道府県薬剤師会や地域薬剤師会などの活動が大きな貢献を果たした。再認識されたその価値は、ウィズコロナ、アフターコロナでも変わらず地域、社会から求められていくだろう。一方で、役割が大きくなるにつれ、現場の負担が重くなることも事実だ。“薬局”“薬剤師”に関わるそれぞれのプレイヤーが、再度、地域薬剤師会の活動に着目し、その活動を共に下支えしていく方向も必要なのかもしれない。
それが、専門職には欠かすことができない理念共有の継承にもつながる方途ではないだろうか。
なお、よく執行部の給与水準が話題になることもある。そのあたりは開示されており、都薬の総会配布資料では、会長月額15万円、副会長10万円、常務9万円+通勤手当て――とある。これを過大とみるか、過少とみるかは人によると思うが、少なくとも自らの薬局の経営に当たる時間を犠牲にして、執行部メンバーが会務に当たっていることは間違いない。