【店頭トレンド発信】解析!ウエルシア薬局が展開の「ウエルカフェ」/秘められた可能性とは

【店頭トレンド発信】解析!ウエルシア薬局が展開の「ウエルカフェ」/秘められた可能性とは

【2021.05.14配信】売上9496億円(2021年2月期)。ドラッグストア業界のナンバーワン企業、ウエルシア。そのウエルシアが手掛ける『ウエルカフェ』というサービスをご存知だろうか。開放型の多目的スペースのことだ。買い物の合間の休憩や地域住民のコミュニケーションの場として使用されており、行政などからの情報発信の場としても機能している。また、グループや自治体に無料で貸し出しも行っていて、地域の交流活動やイベントを開催、地域を盛り上げる役割も担っている(※1)。まだまだ成長過程のウエルカフェ。秘められた可能性を現役ドラッグストア店員が実際に足を運び、店員と顧客双方目線から考察する。【記事=登録販売者ライター・「梨さん」】


ケース1 ウエルシア大田上池台店

 東急長原駅から徒歩5分。駅前から少し離れた住宅街の中に出店している店舗だ。

 ひとつの建物に複数のテナントが入っており、ウエルシアのほかにクリーニング店やクリニック、訪問看護会社など高齢化社会をサポートするお店が集まっている。店頭にはPUDO(宅配便ロッカー)を設置。荷物の受け取り時にウエルシアまで足を運んでもらえるような工夫がされている。

 店内は広く、一般的な郊外店のような品揃えの良さ。日配・お米・酒・調理道具はもちろんある他、ドラッグストアには珍しいウォーターサーバーも設置され、アルカリイオン水の提供も行っている。

 レジ前にはオリジンやセイコーマートのお弁当とおにぎりが販売されており会社同士のコラボが多く見受けられた。ウエルシア周辺にはスーパーなどのお店がないためウエルシアでカバーできるよう食品や総菜の取り扱いが豊富にあるようだ

 こちらのウエルカフェはテーブル3つにイス6~8席、テレビモニターが一台設置された収まりの良いスペースになっていた。

 今回見学した中では一番小さなウエルカフェであったが、下町のようなゆっくりとした時間が流れる地域にうまく溶け込んでいるため、スペースが小さいことによる不便は感じられなかった。

 残念ながら、同店はコロナ禍のため店内飲食と長期滞在が出来なくなっていた。しかし、コロナ禍でなければウエルカフェをイートインスペースとしてお客様に提供し、オリジン×ウエルカフェの中食サービスを確立できた可能性は大いにあり得る。
 また、隣接するクリニック受診後の休憩所としての使用や地域の喫茶店代わりの利用など、暮らしのなかの休息スポットとして活きた空間になったことは間違いない。ドラッグストアの大々的なイベントが目立つ中、大田上池台店のウエルカフェは地域のささやかな交流をサポートできるのではという期待と可能性を秘めている。

ウエルシア大田上池台店(東京都大田区)

ケース2 ウエルシア坂戸薬師町店

 埼玉県坂戸市にある坂戸薬師町店。駐車場が広く20台以上の車が置ける大型郊外店だ。

 こちらのウエルカフェはなんと2階建て。1階と2階でそれぞれブースが分かれている。

 1階は通常の売り場とウエルカフェを併設。ウエルカフェにはテーブル4つにイスが8席~12席の他にモニターも完備、大田上池台店のようなスタンダードなウエルカフェだ。

 2階は公民館のような多目的ホールタイプ。その広さを活かして健康体操や歌唱イベントを開催していた。一階は休憩スペース、二階は地域イベントを同時に提供できる機能性の高いウエルカフェだ。広い駐車場もあるため、一度に多くのお客様を動員できる大型イベントに向いている。

 また、当店では介護オムツの取り扱いが多いことやシニア向けの相談受付POPが目立つ。ウエルカフェの広大なスペースを使えば、介護オムツの選び方・使い方を教わるセミナー開催も可能だ。
 シニア世代のなかには大人用オムツを買うのを恥ずかしく思い、生理用品で済ませている方が多くいると聞く。生理用品はあくまで経血ケアなので水分ケアには向かず、誤って使い続けるとムレや漏れ、肌荒れの原因にもなりうる。ウエルカフェを通して介護用品のイベントが開催できれば、介護用品そのものに理解が深まり、お客様が自分に合った商品を選ぶことができるのではないだろうか。
 また、一度に多くのお客様に同じ情報をお伝えできることで従業員側の負担も少なくすることが出来る。介護メーカーと連携出来れば、イベント参加者に吸水ケアサンプルの提供やウエルシアで販売している介護食の試食会開催などもできるので、セミナーという勉強会から楽しいイベントに昇華することもできる。

 超高齢化社会が続く今、商品の出会いと新たな気づきを提供する情報発信する施設として坂戸薬師町店のウエルカフェは成長し続けると見た。

ウエルシア坂戸薬師町店(埼玉県坂戸市)

ケース3 ウエルシア坂戸若葉駅東口店

 最後はウエルカフェが有名な埼玉県坂戸市からもう一店舗。坂戸若葉駅東口店は若葉駅から徒歩二分、24時間営業のドラッグストアだ。

 こちらは30台以上車が停められる駐車スペースがある。同店では毎月第一、第三木曜日に軽トラック市を開催。ウエルシアの駐車場で地元農家の野菜や加工品の対面販売を行っている。広い駐車場を利用した、いわばアウトドア型のウエルカフェ活動のようだ。
 
 こちらのウエルカフェはテーブル5つにイスが16席、見学したスタンダードなウエルカフェの中では最大級の規模だ。

 壁には介護予防運動や福祉サービスの窓口案内が掲示され、市役所との連携を強めている。

 こちらに設置されているテーブル、化粧品コーナーの対面カウンターのように使えるつくりになっているため、個々に相談が受けられる対面式の相談会を行うことが可能だ。
 坂戸薬師町店のウエルカフェは多目的ホールを使った団体イベント向きであったが、こちらのウエルカフェはデリケートなこともひっそり話せる個人イベント向きともいえる。

 特筆すべきポイントはウエルカフェ内にAEDがあることだ。AEDは心臓に電気ショックを与え正常な拍動の再開を促す救急装置。非医療従事者でも使用できるが正しい使い方を知っている人は少ない(筆者も使えません)。
 市の消防隊や地元の小中学生を集めることで早い段階でAEDを学ぶきっかけをつくることも出来そうだ。

 現在コロナ禍により実現できないイベントも増えてきた。しかし、軽トラック市など密にならないような地域サービスを工夫しながら現在も行っている。地域の活気が消えないように支援を続ける坂戸若葉駅東口店を心から応援したい。

ウエルシア坂戸若葉駅東口店(埼玉県坂戸市)

最後に

 現在、コロナ禍で地域イベントの決行が難しいため、ウエルカフェの可能性を大きく取り上げた。

 本来のウエルカフェは地域住民のアイデアを形にできるように全力でバックアップしてくれる。
 そのポテンシャルは無限大だ。

 地域と一体になってイベントを開催することで、地域活性化を促してくれるほか、アクティブシニアを増やすことも出来る。
 また、ウエルシア側もウエルカフェを広く開放することで利用者のニーズをつかむことができ、店舗サービスの新しいヒントを得ることも出来る。

 これらはウエルシアの集客力とお客様からの信頼があるからこそなせる業だ。
 
 現在、ウエルカフェ併設店は338店舗。ウエルシア全店舗の15%とまだまだ小規模のサービスだ。今後どのように変化し、地域のこころを鷲掴みにしていくのか楽しみだ。


※1 グループや自治体の貸し出しは事前申し込みが必要。また、感染症予防対策として受付を中止している場合があります。

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