【リフィル処方箋動向】2024年6月に最高値/日本システム技術の調査

【リフィル処方箋動向】2024年6月に最高値/日本システム技術の調査

【2025.02.05配信】日本システム技術は2月4日、リフィル処方箋の普及状況に関する調査結果を公表した。それによると、診療報酬改定が施行された2024年6月に医科のリフィル処方率が向上、過去最高となった。改定などの各施策に一定の効果があったことが考えられるとしている。


率としてはまだまだ低いものの、2022年の0.05%からは2倍超の0.125%を超えた模様

 日本システム技術株式会社は、2025年2月4日に「リフィル処方箋の普及状況と医療費削減効果」についての調査結果を公表した。
 独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ『REZULT』を基に、リフィル処方箋に関する影響調査を実施したもの。調査対象は、同社が保有するレセプトデータベース(約940万人)の内、2022年4月~2024年6月の期間における医科外来・調剤レセプトデータ。

 リフィル処方は症状が安定している患者に対して、最大3回まで繰り返し利用できる処方箋による処方が可能となった仕組みで、2022年4月の診療報酬改定で新設されたが、利用率は2023年3月時点において0.05%に留まっているとされており、認知度の低迷が大きな課題となっている。
 施策としては2023年12月末に電子処方箋がリフィル処方に対応、そのほか2024年6月施行の診療報酬改定においてもリフィル処方箋の利用促進を図る改定が含まれていた。
  
 リフィル処方箋の処方側である病院・クリニック等(医科)と応需側である調剤薬局(調剤)について調査した。
 応需側は複数回利用可能であることから、数値としては高めとなるが処方箋の処方と応需に関しては概ね同傾向での推移が見られる。
 2023年3月時点では医科の処方状況としては0.05%にとどまっており、2023年12月まで同傾向が続いていた。 電子処方箋とリフィル処方については管理・運用面において相性が良いと考えられ、2024年1月以降若干の増加が見られた。
 また、診療報酬改定が施行された2024年6月においても医科の処方率が向上し、過去最高となっており、各施策に一定の効果があったことが考えられる。
 率としてはまだまだ低いものの、応需側の調剤での比率は2022年4月の0.05%からは2倍超の0.125%を超えた模様。医科は2022年4月の0.05%から2024年6月には0.075%を超える水準になった模様。


※2024年6月はデータ反映が完了している一部データ、2024年度は期中のデータとなるため速報値として掲載。

病床数が200床以上の比較的規模の大きな病院での伸長顕著

 病院・クリニックの処方状況について、医療機関の規模(病床数)別も確認。
 病床数が200床以上の比較的規模の大きな病院では、病床数がそれ以下の医療機関と比較して、処方率が大きく伸びていることが分かる。
 同社では「大きな病院では医師の負担軽減を図るため、積極的に導入が進んでいることが考えられる」としている。

 また、病床を持たないクリニック等の小規模施設では2024年6月処方率の増加が見られており、診療報酬改定において、かかりつけ医機能の評価となる生活習慣病管理料等の施設基準に「リフィル処方や長期処方を活用することが可能であることを、患者に周知すること」が要件に追加されたことの影響が考えられ、施設数の多いクリニックにおけるリフィル処方普及の一助となる可能性が推察される。

傷病1位はアレルギー性鼻炎

 リフィル処方箋を処方されている患者の傷病・医薬品についても調査。

 年度別に見た際に順位に大きな変動はなく、リフィル処方箋の対象として想定されている生活習慣病、アレルギーが上位に含まれている。

 傷病1位のアレルギー性鼻炎については元々の患者数が多いことも影響していると考えられるが、医薬品としてもアレルギー用薬が1位。同社では「リフィル処方箋の対象患者においては、概ね制度に対する期待通りとなっていると推測できる」としている。

 速報値となる2024年度においては春の花粉症シーズン(2~3月)が含まれていないことから、アレルギー性鼻炎・急性アトピー性結膜炎の割合が少なく出ているとも考えられる。

【表1】リフィル処方箋の処方患者における罹患状況(患者割合:上位5疾患)

【表2】リフィル処方箋の医薬品処方状況(患者割合:上位5薬効分類)

 リフィル処方箋の処方患者における外来医療費(10割)の推移についても調査。

 2021年度(リフィル処方箋導入前)と2022~2023年度(リフィル処方箋導入後)の外来医療費を比較した。
 また、リフィル処方箋の影響を明確にするため、定期的に通院しており、リフィル処方箋の処方が1年超継続した患者の推移を調査した。
 加えて、リフィル処方箋の利用による受診日数の減少も期待されるため、合わせて推移を確認している。

 同社では、「病状の変化もあるため一概には言えない」とした上で、定期的に通院している患者が安定的にリフィル処方箋を処方された場合、2021年度と比較して2022年度で3,647円、2023年度で5,141円程度、対象者1人当たりの外来医療費(10割)が減少していることが分かったとしている。

 そのため、定期的に通院している患者については一定の医療費削減効果があると考えられる、とした。

 受診日数にも減少傾向が見られ、2022年度で1.5日、2023年度で1.9日程度、対象者1人当たりの受診日数が減少していた。
 リフィル処方箋により受診日数も減少していることが確認できたと考えられるとしている。

 同社では、「リフィル処方については、まだまだ普及しておらず影響は限定的ですが、受診回数が減少することで医師や症状が安定している患者の負担軽減、医療費の削減にも繋がる」とし、「また、長期処方と比較して医療従事者(薬剤師)と患者の接点は維持できることもメリットとして挙げられる」としている。

 同社では、データヘルス計画の策定支援や事業実施支援の一環として、適正服薬(後発品の利用促進等)に関して通知から効果分析までのサービスも行っている。本調査の他にも、約940万人分の匿名加工済みのレセプト・健診データ等の医療リアルワールドデータによる地域差分析やペイシェントジャーニーなどアドホックな分析やデータの販売を行っているという。
■調査で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」について
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/

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