【独自】リアルとオンラインの両輪で攻勢かけるスギ薬局/杉浦克典社長インタビュー

【独自】リアルとオンラインの両輪で攻勢かけるスギ薬局/杉浦克典社長インタビュー

スギ薬局は、リアル拠点を持つ強み(Offline)と、オンライン(Online)のメリットを融合する「O2O(Online to Offline)モデルの構築」で先行している。11月5日には、アプリ「スギサポwalk」に新機能である「グループ機能」をリリースし、注目を集めた。同社が目指す「O2O」の出口はどこにあるのか。


パーソナライズされたヘルスケアサービスの提供

 スギ薬局が「O2O」戦略を深化させている。アプリ「スギサポwalk」では2020年11月、新たに「グループ機能」を追加。家族や友人で情報を共有し、ランキングでメンバー内の歩数を競ったり、グループ内限定のイベントやキャンペーンに挑戦することで、モチベーションを高め、ウオーキングの習慣化を支援する。

 アプリ内でトラフィックによる広告事業を展開し収益化も図っているが、本来的な目的は店舗外であっても顧客のライフログを収集することだ。

 さまざまな顧客の情報を一元的に管理することで、一人一人に適切な健康アドバイス提供を目指す。

 この“パーソナライズされたヘルスケアサービスの提供”が、同社「O2O」の“出口”、最終的な目標といえる。

 歩数だけでは不十分だ。同社は食事のログの取れる「スギサポeats」などもリリースしている。さらに健康情報としては、2019年9月から特定保健指導を店頭で提供し、重症化予防アドバイスのノウハウを構築する。

 情報を収集しても適切な解析と、適切なアドバイスの構築がなければ、「パーソナライズされたヘルスケアサービスの提供」はできない。そのため、同社では生活習慣病の重症化予防プログラムを提供するPREVENTと業務提携するなど、協業を活発化させている。

 同社が構築した情報提供冊子「生活習慣病リスクレポート」は、一人ひとりの健診結果をビッグデータと予測モデルで分析し、脳卒中・心筋梗塞・糖尿病を発症する統計確率や、同性同年齢の中での各健診値の 100 分位値(100 人中の順位)等を算出する。さらに、それら情報を、代表的な健康行動理論の1つである健康信念モデルに沿って伝えることで、本人の中に「たしかに予防行動が必要だ」との納得感を醸成するもの。この内容が評価され、2020年8月には、東京都中野区(健康福祉部保健企画課)において、生活習慣病ハイリスク者に対する受療勧奨事業の効果アップ策として採用されている。

出店意欲も旺盛

 また、「病院完結型の医療」から「地域完結型の医療」への転換が求められる地域包括ケアでは、シームレスな情報共有には病院との連携も重要になる。2019年11月には、名古屋大学病院の敷地内に「スギ薬局名古屋大学病院店」を開局。ドラッグストアとして日本で初めての国立大学病院の敷地内薬局であり、がん等の専門的な薬学管理の知見を高める。

 さらに研究は進む。2020年4月には、金沢大学に「共同研究講座」を設置し、ネットワークの構築、デジタル化や人工知能、ロボットなどを新たに導入する研究を行っていく。
 
 こうした既存店の機能拡充を進めるドラッグストアの中には、出店よりも既存店の機能拡充に力点を置く方針の企業もあるが、同社の場合は、こうしたテクノロジー導入と並行して、出店についても手を緩めない。
 2021年2月期(通期)で、前期実績を超える合計120店舗の出店を計画する。

 なぜなら、リアル拠点のネットワークがあってこそ、同社のオンライン戦略も価値を増すからだ。オンラインのデータを生かした上で、適切な行動変容を促すにはリアル店舗の介入が効果的との指摘がある。

 既存の事業を進めながら、新規の事業にこれだけ手を広げることは困難さも伴うはずだ。それを、ものともしない挑戦の背景を、同社社長の杉浦克典氏は「理念への思いの強さだ」と話す。

 「45年前に地域に貢献するためにつくったのがスギ薬局。いま、日本が抱える少子高齢化という課題に、当社がどのような形で貢献できるのか。そのためには、元気な時から、オンラインでもお客さまと接点を持ち、低リスクの健康状態から、中度、重度、終末期まで階層に応じた適切なヘルスケアサービスの提供を実現していきたい。その思いの強さで突き進んでいる」(杉浦克典社長)。

 20年前、同社が「地域の健康のために全店で処方箋調剤を目指す」と標榜した際、「ドラッグストアに処方箋を持ってくる人なんていない」と批判した業界関係者もいた。それが、今日では、調剤事業は同社の収益の柱の一つになっている。
 
 今、調剤・物販に限らない顧客のさまざまな情報を一元的に把握し、AIで解析し、パーソナライズされたヘルスケアサービスを提供するという同社の提唱に、ぴんと来ない業界関係者もいるだろう。この取り組みの成否も10年後に分かるのかもしれない。しかし、理念の明確さと理念への思いの強さが、これまでの同社の成長の糧であったことは間違いのない事実だろう。

すぎうら・かつのり●1978年生まれ。2001年岐阜薬科大学薬学部卒業後、ジョンソン・エンド・ジョンソン入社。2006年スギ薬局入社。店長や物流事業、商品部、店舗開発、経営企画などの勤務を経て2017年3月に社長に就任。親会社であるスギホールディングスの代表取締役副社長や、障害者を雇用し同社の各種業務を行っているスギスマイルの社長も兼務する

【編集部より】本インタビューは、薬学生向け「MIL NEXT VISION」との連動企画です。ぜひ、そちらもご覧ください。

「目の前のことに一生懸命取り組めば道は拓ける」杉浦克典(スギ薬局)

https://www.anycr.net/post/201215sugi

スギ薬局グループの杉浦克典社長が学生や若手薬剤師に向けて困難な課題に向かいあってきた経験を語るとともに、「トータルヘルスケア戦略」で地域包括ケアに貢献する展望を語ります。

この記事のライター

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