【薬局の調剤業務外注化】提言者の狭間研至氏インタビュー

【薬局の調剤業務外注化】提言者の狭間研至氏インタビュー

【2021.04.27配信】4月20日に開かれた内閣府規制改革推進会議で、ファルメディコ代表の狭間研至氏が「薬局の調剤業務外注化」に関して提言した(https://www.dgs-on-line.com/articles/884)。薬局業界からは医療安全の観点への懸念や、巨大調剤センター登場の是非など、さまざまな波紋を呼んでいる。当の狭間氏に、こうした疑問をぶつけた。


疑問1「どのような経緯で規制改革会議への提言に至ったのか」

 ――今日は夜8時からという遅い時間、またご多用の中、取材にお時間をいただき、ありがとうございます。まず、率直に伺いたいと思っていたのが、どのような経緯で、規制改革推進会議に、あのような提言をするに至ったのか、です。
 
 狭間 一言でいえば、人との繋がりの中です。
 
 これまで規制改革推進会議に関連したことでいいますと、2015年医薬分業に関する公開ディスカッションに呼ばれたことがあります。
 あの時も議論すべきテーマがすでにあって、薬局関係者として、ヒアリングを受け、その後に「出て欲しい」とお声がかかりました。
 
 今回も、さまざまな方々が、薬局業務の機械化や効率化、地域の医薬品流通の変化、薬局の健康サポート機能への期待といった議論をしている中で、その一つのテーマとして、企業間の連携を含めて調剤業務を効率化することはできないのかという論点がありました。
 
 このテーマが全てではなく、箱出し調剤であったり、リフィルであったり、議論すべきテーマはたくさんあることも事実です。しかし、私は企業間を含めて調剤業務を効率化していくというテーマは議論すべき論点だと感じました。
 
 ですから、規制改革推進会議に提言しましたし、業界で考えていって欲しいと思っています。
 
 ――当然のことながら、狭間先生お一人が考えたことではないのですね。
 
 狭間 健康サポート機能など、薬局の機能に期待されている方々はたくさんいます。
 けれど、今の薬局薬剤師は調剤に偏重せざるを得ないし、忙しすぎるので、調剤以外の機能を発揮できない部分もあるのではないでしょうか。そうであるなら、調剤の業務を効率化する選択肢はたくさんあってもいいと思っています。

 流通の効率化を考えてもそうです。ドローンを使った医薬品配送もそう遠くない将来に現実になっていくかもしれません。
 そうなると、配送にかかっている人件費というコストが下がり、流通にかかるコストも全体的に低下させていくこともできるかもしれません。社会全体を見たときの廃棄などの非効率も改善できる可能性があります。

疑問2「巨大薬局や一部の薬局だけを利する可能性はないのか」

 ――今回の提言を見た時に、はじめに「セントラル調剤」、あるいは「調剤センター」の変形版だな、と思いました。広域で機械化によって効率化するセントラル調剤に関しては、それこそ巨大薬局を登場させ、ひいては地域医療を崩してしまうリスクから業界では否定的な意見が根強いので、「他の薬局も連携しようと思えばできるんです」というエクスキューズの下、実現させていこうとしているのかな、というふうに感じました。

 狭間 この提言が実現すれば、巨大薬局ができてくる可能性は否定しません。私のプレゼン資料にも、そのリスクには何らかの対応が必要とも記載させていただいています。

 ただ、巨大化するかもしれない「受託薬局」側の要望ではなくて、在宅医療を展開している薬局側から、「一包化の業務を外部委託できるようにしたい」という要望があったともお聞きしています。

 ――たしかに、今回の提言の中で、「委託薬局」側で最もメリットがあるというイメージができるのは、施設などの一定量の在宅を持っていて、一包化作業に苦慮していて、だけれども機械を購入すると採算が合わないな、という薬局さんでしょうね。そこを機械を共有し、機械の効率化を最大化することで双方のメリットが出てくるでしょうね。
 ですから、私が感じたのは、「なぜ全体を語られたのかな」ということです。「こういう薬局と、こういう薬局が組むととてもメリットが出てくる。それを実現するために規制を緩和することはできないか」と提言された方が、もっとシンプルに受け止めやすかったと思います。

 狭間 私は多くの薬局が在宅にも取り組みを拡大すべきだと思っています。
 サービス付き高齢者住宅なども含めて、一時期に大きな問題となっていた高齢化に伴う病床の不足に関する解決が進んでいる状況です。病床とほぼ同数の120万室を超える高齢者の方が在宅医療を必要とする可能性があります。

 「在宅を一定数やっている薬局にならメリットがある」とのご指摘ですが、個人薬局さんが何も100床の施設を請け負う必要はないと思いますが、18人の近隣のグループホームだけ担当されるとか、そういった取り組みはできると思います。薬局から働きかければ、薬局の周りに必要とされている在宅ニーズはたくさんあると考えています。

 私は、薬局さんが機能を向上していく、そのことが地域の患者さんや地域の方、社会に与える影響はとても大きいと思っています。繰り返しになりますが、そのためにはまずは対物業務を効率化しなければいけない。そのための方策のひとつとして提言をさせていただきました。

疑問3「医療安全の責任の一部を他の薬局に委ねられるのか」

 ――もう一点、とても気にかかったのが、医療安全の問題です。私は調剤業務に精通しているわけではないですが、例えば私の記者という仕事で考えた時に、書いている時の脳味噌と、最後に記事をアップする時に校正している脳味噌は少し違う使い方をしていると思います。最後に校正も自分ですることで、最初のタイミングで気がつかなかったミスに気づくことがあるわけです。それが今回のご提言に置き換えると、最後のミスに気づく大切なタイミングの一箇所を他人に委ねるわけですね。私は自分だったら、そんな怖いことはできないと思うのです。
 
 狭間 その論点については、当社ファルメディコで、どうやって薬局パートナー(非薬剤師)と薬剤師が協業を実現してきたかの詳細に関わる部分だと思います。
 
 当社でも、最初は薬剤師からは「任せられない」、薬局パートナーからは「やったことがないから怖い」という声がやはりありました。
 
 そこで取り入れたのが、薬剤師から薬局パートナーへの指示書、薬局パートナーから薬剤師への情報フィードバックなどの書式を定型化したことです。
 こうすることによって、お互いが考えていること、やっていることが理解でき、安心感が生まれ、「これなら協業できるよね」となっていったのです。
 
 今回の提案でも、委託薬局と受託薬局の双方が情報を共有しフィードバックし合えるネットワーク環境の整備は絶対に必要です。
 
 ご指摘の「委託薬局における最後の確認」ですが、例えば医薬品発送のタイミングなどに、受託薬局にはいない委託薬局の薬剤師が再度確認することは技術的にも可能ではないかと思います。
 画像データやバーコード活用によって、発送の中身と相違ない内容を再度、委託薬局でもネットワーク上で確認する。V R技術などの進展などもありますから、その場にいることにこだわらなくてもできることは増えていますね。

疑問4「この提言は今後、どのように進むのか」

 ――今回の提言の今後ですが、どのように進むと思いますか。

 狭間 6月に答申と聞いています。
 近いうちに議事録も公開されると思いますが、河野太郎行政改革担当大臣が、「日本の薬局の半分が一人薬剤師の薬局だ。その薬局が業務を効率化し、人がやるべき業務に力が注ぐことができるように前向きに検討してほしい」という趣旨の発言されていました。国としては、進める意欲があると感じました。
 
 ――分かりました。ありがとうございました。今日のインタビューで私の中にあった疑問が解消できました。しかし、インタビューを終えて、なお感じるのは、河野大臣のおっしゃった一人薬剤師薬局の現状と、今回のご提言が描く形はかけ離れているように思いました。狭間先生が見ている景色と、半分以上と言われる薬局の見えている景色に乖離が大きいのではないかと。それが、さまざまな波紋を呼んでいることにつながっていると思います。そういった現状への理解も必要なことではないかと思いました。また、規制改革推進会議の議論のスピード感も、ある意味ではいいことかもしれませんが、判断が間違っている場合に議論が尽くされずに政策が進行してしまうこともリスクがあると感じました。
 
 狭間 私がとても大切にしている考え方に稲盛和夫さんの「動機善なりや、私心なかりしか」があります。そのことの動機は善なのか、そこに私心はないのか、ということを問いかけていきたいと思います。
 
 薬局業界が目指すべきは「患者さんのため」、そこが原点だと思います。ご指摘のように、薬局の現状はそうかもしれない。しかし、患者さんのためになる方向はどこなのか。業界の議論進展を期待しています。

【薬局の調剤を外注化?!】規制改革会議にファルメディコ狭間氏が提案

https://www.dgs-on-line.com/articles/884

【2021.04.21配信】4月20日に内閣府規制改革推進会議が開かれ、ファルメディコ(大阪市)社長の狭間研至氏が、「調剤の外部委託」を可能とする規制緩和などを要望した。

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