【薬剤師会】山本会長、“短冊”や規制改革への見解述べる/「今までと視点を変えた改定」

【薬剤師会】山本会長、“短冊”や規制改革への見解述べる/「今までと視点を変えた改定」

【2022.02.02配信】日本薬剤師会は2月2日、定例会見を開いた。この中で記者から中医協で提示されている2022年度調剤報酬の「個別改定項目」(通称:短冊)への見解を問われると、同会会長の山本信夫氏は「点数が入っていない状態での評価はできない」として、答申後に詳しい見解を述べる方針を示した。一方で、「今までと視点を変えた改定」との認識を示し、「全体がこれからの薬剤師の有り様を提示していると受け止めている」と話した。


「指摘事項については一定程度手が付けられている」

 日本薬剤師会会長の山本信夫氏は短冊への見解に関して問われると、「短冊は示されたが答申の段階で点数が入るので、十分かどうかという論評はできない」とした。ただ、「全体を眺めると、骨太の方針で示されたリフィル処方箋のほか調剤料、基本料、後発医薬品、多店舗の問題など、指摘事項については一定程度、手が付けられているとの認識だ」と述べた。「評価の配分がどう変わっているのか。幾分変わっているとは見えるが、具体的に調剤の場に合わせた時にどのように動いていくかについては点数が出ないことには何とも評価できない」とした。

後発医薬品は「医師の何割かが後発医薬品を使いたくないという調査もある中で“実現可能な目標か”をそもそも議論することも必要」

 一方、供給状況が不安定な中での後発医薬品の報酬上の対応について聞かれると、「市場に(医薬品が)出回っているから率を上げようということではなく、全体で使用比率があって、促進の観点からどうしたらより促進されるのかという話だ」として、供給状況だけが改定への要望の条件ではないとの認識を示した。診療報酬上は「現在どれぐらいの数量になっているのか」が基準になることには「診療報酬というシステムの中ではそうなるだろう」と理解を示した。一方で、「一定の数字が打たれた時に、足りないのに今、上げるのかという問題はあるのだと思うが、むしろ、医師の中にも後発医薬品を使いたくないという比率がある中で、そもそも85%が実現可能かという、そこの議論をしないといけない。単純に今回、市場に出回っている薬が少ないから、というのは、われわれの責任でもなければ国の責任でもなくて後発医薬品メーカーの責任であるので、そこは一定程度置いた上で、全体はどんな数字になるのかということを評価しながら率を考え点数を考えるというふうになると思う」とした。
また、「算定上の要件と点数、全体の使用量をどのように関連づけるのかということについては厳しいとは思うが、供給がとまっている後発医薬品については算定から除外してよいということにもなっているので、一定の対処がされているという前提で考えている。現実的にいえば設定された数値に対してアジャストするというのは、薬価と同じような状況(負担を下げながら保険制度の持続可能性を維持するという意味で)が起きているので、ある意味では仕方がないかなと思っている。ただ、数字が明らかではないので何とも言えない」とした。

■短冊、「個別の項目ではなく全体がこれからの薬剤師の有り様を提示している」

  記者から短冊の中で将来的な薬剤師の職能向上につながるような項目は何があったと考えるか、連携強化加算では災害や感染症への対応も記載されたが、との質問が出ると、山本会長は「あくまで現在は答申が出る過程である」とし、どれが評価軸かについては明確な回答はし難いと改めて強調した上で、「昨夏から点数を下げるという基調の話があった中で、なぜ下げるかについて調剤に関しては“こういったところを是正しなさい”ということが言われてきた。なぜそれが言われるかというと、薬剤師のしたことを評価するのが調剤報酬であり、その一方で薬剤師がその仕事をするための施設を維持するのも調剤報酬。そのあたりの整理をしなければいけなかったというのが大きな命題だと思っている」と総括した。
 その上で、「どの項目がということではなく、視点を変えた改定だったと受け止めている。個別の項目がということではなく、全ての項目がその方向に向かっているんだと思う。それが一気にドラスティックに変えられないということは従来からあって、今回の改定は頭をそちらの方に振り出した。全体がこれからの薬剤師の有り様を提示しているんだろうと理解している。2025年という地域包括ケアのターゲットイヤーに向けて、どううまく着地をするかということを考えてみれば、今回の改定と次の改定は大きな視点で、概念としては今までとは違った方向に何とか踏み出した。今までの改定と今回の改定が180度違うという、そういう違いという意味ではなく、根底にあるのが改正薬機法であり、薬剤師法も変わっている中でそれに合わせた形の中で調剤報酬は決められていくので、2020年の薬機法と薬剤師法の改正を踏まえた方針はここに入ってくるだろうと。その上で地域包括ケアで何ができるか。指摘のあった連携強化加算もそういった部分だろうが、どれがということについては現在は(答申が出ていないので)明確な答えはし難い」とした。

規制改革推進会議の議論、「医療は対面が原則」

 会見ではオンライン服薬指導に関して、規制改革推進会議側から「対面原則を撤廃することで厚労省からも同意が得られた」とされていることに関して、日本薬剤師会の見解を改めて聞く質問も出た。
 これに対し、山本会長は「規制改革推進会議の方々がおっしゃっていることはそれぞれの立場があっておっしゃっていることだと思うが、前から申し上げているように、当方の主張は変わっているつもりはない」とした上で、「オンラインという手法を使わないと言ったことは一度もないが、ただ、そもそも医療は対面が原則であると、そのことについてはこれからも主張は変わらない」とした。 

調剤の外部委託「日本保険薬局協会や日本チェーンドラッグストア協会と事前のやりとりはあった」 

 調剤業務の外部委託の議論に関して、追加的意見があるかとの質問が出たが、それに対し山本会長は「提出資料と説明した内容に加えることは今のところない」と話した。
 日本保険薬局協会や日本チェーンドラッグストア協会も揃って反対を表明していることに関して意見交換はあったか、との質問が出ると、山本会長は「先日の議論を受けて話し合いを今後する予定は今のところないが、その前に何度かやりとりはしている。一般的に言われているのは薬剤師会が調剤の外部委託に反対をし、薬剤師会以外はどうも賛成しているのではないかという憶測が飛んでいたが、少なくともその部分はわれわれが説得したとか、お願いしたとかではなく、3者とも調剤の外部委託については反対であるということには変わりはなかった。何をもって反対かは、それぞれ、もしかしたら差があるのかもしれないが、調剤を外部委託することについては、何度かの打ち合わせの中でそれぞれの主張の中で、反対だということでお話を承っている。われわれとしてはそのスタンスで規制改革推進会議に臨んだし、エヌファ(日本保険薬局協会)の代表の方も同様のご意見をいわれたと。決して示し合わせたのではなく、それぞれが医薬品の流通を担当しているので、日本チェーンドラッグストア協会にしても保険・非保険に関わらず重要な仕事をされているので、そこについて外部に委託するということについては反対ということで一致している」とした。

調剤の外部委託「日本保険薬局協会の主張との違いは何をどう切り取るかの違い。責任が持てなければチーム医療も根っこから崩れる」

 
調剤の外部委託に関連して、記者から、「日本保険薬局協会はチーム医療の情報連携が損なわれるとの主張があり、日本薬剤師会からは医療安全の責任があいまいになるとの主張があったが、日本薬剤師会として日本保険薬局協会の主張には同意するか」との質問が出た。これに対し、山本会長は、「何をどう切り取るかの問題になるが、チーム医療にしても、地域の医薬品提供にしても、医師との連携、患者との信頼関係を考えても、それが自分の手から離れて、別の場所で調剤のようなものがされて、“ここに何が入っているか”ということについて、どう判断するかということに関してわれわれとして責任が持てない。その責任というのは、患者さんに対して薬物治療を進める上で、“これが安全です”ということを伝える時に自分の手でつくっていないので分からない。医師に問い合わせをする時も“誰々がつくったものですが”とはならない。責任はとりきれないだろうと。全体として調剤そのもの、医薬品を提供する上で、薬剤師が処方箋にしたがって調剤をするということを考えた時に、他の者に任せるということは責任が取り切れないということ。それを広げていえば、日本保険薬局協会さんがおっしゃっているようなチーム医療の問題にも派生しますし、医師と薬剤師の関係、そこに患者が入って初めて、地域連携体制ができるわけだから、その中で誰かが無責任な態度をとれば、根っこからそれは崩れる。表現の仕方は違うかもしれないが、論点はそういう論点があるとわれわれはそう思って受け止めている」とした。

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