【中医協】認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題に

【中医協】認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題に

【2024.10.10配信】厚生労働省は10月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)を開いた。認知症薬「ケサンラ」の薬価算定やコロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果を議題とした。


認知症薬「ケサンラ点滴静注液」の対応議論/診療側「レケンビと同様に現行の薬価基準に基づき算定することで良い」との意見

 中医協薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会では、認知症薬である「ケサンラ点滴静注液」(ドナネマブ、日本イーライリリー)に対する対応について議論した。同剤は高額医薬品として、合同部会にて議論することとされているもの。脳内に蓄積しアルツハイマー病を引き起こす原因と考えられている凝集アミロイドβ(Aβ)プラークのみに存在すると考えられるN3pG Aβ に対する抗体医薬品で、アルツハイマー型認知症治療薬「レケンビ」(レカネマブ、エーザイ)に次ぐ抗Aβ抗体医薬品となる。2024年9月24日に承認されている。

 論点としては、「薬価算定の課題」と「薬価収載後の価格調整の課題」の両面があり、各々が影響し合うこととなる。
 同剤の薬価算定方式に関しては、レケンビと同様のアルツハイマー病治療薬であることを踏まえ、レケンビと同
様に現行の薬価基準に基づき算定し、補正加算は既存のルールにしたがって評価することを事務局は案として示した。収載後の価格調整についてもレケンビと同様に、四半期での速やかな再算定の適否を判断するため、薬価算定方法又は2年度目の販売予想額にかかわらずNDBにより把握する案を示した。同剤はガイドラインを踏まえると、投与対象となる患者数は限定的になる見込みであるものの、今後の医療現場における使用状況等によっては実際に投与される患者数は薬価収載当初の予測と比較して増加する可能性もあるためだ。
 また、費用対効果評価については、薬価算定方式に応じた区分によって実施いかんや方法を決める案が提示された。

 こうした議題に関して、日本医師会常任理事の長島公之氏は、薬価算定方式について、「本剤とレケンビの違いを踏まえた臨床上、治療上の使い分けはあると思うが、医薬品としては類似性がかなり高いと思われる。したがって薬価算定方式を変えるほどの理由は見当たらない」とした。また薬価収載後の価格調整については、事務局の提案の通りで異論ないとした。

 日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、薬価算定方法については「脳内アミロイドβ量を減少させる作用があるアルツハイマー病治療薬であるため、同様の作用があるレケンビと同様に現行の薬価基準に基づき算定することで良いと考える」と述べた。薬価収載後の価格調整については、「対象となり得る患者数が多く使用可能な医療機関の体制や使用実態等の変化により、当初の予想より大きく市場拡大することも考えられることから四半期での速やかな再算定の適否を判断するために2年度目の販売予想額などにかかわらずNDBよる使用量の把握は必要な対応と考える」とした。
 そのほか、森氏はケサンラの有害事象のデータに関して、直接比較が難しいとしつつもレケンビに比べてARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫等)などが多いように感じられるとし、最適使用推進ガイドラインや添付文書での注意喚起や、把握された市販後の安全性情報の適切な医療現場へのフィードバックの必要があるとした。

 引き続き、ケサンラの薬価については議論される方向。

コロナ治療薬「ゾコーバ」の費用対効果評価/支払い側「価格を適正な水準まで調整している仕組みとしてさらなる費用対効果評価の活用を」

 中医協総会では、コロナ治療薬である「ゾコーバ」(エンシトレルビル、塩野義製薬)の費用対効果の総合的評価が報告された。比較対照技術に対し効果が同等であり、かつ費用が増加する「費用増加」との結果。

 これに対し日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、「費用対効果評価については異論はない」とした上で、「今回、費用増加という結果にはなったが、あくまでも費用対効果に対する評価結果であり、医薬品の有効性・安全性に対するものではないというふうに思っている。この評価結果によって現場等が混乱が生じないよう、そして今後の感染症治療薬等に関する企業の開発意欲がそがれることがないことが必要」との見解を示した。

 他方、健康保険組合連合会理事の松本真人氏は、コロナ治療薬全般に関して、として「全般について感想を申し上げると、標準治療の対症療法に比べて費用対効果という観点に見るとなかなか追加的な有用性が認められていないという印象を受けている」とした。「新型コロナ感染が拡大した当初は、重症化する患者も多く治療法が確立されていなかった状況もあり、新たな治療薬を届けたことは一定程度理解する」とする一方、「ただ、これまでの費用対効果評価の結果と、ウイルスの変異によって重症化する患者が減っているという現状を踏まえると今後は限りある医療保険財政の中で治療の選択肢を確保していくためには新型コロナウイルス感染症に対する適切な治療薬の選択をよくよく考えていく必要があると思う。また価格を適正な水準まで調整している仕組みとしてさらなる費用対効果評価の活用方法についても今後検討していくべきだ」(松本氏)と述べた。

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