【店頭トレンド発信】緊急事態宣言中のドラッグストアを振り返る/目まぐるしく情報のアップデートに追われた日々

【店頭トレンド発信】緊急事態宣言中のドラッグストアを振り返る/目まぐるしく情報のアップデートに追われた日々

【2021.11.30配信】緊急事態宣言が解除されたのは2021年10月だった。この時、約半年ぶりとなる全面解除となり、酒の提供やイベントの収容人数が緩和され経済活動の動きをようやく感じられるようになった。テレビでは飲食店やライブを中心に宣言明けの変化を追う報道が多い中、宣言解除後のドラッグストアにはどのような変化があっただろうか。今回はドラッグストアの緊急事態宣言中と解除後のサービスの変化をレポートしていく。様々な店舗を観察して得られた変化はもちろん、現役ドラッグストア店員である自身の実体験も盛り込み、宣言中の店舗運営にはどのような工夫があり、変化があったのかを事細かに記していく。【記事=登録販売者ライター・「梨さん」】


イートインスペースやカフェスペースの制限

 宣言解除後から約2カ月の間、様々なドラッグストアを巡り一番に目についたのはお客様が休息できる空間の提供が再開したことだ。
 宣言中はイートインスペースや待合室の使用を制限し、極力使わないように注意喚起POPを掲示してあるところが多く見受けられた。例として、前回レポートしたウエルカフェでは、一定間隔があけられないと判断した店舗では全面使用禁止にしており、来店客に向けて感染リスクを極力抑えるような働きかけをしていた。場所によってはウエルシアでお弁当を販売しているのにも関わらず、購入後にウエルカフェを利用して食べることが出来ないという状況になる店舗もあったため、サービスの連携が取れずに一部の利用者には不便を強いることもあった。
 宣言解除後にウエルカフェを訪れてみると、ウエルカフェによる店内飲食が解禁されていて使えるようになっていた。パーテーションによる仕切りやソーシャルディスタンスの確保など、基本的な対策を講じながらではあるがウィズコロナの第一歩を踏み出せたという印象だ。
 また、別のウエルカフェでは、初心者向けにスマホアプリの使い方講座が行われていた。事前予約制ではあるものの月に数回のペースで開講しているようで、ウエルカフェを使った地域コミュニケーション活動も少しずつ復活しているようだ。

ビューティスタッフの勤務時間の減少

 コロナ禍に突入してから店舗スタッフの配置について大きく影響を受けた管轄がある。化粧品カウンターで対応してくれるビューティスタッフだ。

 ビューティスタッフとは、化粧品の専門的な知識と高いタッチアップ技術を駆使し、スキンケアやメイクアップのアドバイザーとして活躍してくれる化粧品担当者のことを指す。駅前や大型店舗など売上が見込めるドラッグストアでは、大手化粧品会社からベテランのスタッフが派遣されることもあり、より質の高いカウンセリングを受けることもできる。
 しかし、コロナ禍になってからはお客様に向けたメイクサービスはおろか、お客様のお肌に触れること自体がタブーとされる環境になってしまったため、多くのドラッグストアではビューティスタッフの勤務時間や日数は激減した。
 フルタイムで勤務していたビューティスタッフが時短勤務になったり、派遣そのものがなくなったりしたことでビューティスタッフが化粧品に携わる時間が大幅に減少した。そのため、ビューティスタッフがいない期間を化粧品に不慣れな現場スタッフで回さないといけない状態になり、一部のお客様から「化粧品知識が乏しいスタッフしかいない」「美容部員がいないからメイクについて相談することが出来ない」とお叱りの声を受けることも多々あった。
 
 現在は宣言解除やまん延防止措置移行に伴い、ビューティスタッフの派遣状況は回復傾向にある。しかし、マスク生活が定着したことによる化粧品全般の売上激減の影響を受け、人件費削減のため、売上規模の大きい店舗優先に人員配置している。そのため、小型店舗や売上規模が小さい店舗の派遣状況は芳しくない。元の状態に戻るのはかなりの時間を要すると思われるため、化粧品のスペシャリストのアドバイスが聞きたい場合は、ビューティスタッフがいる可能性の高い、都心の大きめのドラッグストアまで足を運ぶのがおすすめだ。

チラシ期間中の対応と知識のアップデート

 筆者がドラッグストア業務をこなしていく中で、コロナ禍で一番大きな変化を感じたのはチラシ期間の対応だ。

 緊急事態宣言中、筆者が所属する店舗ではチラシ期間前には社員ミーティングを行い、密にならないよう、どうやってお客様をご案内するか念入りに対策を練っていた。

 当時はスタッフのマスクのつけ方ひとつでお客様からクレームを頂き、時にはそのご指摘が会社本部までいってしまうくらい、お客様の感染症対策の意識が高まっていた。そのため、チラシで人を集めるからには徹底的に対策をして挑まないと、今後のチラシ実施やポイントアップデーなど社内販促実施の有無にも影響が出かねない事態であった。

 また、当時は商品の品薄問題、メディアの煽りや誇大報道による商品の問い合わせもあったため、迅速に対応できるよう、スタッフは日々情報のアップデートをしなければならなかった。「PCR検査と抗原検査と抗体検査の違いは何なのか」「パルスオキシメーターのことについて聞きたい」など専門外のご相談も多く受けたため、お客様の要望にお応えできるよう、現場で活かせそうな情報は何でも取り入れる姿勢でがむしゃらに取り組んでいた。

 現在のドラッグストアは品薄商品を巡るトラブルの心配もなくなり、メディアによるトリッキーな報道がなければほぼ通常に営業できるまで改善した。宣言中に多かった「閉店時間何時ですか?」(緊急事態宣言中の時短営業を危惧しての問い合わせ)もゼロ、代わりと言っては何だがこの時期ならではの「年末年始はお店やっているのか」といった問い合わせに変化。日ごろの業務だけに集中して仕事できる状態になり、ようやく、ようやく落ち着きを取り戻せた。

最後に/学んだ臨機応変さを今後に活かす

 宣言明けから約2か月という期間は、ドラッグストアの様々サービスが再始動してから正常運転に切り替わるまでかかった時間だと思う。

 宣言解除直後は地域の方々の意識がどう変わるのか、見当がつかない状態だったためドラッグストア各社は様子を伺っていたように感じる。お客様に対してどこまでサービスを再開させていいものなのか、思い切って再開してみたらお客様から多くのお叱りの意見をもらうのではないか、という懸念から宣言明けの初動が慎重になっていた。
 そのため、宣言解除から数週間は、日頃の接客業務を通じて、地域の方と意識のすり合わせをしていた期間であったと思う。また、以前は宣言解除してから数週間で再宣言がかかることもあったため、解除による感染者拡大に備えて営業時間の変更やシフト調整など、店舗運営する上で臨機応変に対応できるように取り組んでいたようにも思える。

 今後もマスク着用・三密回避など、基本的な対策は継続されるが様々な業界で経済活動が再開され、日常を取り戻しつつある。今後コロナ第〇波が来る可能性も否めないが、今回の経験をしっかり活かし、生活するすべての人がいがみ合うことや衝突することなく平和に過ごしていけるよう歩んでいきたいと心から願う。

この記事のライター

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