1,ホームセンターの組み合わせたような過去最大スケールの売り場
400坪から1000坪のメガドラッグストアを運営しているだけあり、売り場面積はこの「店頭トレンド発信」記事シリーズの史上最大。
これまで様々な店舗を観察し、強みとして取り扱う商品の多さを取り上げた記事も多かったが、今回はその比ではない商品数だ。
カワチ薬品では一般的なカテゴリの医薬品・化粧品・食品・飲料ほか、日用雑貨・ベビー用品・文房具・園芸用品・防災用品・収納グッズ・靴・洋服・介護衣料・杖・車いす・お中元ギフトなど…生鮮食品を除くほぼすべてをひとつのお店で揃えられるようになっている。
また、いつでも買いに来られるようにほぼすべての商品が定番化されているのも驚きだ。定番とは商品の場所が決まっている売り場のことを指す。シーズン毎に商品の入れ替えをするエンド売り場とは違い、定番は通年売り場が固定されているため、季節に左右されず、安定的に商品を陳列・販売出来る。
カワチ薬品では需要のあるカテゴリを積極的に定番採用しているようで、見学した店舗では文房具コーナーの定番ゴンドラ10本以上、ドラッグストアのメイン商材ではないお中元ギフトも何十種類も展開のうえ、酒・和菓子・洗剤など種類も選べて百貨店並みの取扱い。
医薬品・化粧品関わらず、どのカテゴリも大ボリュームで展開され、どんな些細な商材でも「需要があるからとりあえず売れ筋だけ置いておこう…」というような消極的な姿勢は見えない。お客様に満足してもらえるよう、種類豊富に用意してくれる気遣いがあり、脇役的なカテゴリも主役級の扱いをしてくれる売り場だった。
ドラッグストアの主要品であるビューティケア・日用雑貨の売り場もとにかくすごい。
シャンプーのペアパックや洗剤の二個パック三個パックは当たり前。
増量品や限定デザイン商品もこれでもかというほど大きく陳列されている。通常品よりも限定品や増量品のほうが多いのでは…という印象を持つほどで、ビッグサイズばかりの売り場の勢いに圧倒される。
個人的に驚いたのは、赤ちゃんのミルク缶2個パックが定番採用されていたことだ。限られた定番スペースにどう商品を詰め込むか悩むことの多いドラッグストア店員にとって、贅沢な定番の使い方で心底うらやましい限りだった。
ドラッグストアとホームセンターが合体したような売り場で圧倒的な品揃えを実現するカワチ薬品。強さのポイントは『交通量の多い道路の沿線をメインに店舗を構えている点』にある。
沿線型の店舗は自家用車での来店を想定されているため、一度に大量に買ってくれるお客さんを中心に集めることができる。買い物後に大量の買い物袋を持って、帰りの電車やバスで人目が気になる…ということもない。ひとつの店舗で買い物が済むので、効率の良い買い物を提供できるのもポイントだ。
提供する商品を多様化し、商品との出会いを増やすことで、店内全体が購買意欲を高める売り場になっている。
購入するきっかけが多くなることで、買い上げ点数も売り上げも伸びる。
来店顧客を自家用車所有に絞ることで都心よりも商圏人口が広く持つことが出来るのは沿線のメガドラッグストアならではの長所だろう。
2,収容能力の高さと本部発注に応えられるキャパシティ
次にあげられるカワチ薬品の特長はズバリ収容能力の高さだ。
広々とした空間にはほかのドラッグストアでは見られない展開がたくさんある。
カワチ薬品では店舗で大人用オムツのケース販売をしている。
大型商品のケース販売を店舗直々で行うことは大変珍しく、私自身も初めて大人用オムツのケース売り場を見た。
店頭で働くスタッフならご存知だと思うが、オムツのケース売りはとてつもなくスペースをとるため、店舗で常時ケース販売を行うのはほぼ不可能。幅も重さもあるがゆえに倉庫で管理するのも一苦労の商品だ。
カワチ薬品のメガドラッグストアだからこそ成しえる思い切った販売方法である。
「ケース販売は通販でやるもの」という固定概念を覆された瞬間であった。
カワチ薬品ならではの商品、車いす売り場も新鮮だった。
車いすが6種類以上展開し商品比較が出来るようになっている。
私自身車いすを取り扱った経験はないが、車いすの基礎知識を得ないとお客様に商品案内ができないことを考えると、カワチスタッフの持っている知識は範囲が広く、お客様に対する理解も深いのではないかと感じた。
他にもカワチ薬品は企業本部からの商品送り込みにも順応できるキャパシティがあるのも特長だ。
ドラッグストアには『商品の送り込み』というシステムが存在する(『商品の導入』など名称は各企業によって異なる)。
このシステムは本部判断で商品を発注し、店舗に配荷する手段のことだ。
品薄の商品や生産数が決められている限定商材を本部で一括受注し、各店舗に均等に割り振りできるメリットがある。例としてマスク品薄時や有名ゲームキャラクターのパッケージ目薬発売時などで活躍し、安定的な供給サポートとしてよく使われる。
デメリットは本部主体の発注のため、突発的に店舗への配荷が決まるので在庫コントロールが難しいこと、売れなかったときに在庫として抱えてしまうことだ。
そのため、都心の小型店舗では在庫管理が難しい。送り込み量と管理できる技量、販売数がかみ合っていないと、売り場も倉庫も切迫してしまい、窮屈な店舗になってしまうのだ。
時として悪手になるこのシステムだが、収容能力の高いカワチ薬品なら問題ない。
在庫を管理し、捌く能力が備わっているため、急に限定品や増量品の送り込みが来ても売り場に出すスペースを設けることが出来るのだ。
管理に時間も労力もかかる商品を店舗で円滑に販売できるのは沿線に大型店を所有するカワチ薬品の強さである。
売り場や倉庫の狭さを言い訳にしない大胆な販売手法は都心の店舗では真似できない。在庫のカバーする能力はメガドラッグストアを所有するカワチ薬品が最も高いのかもしれない。
最後に
カワチ薬品のこれからのビジョンとして450坪から600坪程度の小型メガドラッグの出店を計画。小型メガドラッグモデルが成功すれば東京・神奈川の郊外に店舗進出の可能性がうまれ、関東でのシェア獲得も期待できる。
どのようにモデルを確立し、メガドラッグストアに柔軟性を持たせられるかが今後の課題だろう。
郊外での出店が多いカワチ薬品だが、いつか東京でも気軽に見かけられる日を心待ちにしている。