【太田薬事企画官が講演】「調剤の一部、重複投薬チェックは機器ができる世の中に」「薬剤師でないとできないことは何か」

【太田薬事企画官が講演】「調剤の一部、重複投薬チェックは機器ができる世の中に」「薬剤師でないとできないことは何か」

【2021.10.13配信】厚生労働省医薬・生活衛生局総務課薬事企画官の太田美紀氏は都内で講演し、「調剤の一部、重複投薬や併用禁忌の確認は機器ができる世の中になっていく。薬剤師でないとできないことは何か。自己研鑽に努めて専門性を高めていくことが必要」と話した。また地域連携薬局や専門医療機関連携薬局などの認定薬局について、「地域のほかの薬局を支えて引っ張っていただくことを期待している」と話した。次世代型電子版お薬手帳については、「一般用医薬品も含めた一元的管理ができるよう検討を進めている」と指摘した。RX Japan社が主催する「次世代薬局 EXPO 東京」(医療と介護の総合展 東京)で講演したもの。


■8月31日時点で地域連携薬局は628件

 太田氏は2021年9月14日付けで薬事企画官に就任したばかり。 
 1999年東京大学大学院薬学系研究科を卒業後、厚生労働省に入省した。

 太田氏は、講演について、「現状の薬局薬剤師の状況と課題について、関係者の皆さんと共有できる機会があればと思い、お引き受けした」と挨拶。

 主に、改正薬機法やデジタル化、最近の話題などについて話した。

 まず、昨今の薬局を取り巻く環境変化について、平成元年に10%だった医薬分業率が令和には76%になり、それに伴い薬局や薬剤師の数も増加しているとした。

 改正薬機法を議論した制度部会では、薬局のあり方が大きな焦点となり、「医薬分業のメリットが感じられていないのではないか」「院内調剤に戻した方がいいのではないか」など厳しい意見が出されたことを紹介した。

 こうした中、薬局薬剤師の機能強化に結び付くような項目が改正薬機法に盛り込まれたとした。具体的には認定薬局制度や服薬フォローなどだ。
 
 前提として、患者が入院や在宅など療養環境が変化する中で、医薬品を服用することは変わりなく、切れ目のない医療提供体制のため、「連携」がキーワードになった。
 患者が自身に適した薬局が選べる認定薬局制度もスタートした。
 8月31日時点で、地域連携薬局は628件、専門医療機関連携薬局は38件、すでに認定を受けているとした。

 太田氏は、「強調したいのは認定薬局には、ほかの薬局を支えるような役割を期待している。地域の薬局を引っ張っていただきたい」と話した。加えて多職種との交流も積極的に行ってほしいとした。

■次世代型電子版お薬手帳で「一般用医薬品も一元管理」 

 デジタル化・ICT化については、オンライン服薬指導について、恒久的なルールが検討されていることを紹介。コロナ禍の特例的なルールとほぼ同様になる見込みだが、手法については現在、電話だけでも認めていることは改め、映像を伴う方法にするとした。

 データヘルス改革については、基盤となるオンライン資格確認の申込率において薬局の比率が高いことについて謝意を示すとともに、オンライン資格確認のメリットについて、これまでお薬手帳では把握しづらかった入院中の処方薬が把握しやすくなるメリットがあるとした。
 ただ、オンライン資格確認についてはレセプト情報のため10日~40日のタイムラグが生じることが問題になるが、2023年1月に開始予定の電子処方箋ではリアルタイムでの確認が可能になると説明した。
 電子版お薬手帳については、こうしたデータ化された医療情報をAPI連携することによって取り込むというサービスが見込まれていると説明。PHRの情報とも連携するなど、発展していく可能性があるとした。
 次世代型電子版お薬手帳については、「これを機に一般用医薬品情報もスマホで管理できるようにすれば一元管理は充実したものになると思う」と指摘した。

■「薬剤師でなければできないことは何か」

 最近の動きとして薬剤師養成検討会のとりまとめを紹介。
 薬剤師の需給を考えた上で議論をすべきとの観点で推計したが、需要が最大になったとしても将来は供給が需給を上回ることが考えられたため、薬学部の定員のあり方について早急に検討し実行すべきとされたとした。これについては文部科学省で検討会が開始しているとした。
 薬局関連では、対人の充実、対物の効率化が記載された。機器や薬剤師以外の充実も進めつつ、一方で医療安全の確保も重要で、引き続き検討する内容となっているとした。
 処方箋に特化したモデルではなく、処方箋を持たなくても住民に提供するサービスがあるべきとしているとした。

 さらに、コロナ禍での薬剤師の役割について触れた。
 「薬剤師の業務も大きく変化したと思っている」(太田氏)。
 「公衆衛生向上の観点から感染症に関する役割が発揮できるし、実際に役割を発揮している」とし、感染対策、オンラインを活用した指導、一般用医薬品の提供、感染対策品の提供、療養患者への対応、感染症に係る正しい情報提供など、薬局薬剤師が行った業務を紹介。「薬局や店舗販売業のインフラを活用して住民のための役割が果たせる」と期待を寄せた。

 薬剤師をワクチン接種の打ち手にすべきかの議論については、日本薬剤師会からも「準備は進めるべきだ」といった前向きな意見が聞かれたことを紹介した。
 
 関連して、医療用抗原検査キットの薬局販売に触れ、「薬局であればしっかり説明して受診につなげていただけるという前提で特例で認められたもの」と説明した。
 太田氏はコロナ治療薬の開発が進んでいることにも触れ、「薬剤師さんの医薬品供給の役割にも影響を与えると思う」とした。

 また、9月30日にタスクシフトについて医政局長通知があったことを紹介。
 これから薬剤師が実施できる可能性のある業務として、プロトコルの中であれば薬剤の投与量の変更、糖尿病薬の実技指導などが挙げられているとした。  
 加えて、職種を問わず認められる業務も数多く列記されているとした。
 「薬剤師が調剤業務だけやっていればいいのではなく、幅を広げていろいろな業務に取り組むべきというメッセージだと思っている」(太田氏)。

 太田氏は、「ここ数年来、行政は対人業務の充実が必要というメッセージを出し続けている」と話した。

 昨今の規制改革の要望については、「薬剤師の業務を効率化するための規制については前向きに対応する」とする一方、「薬剤師さんがやっているのに、見えていないために本来は薬剤師がやるべき 業務、特に対人業務について省略化することはあってはいけないと思っている」と話した。

 「今までは行政からのメッセージとして示してきたが、これからは、どんな薬局のあり方がいいのか、関係者の方と考えていきたい」と話した。

 「内ちから外へ、ということではないか。薬局の外に出て地域に薬局や薬剤師の存在感を示してほしい」と話した。
 
 「そのためには処方箋をさばくのに時間がかかっていてはできない。業務の効率化をしていくことも必要。調剤の一部、重複投薬や併用禁忌の確認は機器ができる世の中になっていく。薬剤師でないとできないことは何か。自己研鑽に努めて専門性を高めていくことが必要」と話した。

 「データで薬物治療の解析ができるようになると、エビデンスづくりも薬剤師さんの役割の一つになっていくと思う。多職種からも評価されるようになるのでは」(太田氏)とした。

 太田氏は「最後に」として、「時代の変化に伴い薬剤師さんの役割は変化していくが、薬剤師法第一条にあるような健康な生活を確保するという真理は変わらないと思う。信念に基づき、技術も活用しつつ、生産性を向上することも規模の業態でも必須となる」とした。

 「行政も課題を押し付けるだけでなく、患者さんの薬物治療の質を向上できるよう、しっかり取り組んでいる薬局、薬剤師を評価・応援できる制度・方策を検討していきたい。積極的に皆さんの意見交換をし、自己研鑽して業務に取り組んでいきます」と話した。

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