【第3四半期】ツルハHD決算説明会詳報/Eコマース拡充へ秋にも関東に物流拠点

【第3四半期】ツルハHD決算説明会詳報/Eコマース拡充へ秋にも関東に物流拠点

【2021.03.22配信】ツルハホールディングスは2021年5月期第3四半期の連結業績(2020年5月16日~2021年2月15日)を公表した。それによると、売上高は6,839億1400万円(前年同期比9.3%増)、営業利益397億1000万円(同8.7%増)、経常利益393億3700万円(同5.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益225億5600万円(同3.2%減)だった。本稿では、3月16日に行われた決算説明会の内容を詳報する。


【冒頭、逝去した堀川前社長を偲ぶコメント】

 説明会の冒頭、鶴羽社長から前社長の堀川氏を偲ぶコメントがあった。

 鶴羽社長は「既に報道されておりますとおり、当社、前代表取締役社長の堀川政司氏が3月7日、62歳でお亡くなりになりました。社長在任中、IRの場で多くの投資家、またアナリストの皆様とお話をさせていただき、大変お世話になりました。故人に代わりまして、厚く御礼申し上げます。今後は、私をはじめ、残された役員、社員一同、堀川の意志を継ぎ、さらなる企業価値向上に努めてまいります。引き続き、よろしくお願いいたします」と述べた。

【第3四半期のハイライト】売上高6,839億円、前年対比プラス9.3%

 続いて管理本部長の村上氏から決算概況の説明があった。

 第3四半期累計で売上高は6,839億円、前年対比プラス9.3%。営業利益397億円、前年対比プラス8.7%となった。ドラッグイレブンの6カ月の数値を含んでいる。事業概況では、売上面では引き続き、食品、日用雑貨等のカテゴリーが堅調。一方、消毒商材、マスク等の新型コロナウイルスの直接関連需要は一巡してきている。

 また、昨年のコロナ特需の反動が始まったことに加えて、医薬品などの季節用品が不振だったことが挙げられる。一方、人件費を中心に販管費の伸びは抑制できている。トピックスとしては、コロナ禍の長期化に対応した施策として、生鮮食品など、新カテゴリーの導入の加速化を挙げた。アプリ会員獲得をベースとしたデジタル化の推進に加え、一昨年リニューアルした新プライベートブランド、くらしリズムの順調な切り替えが進展している。


 当第3四半期の特殊要因として、売上総利益に関してアルコールジェルなどの在庫の評価減により、粗利へのマイナス影響が3億円強あった。販管費に関しては、コロナの影響で閉店した店舗の原状回復費用を1億円強計上している。また、2月13日に東北で起こった震度6強の地震による被害額に関して、特別損失として3800万円計上した。

2月に入り、大きな反動減

 13カ月既存店売上高の前年比の推移では(下図の青線が前期、赤線が今期)、第3四半期では12月、1月までは従来と大きな変化はないが、2月に入り、大きな反動減が生じた。
 今後に関しては、前年の3月はさらにハードルが高いとする。前期、第4四半期の既存店前年比はプラス7.1%だった。

レジ袋有料化は品単価のマイナス要因、買上点数のプラス要因

 2020年7月 レジ袋有料化の影響も参考情報として掲載した。レジ袋を有償で提供した場合、商品の販売と同様売上として計上(1枚単価2~9円、1枚=1品)となるため、品単価のマイナス要因・買上点数のプラス要因となっている。
 客単価への影響は軽微。
 なお、有料レジ袋の利用率は18%(辞退率 82%)だった。

地域別・会社別売上に地域間格差。中部・関西地区好調も、関西地区苦戦/インバウンド影響で

 地域別・会社別売上状況では、地域間で差が出ている。特に中部・関西地区では杏林堂、B&Dは好調だったが、株式会社ツルハ、関西地区ともインバウンドの影響が大きく、前年割れとなった。また、会社別では、都市部の比率が高い、くすりの福太郎が前年割れとなっている。

 出店・退店状況では、累計の出店数が86店舗となった。閉店については、累計の閉店数が55店舗。出店に関しては、ほぼ計画どおり。一方、閉店については、コロナの影響によるインバウンド店、また、都市部の店舗の閉店により、計画超過の結果だった。

調剤は受診抑制も好調、前期比+4.9%

 商品別実績(イレブンを除く)では調剤部門は受診抑制の影響があったものの、引き続き、堅調な数値。前期比+4.9%、構成比は10.1%となった。

 一方、OTCでは、かぜ薬・ドリンクなどの季節品が不振で、前期比−5.3%となった。

 コロナの影響で、処方箋枚数は昨年に比べて、厳しい状況が続いているが、一方で単価の上昇がかなりの数値となったため、ある程度、堅調な数値となった。また、1月8日から首都圏を中心に再度、緊急事態宣言があったが、枚数に関しては、足元で徐々に回復基調にある。

PB構成比率が9%に近づく

 PB商品の実績に関しては、第3四半期の売上構成比が8.7%に上昇。PB比率9%台が見えてきた。
 粗利では、前期は粗利率の高い「くらしリズム」のマスクが極めて好調だったため、その反動と、今期はかぜ薬などの不振により粗利率は大幅な低下となった。この粗利率の低下は、PB商品、1品1品の粗利が低下しているわけではないが、主に医薬品の不振によるPB内のミックス悪化が要因。また、今期目標だった「くらしリズム期末目標700SKU」に関しては、第3四半期の時点で前倒しで達成された。

販管費はコントロールも原状回復費用計上

 販管費率については、0.1ポイント増の23.1%となった。引き続き、人件費を中心にコントロールができている状況。特殊要因として原状回復費用等の要因がある。もう一つ、コロナ対策関連費については、厚生労働省に助成金の支給申請を行っているところ。

昨年のマスク需要急増の反動が出始めた

 続いて、鶴羽社長より取り組みと方針の説明があった。

 鶴羽氏はコロナ禍のこの1年を振り返り、第3四半期では、前年のマスク需要の急増の反動が出ている状態と総括。また、生鮮食品の導入を加速したタイミングでもあり、日用品や食品の品揃えで、顧客のニーズに対応できたことが、現在の買上点数の増加にもつながったとの見方を示した。

 化粧品の実績については、1年間厳しい状態が続いていたものの、感染対策を行い、非接触対応も交えながら活動を続けているという。基礎化粧品に関しては、現状は売上は回復している状態。

今期の出店は計画通り、退店は計画外が8店舗

 今期の出退店の見通しに関しては、出店は計画136店に対して138店舗、ほぼ計画通りになる見込み。一方で閉店は、計画55店舗に対して74店舗と、19店舗超過する予定。超過の19店舗の内訳は、インバウンドの店舗の計画外閉店を8店舗、また、計画外のスクラップ&ビルド6店舗を含んでいる。

 通期の業績予想は12月に発表から変更はなく、売上高9200億円、営業利益高で490億円。

「調剤業務の自動転送システム」で廃棄ロスの削減を実現

 戦略として掲げる一つが、デジタル戦略。
 顧客接点の獲得と販促基盤の構築のため、今期はスマホのアプリのダウンロード獲得に注力した。
 目標である400万ダウンロードに対して、現在は300万ダウンロードと、おおむね順調に進行している。

 デジタル戦略のうちの業務改善面では、ツルハで先行導入しているシフト作成支援システムの効果が徐々に出て来ている。稼働計画を可視化できたことにより、主に残業時間の抑制につながっている。この成功事例を来期は、ツルハ以外での事業会社でも水平展開をしていく予定。

 「調剤業務の自動転送システム」は、期限切れによる在庫のロスを防ぐ、適正化を図るシステム。 
 導入によって、廃棄ロスの削減が実現できている。
 化粧品台帳は、開発中の段階ではあるが、電子化をすることによって管理業務を簡素化し、販売に注力する状態をまずは構築する。顧客データの分析、また、アプリとの連携も進めていく予定で、将来的にはこちらも1to1マーケティングに関わることを予定する。

イレブンは2年かけて改装進展

 プライベートブランドの「くらしリズム」への取り組みについては、グループの柱として今後も拡大していく。

 ツルハグループのPBの区分けに関しては、エムズワンは販売終了予定となっていき、くらしリズムをグループの共通PBとして柱にしていく。一方、ブランドロゴを付けない専売品・企業限定品を二本柱として育成していく。プライベートブランド商品ではないが、差別化ができて、固定客づくりにつながる化粧品の特定ブランド、リサージ、アルブランなどがある。

 その他の取り組みとして、来店頻度を高めるための精肉・青果の導入がある。
 導入店舗は、平均値より売上客数に寄与している。

 また、今期からグループ入りしたドラッグイレブンの統合は、順調に進展しているが、あと2年ほどをかけて改装、スクラップ&ビルドを進める予定。それによって競争力の強いフォーマットに変えていくということを目指す。

 Eコマースについては、現在は物流拠点が島根県1カ所にしかないため、秋にも関東に拠点を増やして、業務を拡大していく予定。

 グループのESG活動に関しては、発災から10年経った東日本大震災では、被災地において、地域の生活を守るインフラとしての役割を果たしてきたとの考えを示し、ドラッグストア事業の充実そのものが社会貢献につながるものと今後も信じて、地域社会に貢献していくとした。
 店舗、設備の省エネ化で生み出したCO2の排出枠を売却し、CO2削減に貢献している。
 調剤薬局の取り組みとして、毎日の配送に関し、医薬品卸と協力して、配送回数を減らすことによって、CO2削減につながる取り組みをツルハで開始している。

この記事のライター

関連する投稿


【ツルハHD】中間決算発表を延期/会計監査人から「誤謬」指摘で

【ツルハHD】中間決算発表を延期/会計監査人から「誤謬」指摘で

【2024.12.19配信】ツルハホールディングスは12月19日、2025 年2月期第2四半期決算発表の延期を公表した。過年度の連結財務諸表に関する誤謬が存在する可能性が判明したとしている。


【レデイ薬局】白石社長を解任/酒気帯び運転の検挙で

【レデイ薬局】白石社長を解任/酒気帯び運転の検挙で

【2024.11.14配信】ツルハホールディングスは11月14日開催の同社取締役会及び同社連結子会社である株式会社レデイ薬局(本社:愛媛県松山市)の臨時株主総会において、同社執行役員でレデイ薬局代表取締役社長である白石明生氏の取締役解任に関する決議を行った。、同日付で両社の役員を解任した。


【ウエルシアHD池野会長】ツルハHDとの統合「早く進めるのがよい」

【ウエルシアHD池野会長】ツルハHDとの統合「早く進めるのがよい」

【2024.05.10配信】ウエルシアホールディングスの代表取締役会長兼社長を務める池野隆光氏は5月10日、都内の会合で、ツルハホールディグスとの統合について触れ、「早く進めるのがよいと思っている」と述べた。同社の取引先を交えた会合「ウエルシアホールディングス共栄会」の総会で挨拶したもの。


【ツルハHD】ウエルシアHDとの経営統合報道でコメント公表

【ツルハHD】ウエルシアHDとの経営統合報道でコメント公表

【2023.02.26配信】ツルハホールディングスは2月26日、ウエルシアホールディングスとの経営統合に関する報道があったことを受け、コメントを公表した。


【ツルハHD2023年5月期 第3Q決算】鶴羽社長、調剤事業は「額をとりにいく戦略」

【ツルハHD2023年5月期 第3Q決算】鶴羽社長、調剤事業は「額をとりにいく戦略」

【2023.03.23配信】ツルハホールディングスは3月23日、2023年5月期第3四半期(2022年5月16日~2023年2月15日)の決算説明会を実施した。


最新の投稿


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


【財政審】地域フォーミュラリの普及・促進へ、保険者インセンティブ制度の活用や医療介護総合確保基金による支援を

【財政審】地域フォーミュラリの普及・促進へ、保険者インセンティブ制度の活用や医療介護総合確保基金による支援を

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング