【日本保険薬局協会】地域支援体制加算、「要件と点数を同一に」/改定要望書公表

【日本保険薬局協会】地域支援体制加算、「要件と点数を同一に」/改定要望書公表

【2023.05.11配信】日本保険薬局協会は5月11日に定例会見を開き、令和6年度の診療報酬・調剤報酬改定への要望書を公表した。この中で地域支援体制加算については調剤基本料1と1以外で、要件と点数を同一にすることを求めた。また、在宅領域への機能拡充へ向けて地域連携薬局の評価も求めた。


薬局グループの規模に関わらず薬局が果たしている機能を公正に評価を

 協会がまとめた文書は以下の通り。

■2024 年度診療報酬改定等に関する要望書
~真に国民の健康な生活に貢献できる薬局になるために~
一般社団法人 日本保険薬局協会
2023 年5月

物価高騰、賃上げによる薬局経営への影響
 昨今の光熱費をはじめとした物価高騰により薬局経営に影響が生じている。また、地域の医療・介護インフラを支える薬局従業員の生活を維持するために賃上げ等の処遇改善も喫緊の課題であり、公定価格である調剤報酬の売上に占める割合が高い薬局においては、価格転嫁ができないことからも持続的な経営に支障がでることが懸念される。
 真に国民の健康な生活に貢献できる薬局になるために我が国では、社会保障制度の安定性・持続可能性を確保することが重要視されており、昨今では国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向け、マイナ保険証によるオンライン資格確認や、そのシステムを基盤とした電子処方箋の運用等、医療 DX を進める動きも活発化している。薬局においては、地域包括ケアシステムの一翼を担い、患者・国民にとって身近であって、信頼される存在になることが期待されており、薬剤使用期間中の患者フォローアップの義務化、健康サポート薬局に加えて、地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局(以下、「認定薬局」)の制度化、直近では、第 8 次医療計画において麻薬調剤や無菌調剤等の高度な薬学管理が可能な薬局を整備することが明記された。

 弊会では、薬局が地域におけるチーム医療において、治療方針や患者情報を共有した上で、継続的な薬学的管理を担い、薬物治療について医師との協働を通じて、真に患者や地域から求められる薬局になることを目標としている。また、地域における災害及び感染症対策、医薬品の安定供給等の昨今の課題に対しても薬局機能の発揮に取り組んできた。
 さらに、電子処方箋等の普及に関しては、情報管理や医療情報連携に貢献し、在宅医療やオンライン、リフィル制度等において利便性向上に寄与することから積極的に推進していく考えである。一方で、その普及の過渡期は業務が複雑化し、コストが増大するため速やかな普及を促す政策に期待したい。

 また、調剤報酬においては、対物業務の評価から、患者や地域から求められる取組みを含む薬局機能及び薬局薬剤師の職能発揮の評価へと、患者が薬局を選ぶ上で分かりやすく納得できるものとなるよう、累次の改定により見直しを行う必要がある。重点事項として、下記の点を要望する。

1. 薬局グループの規模に関わらず薬局が果たしている機能を公正に評価
 現行の調剤報酬は、患者やその家族にとって分かりづらく、特に調剤基本料や地域支援体制加算は、薬局グループの規模によって要件が異なる等、理解し難い。かかりつけ機能、医療機関等との連携、在宅医療への対応等、薬局が果たしている機能に基づき公正に評価されるべきである。
(要望事項)
 調剤基本料1と1以外とで地域支援体制加算の要件と点数を同一とすること
 地域支援体制加算の夜間・休日対応実績要件(400 回/受付 1 万回)の緩和
 在宅医療における麻薬や無菌調剤の実績がある地域連携薬局を評価すること
 専門医療機関連携薬局を評価すること

医薬品の安定供給と後発医薬品の継続的な使用促進に対する評価求める

■医薬品の安定供給と後発医薬品の継続的な使用促進に対する評価
 薬局における後発医薬品の使用啓発活動や、安定供給のための取引先等との情報連携、医薬品管理、供給不安定時における迅速かつ丁寧な対応等の負担を踏まえた評価を要望する。
 前述の内容を含めた、具体的な要望事項を、下記に記載する。

1. 薬局グループの規模に関わらず薬局が果たしている機能を公正に評価
 これまでの累次の改定を経て、薬局グループの規模に応じて、点数の低い調剤基本料3の適応を拡大する措置が講じられてきた。そればかりか薬局の機能を評価している地域支援体制加算においても、調剤基本料1以外の薬局では、調剤基本料1と比べて高い実績要件を課せられているにも関わらず、点数は低く設定されており、国民の視点からも不合理でありわかりづらい報酬体系となっている。本来はかかりつけ機能、医療機関等との情報連携、在宅医療への対応等、薬局が果たしている機能に基づき公正に評価されるべきである。
 また、調剤基本料1以外の薬局に設けられている9つの実績要件のうち夜間・休日の対応実績に関しては、地域ごとの医療環境に左右されるところが大きく、環境要因で薬局・薬剤師の取組みを評価するべきではない。地域ごとの医療環境やニーズに合わせた支援体制を構築している薬局が、適切に評価されるよう要件の改定を要望する。
 さらに、認定薬局においてはそれ以外の薬局と比べて、人員や設備等の体制が充実しているだけでなく、果たしている機能や実績が顕著に高いことから、在宅医療における麻薬や無菌調剤の実績がある地域連携薬局や、地域におけるがんの薬物治療の質向上に貢献している専門医療機関連携薬局の全国への配置を推進するべく評価を要望する。

2. 医薬品の安定供給と後発医薬品の継続的な使用促進に対する評価
 都道府県ごとのばらつきはあるものの、後発医薬品の使用率は 80%に達しその医療費抑制効果は大きく、今後も、皆保険制度の持続性の観点からバイオシミラーを含め、継続的な使用促進をしていく必要があり、薬局における啓発活動や、安定供給のための取引先等との情報連携、医薬品管理、供給不安定時における迅速かつ丁寧な対応等の負担を踏まえた評価を要望する。

3. かかりつけ薬剤師、及びフォローアップの推進による薬物治療の質向上について
 継続的な薬学管理、及び薬物治療、セルフメディケーションをサポートする上で、
 服用薬剤の特性、服薬状況、生活上の背景等の患者一人ひとりの情報把握
 最適な方法、頻度、タイミングでの患者フォローアップ
が重要であり、これらを行うことで、
 服用薬剤の効果の把握
 副作用の早期発見及び対応
 薬物治療におけるアドヒアランス向上、不都合の解消
といった面において効果的であり、また、患者との信頼関係の上で実施されるものであるため、かかりつけとしての関係構築が何よりも重要である。
① かかりつけ薬剤師・薬局制度の見直し
 かかりつけ薬剤師を推進していく上では、勤務経験、勤務時間、在籍期間等でかかりつけ薬剤師機能を果たせる薬剤師を必要以上に制限するべきではないと考える。特に、「当該薬局に 1 年以上在籍」に関しては、薬剤師としての経験の蓄積や、資質向上を目的とした勤務薬局変更の妨げとなっていることもあり、例えば「当該地域に1年以上在籍」と要件緩和を要望する。
 また、かかりつけ薬剤師が不在時の服薬管理指導料(かかりつけ特例)に関して、患者の経過については、かかりつけ薬剤師より局内ミーティングや薬剤服用歴における申し送り等によって、同一薬局の他の薬剤師に共有されていることから、「後日、かかりつけ薬剤師から当該患者にフォローアップを実施する」等の取り組みをしたうえで、かかりつけ薬剤師が不在時に対応する薬剤師を予め指定しておくのではなく、同一薬局に勤務する薬剤師であれば要件を満たすよう要望する。
 これらの見直しを行うことで、患者がかかりつけ薬剤師制度を利用しやすく、かつ、より継続的な関係構築に寄与するものと考える。
② 特定の疾患における服用期間中フォローアップの推進について
 服用期間中フォローアップを通じた患者との関係性向上、処方医との連携によって、アドヒアランス向上、副作用回避等の成果が得られており、その対象は疾患や服用薬によって限定されるものではなく、幅広く実施されているが、一方で、労力や対応時間を要している。こういった現状を踏まえて、より一層取り組みが推進されるよう、効果的かつ効率的な情報連携の環境整備等の施策が必要であると考える。
 また、糖尿病や認知症等、特定の疾患において服用期間中のフォローアップを行い、処方医と情報連携することで、進行予防、重症化予防に寄与するため、そのプロセスに対する評価を要望する。

4. 患者にとって安心で質の高い在宅医療の推進について
在宅業務においては、患者一人ひとりの治療経過、服薬状況等に合わせた服薬支援はもちろん、入退院時含めて、治療に係る多職種間のシームレスな情報連携、治療を受ける患者のみならず、その家族の負担を軽減するために、頻繁な訪問や相談応需等、臨機応変、かつ、柔軟な対応を行っており、治療・介護上での重要性と成果に応じた下記を要望する。
① 医療機関から薬局に対する退院時サマリの情報提供等のシームレスな情報連携を推進
② 医師の在宅訪問に同行した際の処方設計過程における処方提案、情報提供等の評価
③ 認知症の人やその家族を支えるための多職種連携や、薬物治療上の成果を評価
④ 緩和ケア、ターミナルケアにおける多頻度訪問や、高度な薬学管理が必要な業務を評価

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