【日本保険薬局協会】「1社流通」調査/理由の説明あったのはわずか「7.1%」

【日本保険薬局協会】「1社流通」調査/理由の説明あったのはわずか「7.1%」

【2025.01.16配信】日本保険薬局協会は1月16日、定例会見を開き、「1社流通」に関する調査結果を公表した。「一社流通」はメーカーが卸を限定して流通させている医薬品のことで、価格交渉の余地が小さく、薬価の「単品単価交渉」「銘柄別評価」の原則の中で、薬価形成に問題があるのではないかとの指摘が出ているもの。薬局・医療機関からは1社流通の場合は、メーカーからその理由について説明を求める声が高まっている。1社流通品のある多くの薬局で、卸変更や納品時期確認を余儀なくされているだけでなく、患者への欠品対応や継続服用の中断といった供給上の問題も発生していた。


 調査は「医薬品流通に係る薬局の業務実態に関する調査」。
 医薬品の流通状況や1社流通品に係る現場の実態、休日配送の実態、「変更調剤の取扱いについて」事務連絡の影響、などについて聞いたもの。
 調査対象は日本保険薬局協会会員薬局の管理薬剤師で、1薬局1回答方式でWEB調査した。 回答期間は2024年11月1日(金)~12月4日(水)。回答数は4551薬局(回答率22.4%)、
 実施主体は一般社団法人日本保険薬局協会の医療制度検討委員会。倫理審査は日本薬局学会倫理審査委員会 (受付番号24014)。

 医療用医薬品の流通状況については、89.3%の薬局が後発医薬品調剤割合の維持に負担を感じており、91.4%が2020年12月以前と比較して現在の流通状況が不安定 だと回答した。これらの結果について協会は、「医薬品供給の安定性に関する深刻な問題が継続していることを示している」としている。
 

 また、1社流通など、卸が限定されている医薬品の入手に関しては、多くの薬局で卸変更や納品時期確認を余儀なくされているだけでなく 、患者への欠品対応や継続服用の中断といった問題も発生していた。特に1社流通の医薬品については、72.6%の薬局が取扱いがあると回答した一方、そのうち65.5%は患者に迷惑をかけた事例があった。協会は「医薬品供給の課題が顕著である」としている。
 メーカーや卸からの1社流通の理由説明は極めて限定的であり、大多数の薬局には説明がなされていない現 状が明らかになった。
 1社流通品があると回答した2533薬局のうち、メーカーから「報告及び理由の説明があった」はわずか7.1%。メーカーから「報告はあったが理由の説明はなかった」が18.3%、「報告もなかった」が48.0%、「分からない」26.6%。協会では「この状況は薬局運営に負担をかけ、患者への持続的な医薬品供給にも支障をきたしている」としている。
 
 なお、メーカー、卸、医療機関・薬局など流通当事者が遵守すべき医療用医薬品の流通改善ガイドライン(GL)では1社流通に関して、「一社流通を行うメーカーは、自ら又は卸売業者と協力し、その理由について、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと。また、一社流通を行うメーカー及び卸売業者は、その医薬品の安定供給を行うこと」とされている。
 GLは2024年3月に改訂されたばかりであり、今後、GL遵守の方向での改善も求められる。

 医薬品卸の休日配送については、90.4%の薬局が土曜日配送は業務や患者に貢献すると回答、日曜日・祝日配送 も同様の傾向を示した。
 特に「欠品削減」「患者の継続服用に貢献」「夜間・休日の医薬品供給」における貢献が高い回答率となった。
 また、休日営業の薬局とそれ以外の薬局との間で回答に差が見られ、休日営業の課題や苦労が見受けられた。

 「変更調剤の取扱いについて」の事務連絡に関しては、85.9%の薬局がメリットを感じていると回答、この事務連絡が恒常的に認められた場合、疑義照会に係る負担軽減や待ち時間削減、欠品削減など、業務効率化や患者サービス 向上につながる多くのメリットが期待されるとした。

 協会は、今回の調査で把握した医薬品流通の現状と課題について、業界団体や行政、会員薬局へ情報共有を行うとともに、 NPhAとして今後も持続的な医薬品供給に資する取り組みを継続していく考え。

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