OTC医薬品販売では、専門家が店舗内に常駐して対応することや、専門家が店舗にいる時間が営業時間の半分以上確保されることなどの規制がされている。規制改革推進会議は、これらの規制の緩和を求めている。「店舗内の常駐」に関しては、オンライン等で遠隔での対応でも可能なのではないかとし、専門家のいる時間帯に関しては店舗の裁量に任せればよいとの考えだ。
こうした要請に対し厚労省は、特に営業時間内の専門家のいる時間の規制に関して「年度内に一定の整理をしたい」と回答したという。
厚労省の回答に、規制改革推進会議委員からは、「年度内では遅すぎる。スピード感が求めるレベルと違うのではないか」といった厳しい意見が示されたという。
規制改革推進会議は、「専門家が不要とはいっていない。専門家がすべき業務にはどのようなことがあるのかをまずは整理して、その上でそれはオンラインでも可能なのかどうかを議論すべき」との立場だ。
委員からはオンライン服薬指導によって医療用医薬品の指導も遠隔で実施されていることなども挙げられ、「OTC医薬品の方がハードルが高いというのは理解に苦しむ」との意見も出たという。
出席した厚労省は一般用医薬品の販売における基本的な考え方として、「購入する情報提供」のほかに、「相談を受けた時の対応」や「店舗での安全管理(医薬品や従業員の管理)」があると説明。
専門家が行う情報提供の内容としては、「医薬品販売時において使用者の状況(年齢、他の医薬品の使用状況、症状等)について確認すること」「販売する医薬品の情報提供を行うこと」「(第1類医薬品の場合)書面を用いて必要な情報提供を行うこと」「情報提供された内容を理解したかどうか等を確認すること」「医薬品に関する相談に対し、適切な回答をすること」などを説明した。
情報提供だけでなく、専門家は管理も行っているとし、従業員の監督や店舗構造の管理、医薬品の管理、店舗業務に必要な注意などを挙げた。
さらに、具体的に相談の結果、OTC医薬品の販売を中止した事例などをいくつか挙げた。
例えば透析患者には適さない太田胃散の販売を中止した例や、ガスターやパブロン購入希望者が同薬効の医薬品をすでに服用していることが判明したために販売を中止した例などを紹介した。
しかし、会議委員からは「この程度の軽度の情報提供であれば、リモートでもできる。店舗ごとではなく、どこかで一括して対応でもよいのではないか」との意見が出たという。
「今後の考え方」として厚労省は、専門家が一般用医薬品販売に必要な「適切な情報提供」「相談を受けた場合の対応」「店舗内での安全管理」をどう確保するかが課題とした。
さらに、「店舗販売業(許可店舗)の責任の所在を明確にするとともに専門家による安全性や信頼性確保を担保した上で、情報通信技術も活用した情報提供・相談対応、管理体制、販売時間のあり方について検討する」と付記した。
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仮に専門家の店舗の滞在時間の規制を撤廃したとしたら、何が起こるのか。厚労省はこの規制に関してのみ、「年度内」という期限を口にしたとされる。基本的に専門家の常駐が原則であり、専門家のいない時間はOTC医薬品の販売はできないため、この規制の緩和だけでは、現状に大きな変化は起きないのではないか。
ここからさらに常駐自体の規制を緩和することにもなれば、「オンラインで医薬品を販売する」という業務の論点ではなく、むしろ店舗販売業という業の問題になるであろう。
ここが、同様に常駐規制緩和が議論されている産業医などとの差で、店舗販売業は地域に立地して初めて役割を果たしている側面がある。
ドラッグストアでは育児相談会や健康相談会を地域に向けて行うところも少なくなく、これらも地域に立地しているからこそできることだ。
こうした地域活動は医薬品販売と一体として業として提供されているのであり、医薬品販売だけを切り出して「リモートで可能」とする議論は多少なりとも乱暴ではないか。
オンラインは労働力が不足する中、活用すべき技術だ。地域で一体として役割を果たす店舗販売業が、付加業務としてオンラインを活用することはあっても、業の基準を満たさない業種が一部の業務だけを切り出してオンラインで完結させようとすることは地域医療のセーフティーネットを崩すことになりかねない。
くしくも国民皆保険の維持を目指してスイッチOTC拡大の議論も進む中、切れ味の鋭いOTC医薬品の受け皿としての役割も担う店舗販売業が地域で果たす役割は大きくなるはずだ。
年度内にOTC医薬品販売の在り方見直しか。規制改革会議方針で
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