薬剤師養成検討会では、前回の会議の場で、文部科学省が薬学部入学定員抑制にかかわるとりまとめの書きぶりについて、「検討いただきたい」と発言したことに関して、委員から「先送りしたいと聞こえた」「文科省の責任をどう考えているのか」などの厳しい指摘がされていた。
今回の検討会で、文科省が発言を求め、「前回の会議の場で、委員の方からいただいた意見を文部科学省としては真摯に受け止めている」と述べた。
その上で、今回のとりまとめの文言に関して、文科省のほうから「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や仕組みなどを早急に検討すべきである」との記載を提案したことを説明。
前回のとりまとめ案では「必要か否かを含めて検討すべき」との文言であったため、文科省として踏み込んだ記載を提案したという検討への積極的な姿勢を表明した格好だ。
文科省は「具体的には意見をいただきながら早急に対応を進めたい」と述べた。
これに関連し、日本薬剤師会副会長の安部好弘氏は、さらに踏み込んだ文言を求めた。
安部氏は「この表現では文科省の覚悟は読み取れない」として、「検討」ではなく、「実行」の文言記載を求めた。
「早急に検討は当然だが、それだけではその後に何をするのか、次にどのようなステップになるのかがあいまいだ。早急に検討すべきだけでは不十分で、早急に対応策を実行すべきという書きぶりにしてほしい」と要望した。
安部氏はこれまでも検討会の中で、教育目標達成度に応じた定員設定など、具体的な案を提案してきた。そうした具体策の検討と実行を早急に求める姿勢を示した格好。
さらに安部氏はとりまとめ案の“こうした検討を行うにあたっては”という表現に関し、「薬剤師確保や偏在の解消の検討が進んでから入学定員の議論をするようにも受け取れるため、改善が前提とならないよう、平行して行えるように、“行うにあたっては”ではなく、“行うとともに”という表現にしてほしい」と述べた。
*****
<編集部コメント>
いずれにせよ、薬学部の入学定員に関しては、一定の抑制策が検討されていく方向が明確になったといえる。
薬剤師養成という意味では医療政策とも大きく関係する点として、厚労省や薬剤師会が重視する意味は理解できる。
一方で、薬学部を選択し、受験する高校生などの受験生にとっては、現在の「新卒国試合格率」だけをホームページ等で表現していることなどについても、選択に資する公正な表現を用いるなど標準化を検討してほしい。多くの学生を既卒扱いにしたり、留年させたりして、厚労省でも発表している「新卒合格率」だけをよく見せる大学の姿勢への懸念も、この検討会では示されてきた。「ストレート合格率」などのホームページ開示の標準化なども必要ではないだろうか。
6年間という長い期間、また国家資格者を養成する教育機関として特段の配慮も検討すべきではないだろうか。
【薬剤師養成検討会】文科省が「薬学部入学定員の抑制」検討を明言
【2021.06.16配信】厚生労働省は6月16日、「第10 回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(薬剤師養成検討会)を開催した。この中で、文部科学省が発言し、「入学定員数の抑制も含め教育の質の向上に資する、適正な定員規模のあり方や仕組みなどを早急に検討すべきである」とのとりまとめ案への踏み込んだ表現を提案したと説明した。前回の検討会での委員からの指摘に関して「真摯に受け止めている」という文科省の姿勢を示したもの。ただ、これに対し、日本薬剤師会の副会長の安部好弘氏は「これでは足りない」とさらなる表現を要望。「検討」だけでなく「対応策の実行」の明記を求めた。
関連する投稿
【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から
【2024.04.02配信】姫路獨協大学(兵庫県姫路市)は4月1日、薬学部医療薬学科の学生募集を停止すると公表した。
【日薬】薬学部定員抑制の“例外区域“の告示案にパブコメ提出/「定員抑制の制度化の趣旨と齟齬」
【2023.08.09配信】日本薬剤師会(日薬)は薬学6年制課程の定員抑制の例外区域に関する基準の告示案に関して、パブリックコメントを提出した。8月9日の定例会見で明らかにした。定員抑制の制度化の趣旨と齟齬があるなどとしている。8日付けでは、都道府県薬剤師会会長宛てに連絡を発出し、意見提出を報告するとともに、都道府県薬で意見提出する場合には参考にしてほしいとしている。日薬では今後、文科省をはじめ関係機関に要請していく方針。
【日本薬剤師会】文科省の薬学部定員抑制“例外12県”に「容認し難い」/会員へパブコメの積極提出呼びかけ
【2023.07.21配信】日本薬剤師会は7月21日に定例会見を開き、文科省中央教育審議会で薬学6年制課程の定員抑制の例外区域を設ける告示案が了承されたことについて、「当会としては容認し難い」とし、会員に対してパブコメの積極的な提出を呼びかける通知を発出したことを説明した。
【薬学部_国試ストレート合格率】私立大ランキング/トップ5は明治薬科大学、北里大学、東京理科大学、星薬科大学、慶應義塾大学
【2023.01.25配信】文部科学省は、薬学部における修学状況等 2022 年度調査結果を公表した。 https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_igaku-100000059_01.pdf
【2022.10.07配信】国会の代表質問で10月7日、岸田文雄首相は薬学部新設に対して答弁した。
最新の投稿
【厚労省_令和6年度医薬品販売制度実態把握調査】“濫用薬”販売方法で改善みられる
【2025.08.26配信】厚生労働省は8月22日、「令和6年度医薬品販売制度実態把握調査」の結果を公表した。同調査は、薬局・店舗販売業の許可を得た店舗が医薬品の販売に際し、店舗やインターネットで消費者に適切に説明を行っているかどうか等について調べたもの。令和6年度の調査は、前年度に引き続き一般用医薬品のインターネットでの販売状況や要指導医薬品の店舗での販売状況を含めた調査を実施した。
【2025.08.19配信】スギホールディングス株式会社は8月19日、埼玉県を中心に調剤併設型ドラッグストアを展開する株式会社セキ薬品の株式(3万7929株、持株比率 34.8%)を取得し、持分法適用会社とすることについて決定し、同日、株式譲渡契約を締結したと公表した。
【薬局DXコンソーシアム】病院が新たに加盟/社会医療法人 仁厚会
【2025.08.19配信】薬局DXコンソーシアムに病院が加盟した。社会医療法人 仁厚会が会員となった。
【医薬品情報把握システムの検討活発化】薬剤師会“アクションリスト”実践へ/MSNW「LINCLEちいき版」を全国の都道府県薬へ提案中
【2025.08.08配信】日本薬剤師会が公表した「地域医薬品提供体制強化のためのアクションリスト」。このうちの1つの事項である「地域の医薬品情報の把握・共有の取組」。この実践へ向けて情報共有のためのシステム選定の動きも活発化してきた。こうした中、メディカルシステムネットワーク(MSNW)では、もともと地域薬剤師会と共に開発を進めてきた「LINCLEちいき版」の提案を強化している。すでに10以上の都道府県薬剤師会への提案を進行中だという。
【厚労省】保険調剤「確認事項」公表/2枚処方箋で投薬期間上限を超えるなど不適切事例
【2025.08.08配信】厚生労働省はこのほど、保険調剤「確認事項」(令和7年度改訂版)を公表した。2枚処方箋を受け付けることにより、投薬期間上限を超えるなどの不適切事例を指摘している。