日本 OTC 医薬品協会は5月19日に第61回定時会員総会ならびに第264回理事会を開催し、役員人事を決定、上原茂氏が新会長に就いた。
「挨拶」の中で上原新会長は、書面での表明となった背景について説明。「昨今のメディア環境において、情報が意図せず偏って伝わることが増えており、正確な内容が十分に届かない可能性があると感じております。そのため、誤解や誤報を防ぎつつ、公平な情報をお伝えする方法を模索した結果、この形式を選ばせていただきました。また、協会の予算管理の観点からも、最適な方法と考えております」と述べた。
その上で、同協会では、OTC 医薬品のさらなる発展と国民医療費削減に貢献できるよう、会員一丸となって取り組んでいく方針を説明。「我が国の医療提供体制および国民皆保険の維持のためにも、当協会では自助・共助・公助の観点からかねてより、『自分の健康は自分のために自分で守る』というセルフケアや軽微な身体的不調は自分自身で手当てするセルフメディケーションの普及を進めてまいりました」として、「そのために、セルフメディケーションを実践する基礎となる生活者のヘルスリテラシーの向上、OTC 医薬品・検査薬の範囲拡大、OTC 医薬品をより身近なものとするためのデジタル技術の活用、セルフメディケーション税制の活用促進など基盤の整備を進めています」と現状を説明した。
加えて、当協会ではこのほど、2030年に向けたスローガンとして「Statement2030」を策定したと発表。
以下の 5 つの重点活動項目に取り組んでいくと言う。
【5つの重点活動項目】
1.OTC医薬品・OTC検査薬の普及・拡大
2.セルフメディケーション税制改正への要望の実現
3.ヘルスリテラシー向上による適切なOTC医薬品の選択と適正使用の推進
4.セルフメディケーションに関するDXの推進
5.OTC医薬品の品質・信頼性の向上
■1 点目
OTC 医薬品・OTC 検査薬の普及・拡大。スイッチ OTC 化の加速、慢性疾患治療薬などの新たな領域のスイッチ OTC 範囲拡大の支援。また、OTC検査薬についても穿刺血等の低侵襲性検体を用いた検査薬など、範囲拡大への必要な対策のとりまとめを行う。そして上記慢性疾患治療薬の OTC 化サポートともなるセルフモニタリング・セルフチェック体制を充実させていく。
■2 点目
セルフメディケーション税制改正への要望の実現。2026 年度の税制改正に向けて制度の恒久化、対象品目をすべての OTC 医薬品・OTC 検査薬へと拡大すること、1 万 2 千円の購入を利用の条件として維持するものの差引額をゼロとし、上限額を引き上げることを要望する。そのためにも、関係団体等と意見交換などを行い、日本一般用医薬品連合会(一般薬連)と協働で税制改正への準備を進めていく。
■3点目
ヘルスリテラシー向上による適切なOTC 医薬品の選択と適正使用の推進。セルフメディケーションを実践する上で基礎となるヘルスリテラシーの向上を目指し、医師会・薬剤師会などのステークホルダーと連携して小学生にくすり教育を普及させる取組みを推進する。また、生活者が医療機関にかかるあるいはOTC 医薬品での対処の判断を手助けする「上手な医療のかかり方」を実践できるよう、関係団体と取組みを進めていく。
■4点目
セルフメディケーションに関する DX の推進。生活者と OTC 医薬品のアクセス窓口として、セルフメディケーションプラットフォームを充実させる。OTC 医薬品情報の提供サービス支援、おくすり手帳との連携、セルフメディケーション税制申告の支援、e-ラベリングなど、生活者の利便性を向上させるための取組みを一般薬連と協働して進めていく。
■5点目
OTC 医薬品の品質・信頼性の向上。自主点検により明らかになった OTC 医薬品の品質問題の解消および再発防止に向けた取り組みを強化する。

【OTC薬協】新会長に上原茂氏(大正製薬社長)/書面で就任所信表明
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