【日病協】診療報酬改定に係る要望書【第2報】を武見厚労相に提出/高額薬剤管理の評価新設や入退院支援加算の拡充求める

【日病協】診療報酬改定に係る要望書【第2報】を武見厚労相に提出/高額薬剤管理の評価新設や入退院支援加算の拡充求める

【2023.10.24配信】日本病院団体協議会(議長:山本修一氏)はこのほど、診療報酬改定に係る要望書【第2報】を武見敬三厚労相に提出した。入退院支援加算、入院時支援加算の見直しでは、加算の増点のほか、予定入院患者以外の算定要件拡大などを要望している。薬剤保管や作業等に負担があり、廃棄リスクもある高額医薬品について管理に関する評価の新設を求めている。


 提出した要望書は以下の通り。

2023年10月23日
厚生労働大臣
武見 敬三 殿

日本病院団体協議会 議 長 山本 修一
一般社団法人国立大学病院長会議 会 長 横手 幸太郎
独立行政法人国立病院機構 理事長 楠岡 英雄
一般社団法人全国公私病院連盟 会 長 邉見 公雄
公益社団法人全国自治体病院協議会 会 長 小熊 豊
公益社団法人全日本病院協会 会 長 猪口 雄二
独立行政法人地域医療機能推進機構 理事長 山本 修一
一般社団法人地域包括ケア病棟協会 会 長 仲井 培雄
一般社団法人日本医療法人協会 会 長 加納 繁照
一般社団法人日本社会医療法人協議会 会 長 西澤 寬俊
一般社団法人日本私立医科大学協会 参 与 小山 信彌
公益社団法人日本精神科病院協会 会 長 山崎 學
一般社団法人日本病院会 会 長 相澤 孝夫
一般社団法人日本慢性期医療協会 会 長 橋本 康子
一般社団法人日本リハビリテーション病院・施設協会 会 長 斉藤 正身
独立行政法人労働者健康安全機構 理事長 有賀 徹

■令和6年度(2024年度)診療報酬改定に係る要望書【第2報】
 現在、全国の病院はコロナ診療と一般診療の両立が求められる WITH コロナ時代の地域医療を提供するために、さまざまな努力を行っています。
 しかし、この1年で、病院の経営環境は大きく変化しております。光熱費の高騰に加え、給食委託費を含む委託費の上昇、諸物価の上昇により、医療提供コストの大幅な上昇が続き病院経営はひっ迫しています。また、諸物価の上昇に対応するため医療従事者への処遇の改善も喫緊の課題となっています。
 医師の働き方改革、医療 DX の推進、感染症対策など、病院が対応をしていかなければならない課題が山積しています。日本病院団体協議会は介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定と同時に行われる令和6年度の診療報酬改定において春の要望書とともに、改めて以下の12項目を要望します。

1. 入院基本料の引き上げ
 エネルギーコストの上昇、物価上昇など医療提供コストの上昇に対応し、かつ医療従事者に対する適切な処遇改善を実現するために、すべての入院基本料の大幅な引き上げを要望します。

2. 適切な食事療養費の設定
 入院時食事療養費は、過去20年間以上にわたり一食640円と据え置かれています。食材費、光熱費の高騰や人件費の増加により、近年、ほとんどの病院の給食部門は赤字に陥っており、やむを得ず食材費の厳しい削減等をせざるを得ない状況にあります。高齢者の入院が増加している我が国において、入院中に適切な食事を提供することは患者のADLを維持・改善するためにも非常に重要です。入院時食事療養費の適切な水準への引き上げを、強く要望します。

3. 病棟における介護専門職の評価
 近年、病院に入院する患者の高齢化が顕著となり、介護が必要な割合が急増しています。今後ますます増え続ける高齢患者に対応していくためには、病院内で介護業務を担うスタッフの確保が不可欠です。しかし現状、病院における介護職は看護補助者と位置づけられ、国家資格を持った介護福祉士など専門職がやりがいを持ち専門性を発揮し働くことが難しく、病院内の介護人材の確保は非常に困難を極めています。病院医療において、適切に介護専門職が位置づけられ評価されるよう要望します。

4. 病院におけるICT推進のための評価
 現在、国が進めている医療DXの推進は、今後の我が国における効率的な医療提供体制の構築に非常に重要です。しかし病院における電子カルテ、オンライン資格確認システム、電子処方箋システムなどの導入・維持管理等は、病院にとり経営的にも大きな負担となっています。また、昨今のサイバー攻撃へ対応するためのサイバーセキュリティー体制の構築にも、多額の費用がかかります。改めて、病院におけるICT推進のための適切な評価を要望します。

5. 急性期入院医療におけるリハビリテーションの充実
 現在、中医協総会および分科会において、高齢者の入院の在り方が議論されており、急性期入院医療における早期のリハビリテーションの重要性が指摘されています。患者を早期に回復期や慢性期機能の病床へ移動することも重要ですが、入院中に高齢者のADLを維持することも同じく重要です。ADL維持向上等加算のさらなる評価や、疾患別リハビリテーション料との併算定化など、急性期入院医療においてのリハビリテーションの充実を要望します。

6. 急性期病院からの、後方支援病院への転送の評価
 高齢者の救急搬送が急増している中、高次の急性期病院への高齢者の入院も増加しています。しかし、その中には、地域の後方支援病院での療養で対応可能な患者も存在します。地域における病院の機能分化と連携を推進するため、救急外来で対応した患者を後方支援病院に転送する際に、直接救急外来からの外来転送と、入院してからの転送に対しての評価を要望します。

7. 地域医療体制確保加算の新たな評価の新設
 現在の地域医療体制確保加算の算定要件は、救急車の搬送件数が2,000件以上とされています。しかし、地域により要件を満たすことが困難な地域が存在すること、また今後増加する高齢者救急に対応する地域包括ケア病棟を中心とする中小の病院が地域の救急医療体制を確保していくためにも、救急搬送1,000件以上2,000件未満でも算定可能な加算2と、500件以上1,000件未満でも算定可能な加算3の新設を要望します。

8. 薬剤費が包括される病棟における高額薬剤の除外薬剤の新設
 地域の回復期機能を担う後方支援病院は、ほとんどが地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟など薬剤費が包括される特定入院料の病棟となっています。高齢患者を急性期病院からの早期の転院をすすめる際に、高額薬剤を使用している患者では、受け入れがスムーズに進まない現状があります。昨今、高額薬剤を内服している患者も増加していることを考慮し、これら薬剤費が包括化されている入院料において、高額薬剤の除外制度の新設や特定入院料の大幅な引き上げを要望します。

9.高額医薬品の管理に関する評価の新設
 昨今の高額医薬品は、使用に至るまでの適切で慎重な薬剤保管(低温フリーザの使用)、解凍作業等が必要な事が多く、医療機関は管理コストと当該薬剤の使用不能・破損リスクを負うばかりか、なんらかの理由により投与中止となった場合、病院が当該薬品費を負担しなければなりません。医薬品の価格設定は薬価にて定められており、自助努力ではカバーできないことから、高額医薬品の管理に関する評価を要望します。

10. 夜間休日救急搬送医学管理料、院内トリアージ加算の再診症例での算定
 地域の救急医療体制を維持することがますます重要になっている中、現在、上記点数は初診症例に算定が限定されています。しかし病院は初診症例だけに救急医療を提供しているわけではありません。救急医療に対する評価を充実するため初診症例とは異なる疾病での再診においては算定を可能とするよう要望します。

11. 精神科における地域包括ケアシステムの推進に資する入院料の新設
 精神科における地域包括ケアシステムの推進のためには、入院から退院後に至るまで切れ目のない医療および地域定着支援を行う体制が必要です。しかしその体制の構築は道半ばであり、特に入院において不十分であるため、精神科における地域包括ケアシステムの推進に資する入院料の新設を要望します。

12. 入退院支援加算、入院時支援加算の見直し
 本加算は、早期の退院支援を進める上で非常に効果的です。しかし現在の点数は、支援業務を行う人的コストを考慮すると過少であり、専従人員の確保も困難な状況にあります。現在の算定要件に見合うような加算の増点、または専従要件を緩和する等の見直しを要望します。
 また入院時支援加算は、予定入院患者のみ算定可能ですが、もっとも入院時に労力が発生するのは救急入院等の当日入院患者です。入院時支援加算をより広く算定できるよう、算定要件の見直しを要望します。

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