【日本薬剤師会】調剤の外部委託「問題点は指摘している」/WGで容認意見に異論なかった等の業界紙報道に違和感

【日本薬剤師会】調剤の外部委託「問題点は指摘している」/WGで容認意見に異論なかった等の業界紙報道に違和感

【2022.04.01配信】日本薬剤師会(日薬)は4月1日に定例会見を開き、前日の3月31日に行われた厚労省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(薬剤師WG)について言及し、「日薬として問題点を指摘している」と強調した。議論の中で「一律に禁止するものではないとの意見に異論はなかった」とする一部業界紙報道に対しコメントしたもの。


 安部好弘副会長は、薬剤師WGに提出した日薬の考え方を紹介し、「安全性、責任の所在等の問題を指摘しており、これまでの姿勢は変わっていない」との考えを述べた。
 その上で「議論をせずにというわけにはいかないため、WGで今後4回、5回、6回と議論をして、その中でとりまとめを行ったものを、さらに薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会に戻して議論をいただくことになろうかと思う」と見通した。

 磯部総一郎専務理事も補足して発言し、「一部の業界紙で外部委託が容認の方向にとか、印南先生が発言された“一律に禁止するものではない”といった発言に反対がなかったなどの報道があったが、当日、日薬の橋場元常務理事の方から縷々、問題点を指摘しているつもりだ。反対はなかったという報道もあったが、問題点を指摘していることはこの場でも申し上げておきたい」と話した。

 安部副会長も追加で発言。「(WGの)YouTube配信を私も観ていたが、印南先生は規制改革推進会議WGの委員でもあることから、ご自身でもラディカルな議論をするためにこういうふうに申し上げているという言い方をされていた。リスクを伴う効率化があまりされない、だから議論をしないで、議論を終わりにしてはいけない、議論を続けましょうねという意図の発言だったように受け止めた。日薬としても議論はしっかり丁寧にしていくということだと思っている」と述べた。

 日薬はWGに次のように提出しており、橋場常務理事が説明していた。

■医療安全を前提とした対物業務の効率化について
1. 対人業務を推進する観点から調剤業務の外部委託を推進すべきとの指摘についてどう考えるか。
(総論)
○ 調剤は、患者の生命・健康に直結する業務で医療安全(医薬品の安全使用)を確保する必要があり、「安全であろう」という前提で進めてはならない。
○ 対人業務を推進するための効率化については、安全性が担保された手段により、推進されるべきである。
○ 専門家として、外部委託は医療安全(医薬品の安全使用)の確保が困難であり、加えて、委託先での過誤・不正、個人情報漏洩といった新たなリスクがある。
○ これらのリスクを回避するためには高度な管理・監督業務が発生し、効率化やそれに伴う対人業務の充実に繋がるか疑問である。
○ そもそも薬局には地域への医薬品提供に対応できる体制を整えておく必要がある。
(補足)
○ 処方箋を受け付けた薬局の薬剤師は、患者の状況確認や処方箋中の疑義等の解消、薬剤の調製、服薬指導、フォローアップまでの一連の行為を一貫して把握・確認することで、患者の医療安全(医薬品の安全使用)を確保している。
○ 外部委託では、一連の行為の一貫した把握・確認は難しく、患者の医療安全(医薬品の安全使用)が脅かされるのではないか。
○ また、委託先での過誤・不正、個人情報漏洩などの新たなリスク回避のための委託先への精緻な情報伝達・委託先の高度な管理監督等や患者同意が必要になることから、それらを含めた業務時間や業務負担を検討する必要がある。
○ 外部委託では、直ちに調剤・薬剤交付を実施することは難しい。慢性期疾患の治療薬の一包化であっても、直ちに調剤・薬剤交付をしなければならない場合もある。多様な患者に対応するためには、どの薬局でも、一包化に必要な機器やそのための技術・技能等を備えていなければならないことには変わりない。

2. 処方箋の 40 枚規制を撤廃すべきとの指摘についてどう考えるか。
質を担保するため規制としての現行規定は妥当と考える。
(理由)
○ 薬局が医療提供施設として調剤業務の質の担保するためには、開設者に一定数の薬剤師を従事させることの規定が必要と思われる。
○ 医療機関では、医師や歯科医師、薬剤師について規定が設けられている。
○ 薬剤師業務は時代に応じて変化し続けており、対人業務の充実等、新たに対応すべき業務も増えているが、個々の薬局の状況に応じて調剤機器の導入や機械化などの工夫で時間を捻出し、必要な業務に充ててきた。
○ 近年では、薬局薬剤師による在宅薬剤管理へのより積極的な取り組みなども求められていることを考慮すれば、現行規定を見直す必要性はないものと考える。

3. 調剤機器、薬剤師以外の職員の活用を適切に行うために、どのような取組みが必要
か。
○ 薬局ではこれまでも、それぞれの薬局で、多様な患者に対応できるように、種々の調剤機器を導入してきており、この方向性は今後も推進すべきである。
○ 当該薬局の薬剤師以外の職員の活用に関しては、調剤に従事する当該薬剤師の目が現実に届く限度の場所で、当該薬剤師の責任の下、その都度当該薬剤師の判断で実施されるものであり、すでにその際には研修の実施や手順書の整備などにより、実施されている。

4. その他、対人業務を推進する上で効率化を検討すべき点はあるか。
○ 患者の情報の容易な共有のためには、ICT の活用も含め、地域医療情報連携の推進が必要ではないか。
○ 患者の薬物治療の個別最適化のために、オンライン資格確認、電子処方箋、地域医療情報ネットワーク、ウェアラブル端末からの生体情報の取り込み、薬剤服用歴などへの記録の効率化を期待し、それらの整備を関係機関で図るべき。
○ 患者の待ち時間を減らすことも念頭に、いわゆる事務的な不備等の解消を目的とした医療機関への問合せの効率化については検討すべき内容であるが、その決定プロセスの透明性や広く公開すること等、運用に留意した検討が必要である。

 なお、記者から「薬剤師自身から外部委託を容認する声がヒアリングで明らかになっている」と指摘が出ると、安部副会長は「外部委託そのものが今、実際には行われていないもので、それぞれが外部委託とはこういうものではないかと想像して定義があいまいなまま、その中で外部委託はどうでしょうかと聞かれている。規制改革推進会議に出された要望に対して関係者が意見や事例を出して、それについて議論をしている段階」と指摘。外部委託の内容に共通したイメージがない中でのヒアリングであることを背景に挙げた。

この記事のライター

関連する投稿


【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【日本薬剤師会】財政審の改革提言に反論、「薬局増えても調剤報酬増えない」

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に会見を開いた。この中で、同日公表された財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会の提言に対し反論した。


【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長が敷地内薬局めぐる議論にコメント

【2025.11.05配信】日本薬剤師会は11月5日に定例会見を開いた。その中で、岩月進会長が中医協での敷地内薬局をめぐる議論に対してコメントした。


【日本薬剤師会】京都学術大会のオンデマンド配信を追加募集/PECS付与対象

【日本薬剤師会】京都学術大会のオンデマンド配信を追加募集/PECS付与対象

【2025.10.22配信】日本薬剤師会(日薬)は10月22日に定例会見を開き、先ごろ終了した日薬学術大会の「京都大会」のオンデマンド配信を追加募集すると説明した。PECS付与対象となる。


【日薬】医薬品情報共有「N-Bridge」運用開始/薬剤師会に対しては従来のFAXコーナーから切り替え

【日薬】医薬品情報共有「N-Bridge」運用開始/薬剤師会に対しては従来のFAXコーナーから切り替え

【2025.10.08配信】日本薬剤師会は10月8日に定例会見を開き、医薬品情報共有機能を含めた薬局DX基盤サービス「N-Bridge」の運用を開始すると説明した。薬局に対しては、電子お薬手帳・処方箋受付・医薬品情報共有・医薬品発注等の機能を統合したシステムを提供する。電子お薬手帳システム等を続合し、各都道府県・地域・支部 薬剤師会に対して従来のFAXコーナーから切り替えを行う見込み。


【日薬学術大会】ブース出展/災害備蓄や認知症の服薬支援で技術紹介/アルフレッサ

【日薬学術大会】ブース出展/災害備蓄や認知症の服薬支援で技術紹介/アルフレッサ

【2025.09.30配信】医薬品の流通を担う社会インフラ企業であるアルフレッサ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:福神雄介氏)は、2025年10月12日(日)~13日(月・祝)に国立京都国際会館にて開催される「第58回日本薬剤師会学術大会」に出展する。「かかりつけ薬剤師の新たな挑戦!健康・生活を支える商品と信頼」をテーマに、医療現場の業務効率化と患者様の満足度向上に貢献するソリューションを紹介する予定。


最新の投稿


【日本医療機能評価機構】薬包の表記は薬局等で異なるため薬包1包量を確認を/持参薬で

【日本医療機能評価機構】薬包の表記は薬局等で異なるため薬包1包量を確認を/持参薬で

【2025.11.17配信】日本医療機能評価機構は11月17日、「医療事故情報収集等事業 医療安全情報No.228」を作成・ホームページで公表した。タイトルは、「粉砕調製された持参薬の過量与薬」で、2021年1月1日~2025年9月30日に2件の事例が報告されているもので、第81回報告書「分析テーマ」で取り上げた内容をもとに作成された。


【薬機法改正】「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針

【薬機法改正】「指定濫用防止医薬品」にデキストロメトルファンとジフェンヒドラミン/調査会方針

【2025.11.11配信】厚生労働省は11月11日、「令和7年度第8回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」を開き、改正薬機法に定めた「指定濫用防止医薬品」としてデキストロメトルファンとジフェンヒドラミンを指定する方針を了承した。


【薬団連】OTC類似薬についてシンポジウム開催

【薬団連】OTC類似薬についてシンポジウム開催

【2025.11.09配信】薬局団体連絡協議会(薬団連)は11月9日に「第7回シンポジウム」を開き、「OTC類似薬」をテーマに取り上げた。参画団体共通の声明については今後の課題として、今回は策定・公表はしていない。


【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【東京都薬剤師会】市販緊急避妊薬の「産婦人科医等との連携リスト」関与の方針

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月7日に定例会見を開いた。その中で、市販化の見通しとなった緊急避妊薬の販売条件となる「産婦人科医等との連携体制」のリストについて、都薬としても関与していく方針を示した。


【東京都薬剤師会】改定議論、「大手に誤解進むのは怖い」/髙橋正夫会長

【東京都薬剤師会】改定議論、「大手に誤解進むのは怖い」/髙橋正夫会長

【2025.11.07配信】東京都薬剤師会は11月7日に定例会見を開いた。この中で髙橋正夫会長は、調剤報酬改定の議論に触れ、「大手の方々に誤解進むのは怖い」と話した。


ランキング


>>総合人気ランキング