歯科訪問診療については、高いニーズが確認されているものの、実態が追い付いておらず、推進が課題となっている。そのため中医協では、居宅や介護保険施設・病院といった場所による評価のあり方のほか、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料のあり方、在宅療養支援歯科診療所の施設基準の在り方などが議題となった。また、現在、入院から在宅への移行については評価があるが、外来から在宅に移行した場合の医科医療機関と歯科医療機関の連携をどう評価するかも議題になった。
こうした議論の中、日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、「多職種連携については歯科医師と薬剤師の連携も重要なポイントだと考えている」と指摘。
「薬局薬剤師が在宅に訪問する時に口腔ケア商品も提供する機会があり、その際にチェックシート
で口腔状態の確認を行って、受診勧奨を行うなど連携が必要になる」と述べた。
その上で、「薬剤師会としても地域ごとに推進していきたいと思う」とした。
<編集部コメント>
在宅歯科医療については、要介護高齢者の調査では、歯科医療や口腔健康管理が必要である高齢者は64.3%であったが、そのうち過去1年以内に歯科を受療していたのは2.4%だったことが分かっている。埋もれているニーズが極めて大きいことを考えると、多職種からの受診勧奨等の連携は重要ではないか。薬剤師からの受診勧奨について評価創設を期待したい。在宅領域で薬剤師が行っている多面的な支援を評価につなげる局面であると考えられる。
ただ、そのためには実績も必要だが、今回の資料では、歯科訪問診療を実施したきっかけでは、患者・家族からの依頼が最大で、介護保険施設からの紹介、入院医療機関からの紹介、ケアマネジャーや地域包括支援センターからの紹介などとなっており、残念ながら薬局からの紹介の項目はなかった。薬局現場でも口腔状態への目配りと受診勧奨の推進が求められるだろう。一方、在宅療養支援歯科診療所の情報連携では「個別の患者に関する他の医療機関への情報照会」が52.9%や「個別の患者に関するケアマネジャー等の介護関係者への情報照会」52.3%、「地域の医療・介護関係者等が参画する会議(地域ケア会議、研修会等)への参加」43.9%、「地域歯科保健活動への参加」41.9%に次いで、「お薬手帳を用いた患者情報の共有」が38.9%となっており、連携において薬局薬剤師の存在を示すデータも示されていた。
一方、歯科診療所の業態については、常勤換算の従事者数が5人以下の小規模事業所で、1診療所あたりの歯科医師数は1.4人(常勤1.2人、非常勤0.2人)であるとのデータも示されていた。“一人薬剤師”が多いと指摘される薬局にも似ている状態といえる。
その中で、平成20年には1医療機関あたり実施件数では居宅と施設でそれぞれ7.9件・16.2件だったものが、平成29年には13.6件・52.1件と確実に増加している(各年9月実施分)。
訪問診療の実態については、外来診療時間外や昼休みを活用して実施されているとの資料も示されていた。薬局での在宅推進も考えさせられる資料である。