マツモトキヨシホールディングスの2021年3月期の連結業績(2020年4月1日~2021年3月31日)は、売上高5569億700万円(前期比5.7%減)、営業利益315億3300万円(同16.1%減)、経常利益340億9100万円(同14.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益215億6800万円(同17.6%減)となった。
この間わが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、企業収益や業況感は厳しさが残り、設備投資も減少しており、感染症が再拡大するなかで、雇用・所得環境に持ち直しの動きがみられたものの、厳しい状況で推移した。
ドラッグストア業界においても、業種・業態を越えた競合企業の新規出店、商勢圏拡大に向けた新たなエリアへの侵攻、M&Aによる規模拡大、同質化する異業種との競争、それらが要因となる狭小商圏化など、経営環境は厳しい状況が継続している。
このような環境の中、同社グループは、「ライフライン」「社会インフラ」であるドラッグストアの使命として、顧客と従業員の安心・安全を最優先しながら、営業時間の短縮、臨時休業等を行う事で多くの店舗において営業を継続するとともに、3つの重点戦略「デジタル化の更なる高度化」「グローバル化の更なる進展」「専門領域での事業規模拡大」を新たに設定し取組んでいる。また、同社は美と健康の分野で圧倒的なプレゼンスを獲得し、国内ドラッグストアの競争に勝ち残ることを目的に、株式会社ココカラファインと経営統合に向け、2020年4月から資本業務提携を開始している。
具体的には、デジタル化の更なる高度化として、急速に進化するITを活用することで、顧客の生活スタイルの変化や嗜好・ニーズを的確にとらえ、一人ひとりの顧客との距離を縮め、深く繋がれるようデジタルマーケティング基盤を中心に強化している。同社グループの強みとなる顧客接点数(ポイントカード会員/LINEの友だち/公式アプリのダウンロード数)は、2021年3月末現在、延べ7,800万超まで拡大した。
グローバル化の更なる進展では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴い、日本国政府から発出された出入国制限の解除後を念頭に、海外SNSを活用した情報配信やキャッシュレス決済対応などをはじめ、アジアを中心とした海外店舗展開やグローバル会員獲得に向けた仕組みづくり、海外で支持される商品の開発、提供などに積極的に取組むことで蓄積されたノウハウを最大限に活用し、美と健康への意識が高まっているアジア地域における事業基盤を早期に確立することを目指している。
海外での新規出店では、ベトナム社会主義共和国ホーチミン市に1号店となる「マツモトキヨシ ビンコムセンタードンコイ店」がオープンし、2021年3月末の海外店舗数は、タイ王国で30店舗、台湾で17店舗、ベトナム社会主義共和国で1店舗の合計48店舗となった。
専門領域での事業規模拡大では、競争がますます激しくなる環境において、三大都市圏におけるエリアドミナント化の推進や次世代ヘルスケア・調剤事業の拡大を基軸として、次なる成長ドライバーの早期確立を進めている。厚生労働省の認可を受けた37店舗の健康サポート薬局は地域医療連携を推進するとともに、調剤サポートプログラムの加盟店舗も122店舗まで拡大した。プライベートブランド(PB)商品に関しては活発に新製品を投入。“matsukiyo LAB アスリートライン”に国際的アンチドーピング認証であるインフォームドチョイスを取得した「BCAA7100パウダー」とプロテインバーとしては日本初となる、機能性表示を取得した「プレミアムプロテインバーチョコレート」を上市。“matsukiyo LAB”の新商品として機能性表示を取得した「プロテインスムージー」のほか、人気のエナジードリンクシリーズでは「EXSTRONG ENERGY GUMMY(エクストロング エナジー グミ)」などを発売。オーガニックコスメブランド「ARGELAN(アルジェラン)」のスキンケア及びヘアケアシリーズでは環境に配慮したリニューアルを行った。
新規出店では、和歌山県内グループ1号店となる「薬マツモトキヨシキーノ和歌山店」をオープン
したことで、国内47都道府県全てに「マツモトキヨシ」グループ店舗の出店がかなった。また、中国エリア1号店となる「薬マツモトキヨシmatsukiyoLAB岡山駅B-1店」のオープンもありmatsukiyoLABは26店舗まで拡大している。
当期末において、出店71店舗、閉店24店舗、改装40店舗となり、2021年3月末におけるグループ
店舗数は1764店舗となった(海外店舗はグループ店舗数の総数に含んでいない)。
セグメント別業績では、小売事業の売上高は5276億7400万円(前期比7.1%減)、卸売事業256億6200万円(同31.7%増)、管理サポート事業35億7100万円(同8.7%増)となった。
小売事業では、第1四半期は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、マスクや除菌関連及び日用品や食品などの特需が郊外型店舗を中心に発生。一方で、外出自粛や在宅勤務の推進等により繁華街や都心店舗では客数が減少するとともに、営業時間の短縮、テナント店舗での臨時休業、感染拡大防止への対策とした至近距離出店店舗での週末臨時休業などにより売上は影響を受けたが、緊急事態宣言が全国で解除された後は、繁華街や都心店舗の客数は増加傾向となった。また、インバウンド売上も出入国制限等の影響により、僅かなものとなった。
第2四半期は、第1四半期と同様にマスクや除菌関連及び日用品や食品などの特需が郊外型店舗を中心に発生。繁華街や都心店舗の客数は回復基調となり医薬品と化粧品は苦戦しているものの、回復傾向が見られた。一方で、当第2四半期は前年の消費増税前の特需の反動を受けた。また、インバウンド売上は出入国制限等の影響により、引き続き僅かなものとなった。
第3四半期は、マスクや除菌関連及び日用品などの特需が郊外型店舗を中心に発生するとともに、前年の消費増税後の買い控えに対する反動増があった。一方で、新型コロナウイルス感染症が再拡大したこともあり、繁華街や都心店舗を中心に客数は11月以降減少基調となり、売上は影響を受けた。また、インバウンド売上は出入国制限等の影響により、引き続き僅かなものとなった。
第4四半期は、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が再発出されたことから、繁華街や都心店舗を中心に客数が減少するとともに前年同期にあったマスク、除菌関連商品、ティッシュペーパー等の紙製品や食品の特需が落ち着き、反動減の影響を受けた。一方で、花粉症関連薬、スキンケアなどの商品を中心に医薬品と化粧品は回復基調となった。また、インバウンド売上は出入国制限等の影響により、引き続き僅かなものとなった。
調剤事業は、コロナウイルス禍に伴う医療機関への受診を控える動きや処方箋応需枚数の減少があったが、調剤店舗の新規開局などもあり前期を上回る売上高となった。
卸売事業は、フランチャイズにおける新規出店や調剤サポートプログラムの加盟店舗増加等により事業地域が拡大するとともに、2020年10月から株式会社ココカラファインに対するプライベートブランド(PB)商品の供給が始まったことから、売上高は前期を上回った。
次期の見通しについては、わが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種への期待感がある一方、その終息時期は不透明であり、企業収益や雇用・所得環境への影響が懸念され、依然として厳しい状況が継続するものと見込まれる。
このような状況の中、同社グループは、国内戦略として「顧客のライフステージに応じた価値提供」を戦略テーマに「①利便性の追求‐お客様との繋がりの深化」、「②独自性の追求‐体験やサービス提供の新化」、「③専門性の追求‐トータルケアの進化」と、グローバル戦略として「アジア市場での更なるプレゼンス向上」を戦略テーマに「④グローバル事業の更なる拡大」を重点戦略として設定し、取組んでいく方針。
2022年3月期第2四半期(累計)における連結業績予想は、売上高2740億円、営業利益150
億円、経常利益170億円、当期純利益110億円を見込む。2021年10月1日付で株式会社ココカラファインとの経営統合を予定しており、通期連結業績予想については、現時点では未定としている。