薬剤師養成検討会では、現在の薬学部の在り方が大きな課題として取り上げられてきた。
相次ぐ新設校の認可で薬学部への入学者総数が増大しているほか、全入状態となっていたり(受験者数と入試合格者数がほぼ同数)、定員以上に入学させていたり(定員を上回る入学者がいる)、その半面、6年課程で国試に合格する者の数が半分を切っていたり(ストレート合格率の低迷、中には3割を切っている大学もある)などの大学があることが指摘されてきた。
こうした状況に日本薬剤師会の安部好弘氏は、「看過できない」との認識を示し、「薬学部の入学定員総数は、将来の医療政策や薬剤師需給に密接に関わるものであり、将来の業務展開を見据えた適正数を図る必要がある。文部科学省は、薬剤師の需給に関する国の方針がない限りは定員に関する議論はできないとの姿勢であるが、この検討会における需給調査や大学における教育体制を踏まえ、文部科学省が大学に対して入学定員総数の適正化を図る等の措置が可能となるよう、制度の構築を求める必要がある」と明確な立場をとってきた。
日本医師会常任理事の宮川政昭氏や、認定 NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長の山口育子氏も基本的に同様の考えをこれまでの検討会で示してきた。
こうした中、今回の「とりまとめ案」では、「今回の需給推計の精査を行いつつ、入学定員数の抑制が必要か否かも含めて検討すべきではないか」としていた。
これに対し、山口委員が、「必要か否か、ではなく、問題点を考えると、必須である。念頭において早急に検討すべきという表現にしてほしい」と求めた。「前倒しで検討していかないと、時間に猶予がないと思っている」とした。
この山口氏の発言を受け、文科省が発言を求めた。
山口委員の発言のままにとりまとめになるのかの確認を求め、「検討いただきたい」と述べた。
この発言に対し、日医・宮川氏は、「いまの発言は委員のみんなが笑っていると思う」と指摘。「(国試に合格できる)ちゃんとした人が卒業できていない。これが(薬学部の)教育ですか」と文科省の責任の重さへの認識を質した。
日薬・安部氏も「(とりまとめの)検討すべきではないかという表現はあいまいで、どうとでも読めるが明確にしないといけない。需給の状況に応じてコントロールする仕組みになっていないことが問題。過剰になってから施策を講じても実効性が出るのは6年後になるため、必要か否かを検討を始めるのでは遅きに失する。(文科省の発言は)先送りしたいとも聞こえた」と述べた。
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議論を重ねてきた薬学部の入学総数の抑制の必要性に関して、とりまとめの段になって文科省から異論とも取れる発言が出たことに唖然としたというのが多くの委員の印象だろう。
1000万円以上の学費がかかるといわれ、6年という年月を費やす薬学部が、ストレート国試合格率で3割を切る大学があることは倫理的にも問題が大きいのではないか。既卒の合格率は新卒よりも低い。中には既卒者の国試合格率が3割を切る大学もある。
この倫理的な問題にもメスを入れることができるようになれば、この検討会の大きな成果となるだろう。
未来の薬剤師の社会からの価値にもかかわるテーマとして、現役薬剤師もこの議論の行方に関心を持ってほしい。
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