【内臓脂肪減少薬アライ】取扱店がチェーンに偏重の指摘

【内臓脂肪減少薬アライ】取扱店がチェーンに偏重の指摘

【2024.04.02配信】来週、4月8日から“日本初の内臓脂肪減少薬”とのキャッチコピーで話題を集めている「アライ」(大正製薬)が発売される。CMなど華々しいプロモーションの一方で、取り扱い店についてはドラッグストアやチェーン薬局に偏重しているとの指摘が出ている。


個店からは「研修だけでも受けやすい窓口設置を」の要望

 来週、4月8日から“日本初の内臓脂肪減少薬”とのキャッチコピーで話題を集めている「アライ」(大正製薬)が発売される。CMなど華々しいプロモーションの一方で、取り扱い店についてはドラッグストアやチェーン薬局に偏重しているとの指摘が出ている。

 東京・台東区で地元密着の薬局を経営する薬剤師は、「アライ」の取り扱いを申し出たところ、断られたと語る。理由を尋ねると、供給量の問題から取り扱い店には一定の基準があると営業担当者に言われたと話す。その「基準」はどのようなものなのか尋ねたところ、「どういったところなのかは、HPの取り扱い店を見てください」という不明瞭な回答だったという。その取り扱い店のサイトに載っているのは、ほとんどがチェーン店で、自局近隣では規模の小さな個店を見つけることはできなかったと、この薬局経営者は語る。

 同様の指摘は薬局薬剤師のSNS上でも上がっている。ある都道府県薬剤師会関係者の中には水面下でメーカー関係者に事実確認をした人もいたようだが、その際の回答は「門戸は閉ざしていない。問い合わせしてもらえれば対応する」というものだったという。冒頭の薬局経営者への回答とは異なる。

 一方、SNS上では製品の研修だけでも多くの薬剤師が受けやすいようなHP上での窓口をつくってほしいとの声が出ている。現状、規模の大きくない個店では、直販メーカー製品の取扱いでは最小限の購入数とその後の廃棄リスクとの兼ね合いなどでコストが収益を上回ってしまうこともあり、薬局側にも経営上、取扱いにハードルがあることもある。こういった中でも研修だけはしっかり受けておきたいという薬剤師の要望は根強い。当該製品の販売はなくとも患者の中に併用している人が出る可能性はあり、全ての医薬品に関する知識を習得しておきたい気持ちがあるからだ。

 実際のところはどうなのか。本紙では大正製薬から以下の回答を得た。

Q1:「アライ」を薬局が取り扱うためには、どこにアクセスをしてお申し込みをすれば良いか?
A1:アライのお取り扱いは、適正販売の観点から弊社とのお取引が前提となります。弊社とのお取引状況は弊社お客様119番室へご連絡頂けますと確認可能です。補足:適正販売とはアライ販売にあたっての当社講習を受講された薬剤師がいらっしゃる店舗でのみその薬剤師が販売することに了承及び確認が出来る企業となります。

Q2:上記「アライ」の取り扱い申し込みをする際に貴社内でどのような基準を設けているか?
A2:アライは要指導医薬品の為、薬剤師が対面で書面を持って販売することが薬機法で定められております。また、アライは承認過程を踏まえて適正販売を行うことが重要であると考えており、アライ販売にあたっては当社講習を受講された薬剤師がいらっしゃる店舗でのみその薬剤師が販売することに了承及び確認が出来る企業を1つの基準として考えております。弊社との新規お取引を要望の際は、適正使用及び供給可能数量を鑑みた上で、お取引に向けた手順を進めて参ります。

Q3:現状で2を満たさない薬局が新規で取り扱いをしたい場合、取り扱いは困難と考えて良いか?
A3:適正販売に合意頂けない場合は、薬剤の適正上、お取り扱いはご遠慮いただいております。

Q4:昨今、薬局での要指導薬の取り扱いが推奨される施策の流れの中、取り扱い店が制限されることについてはどのようにお考えか?
A4:要指導医薬品含め、OTC医薬品等のセルフメディケーション推進に向け取り扱い店舗増加は弊社としても推進していきたいと考えております。一方でオーバードーズなど適正使用とは異なる社会課題にも危機感を持っております。地域医療という観点からもセルフメディケーションの推進と併せて、適正使用に向けた推進も重要であると認識しております。

(QA以上)

 市場原理と薬局・薬剤師が備えるべき機能の狭間の問題ーー。簡単な解決方法はないが、双方の観点を考慮して解決の糸口を探ることで地域住民の健康への貢献を高めるべきことは指摘するまでもない。

この記事のライター

関連するキーワード


アライ

関連する投稿


【厚労省官報告示】オルリスタット(製品名「アライ」:大正製薬)を要指導医薬品に指定/海外では抗肥満薬として使用

【厚労省官報告示】オルリスタット(製品名「アライ」:大正製薬)を要指導医薬品に指定/海外では抗肥満薬として使用

【2023.02.17配信】厚生労働省は2月17日の官報で、オルリスタット(製品名「アライ」:大正製薬)を要指導医薬品に指定する告示を行った。


【厚労省】ダイレクトOTCの「アライ」(大正製薬)了承/海外では抗肥満薬として使用

【厚労省】ダイレクトOTCの「アライ」(大正製薬)了承/海外では抗肥満薬として使用

【2022.11.29配信】厚生労働省の薬食審要指導・一般用医薬品部会は11月28日、海外では抗肥満症薬として承認されている成分名オルリスタット、製品名「アライ」(大正製薬)をダイレクトOTCとして了承した。来年3月にも正式に承認の見込みという。


【厚労省薬食審】「オルリスタット」のOTC化を審議/海外で肥満症薬として利用

【厚労省薬食審】「オルリスタット」のOTC化を審議/海外で肥満症薬として利用

【2022.11.15配信】厚生労働省は11月28日に薬事・食品衛生審議会「要指導・一般用医薬品部会」を開催し、アライ(有効成分:オルリスタット)のOTC化を審議する予定。同剤は海外で肥満症薬として使われているもの。


最新の投稿


【日本薬剤師会】「薬価乖離率5.2%でもまだこれまでの中間年改定続けるのか」/岩月会長

【日本薬剤師会】「薬価乖離率5.2%でもまだこれまでの中間年改定続けるのか」/岩月会長

【2024.12.04配信】日本薬剤師会は12月4日、定例会見を開いた。この中で、同日、薬価乖離率の速報値が公表されたことについて記者から質問が出た。


【厚労省】薬価調査の速報値公表/乖離率5.2%/前回6.0%から0.8ポイント圧縮

【厚労省】薬価調査の速報値公表/乖離率5.2%/前回6.0%から0.8ポイント圧縮

【2024.12.04配信】厚生労働省は12月4日、薬価調査の速報値を公表した。


【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【2024.12.03配信】株式会社イヤクル(本社:北海道、代表取締役:佐孝尚氏)は、薬剤師を対象に「医薬品供給不足に関するアンケート調査」を実施。その結果、出荷調整品のカテゴリーでは抗生剤がトップだった。


【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【2024.12.02配信】八戸薬剤師会(青森県、阿達昌亮会長)は12月2日までに同会HP上の緊急避妊薬の供給体制サイトをバージョンアップした。産婦人科医会の了解を得て、受診できる医療機関リストも整備した。


【財政審_建議】薬価改定「原則全ての医薬品対象」/除外するなら「安定供給確保」や「真に革新的な」医薬品

【財政審_建議】薬価改定「原則全ての医薬品対象」/除外するなら「安定供給確保」や「真に革新的な」医薬品

【2024.11.29配信】財務省の財政制度等審議会は11月29日、「令和7年度予算の編成等に関する建議」を公表した。