【薬学教育コアカリ改訂】関係者の納得感は?

【薬学教育コアカリ改訂】関係者の納得感は?

【2022.12.06配信】文科省は12月1日、「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)(案)」に関するパブリックコメントを開始した。11月25日の「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」で改訂案を了承していたもの。パブコメを経て、令和5年3月に確定版を公表、1年間の周知期間をもって、令和6年度から導入される見込みだ。 https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001273&Mode=0 この改訂内容に対し、関係者はどのように見ているのだろうか?


感染症予防や情報技術を生かす能力の記載には評価

 今回の改訂内容に対し、薬学教育に関わるある関係者は、「目指した内容には到達していない」と指摘し、「道半ば、いや3分の1程度ではないか」と改訂内容に対してコメントする。

 無論、今回の改訂に向けた関係者の長い議論が無駄だったわけではなく、例えば、「A」の「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」の項には「プロフェッショナリズムとして発展」を書き込み、この「A」項目を単なる1科目ではなく、全期間の薬学教育において関連性を意識することとしたことには評価の声がある。

 また、「E」の「衛生薬学」の部分は、新型コロナ流行を受けて、感染症の予防やまん延防止に係る内容の充実を記載した。「B」の「社会薬学」には「情報・科学技術を生かす能力」を記載。「C」の「基礎薬学」に関しては各所に「基礎をなすもの」ということを意識した文言を入れた。この背景には、薬剤師として基礎薬学の最先端研究を目指すのはいいが、それだけでは薬剤師としての基本的資質能力を備えたとは言えず、「基礎薬学に裏打ちされた専門性の発揮」を求めたものといえる。

「公衆衛生薬学」の大項目への明記かなわず

 一方、関係者が期待をして記載まで至らなかった領域の筆頭として、公衆衛生がある。これまでの薬剤師の養成に関する厚労省の各種検討会では教育現場から公衆衛生における教育が不足していたとの発言もあり、今回の改訂での拡充は大きな課題となっていた。
しかし、「公衆衛生薬学」という文言を大項目として記載することには至らなかった。「衛生薬学」の大項目にすでに含まれているとの意見が出たためだった。

 こうした変化への歩みの遅さに焦燥感を抱く関係者もいる。ある関係者は、次のように指摘する。
 「検討会の中でも委員から“一般から見て薬局の役割が見えにくい”との意見が出ていた。医師の診断を受ける前の人にアプローチすることも薬剤師の仕事であるし、薬局にはさまざまな役割がある。それを外から見えやすくすることも改訂の大きな意味でもあると思うが、決定権を持つ人たちの中に前例主義や仲間内感、責任回避の思想があるのではないかと思う。薬剤師は誰のために働いているのか、誰の利益を第一にするのかを考えれば、自ずと答えは出るはずだが、それを阻止するものは幾つもある。書かれたものを金科玉条にする思考をどこで手放すかが問題で、臨床現場を知らない教員が物事を決める危険性を感じる。今回の改訂で大きく変化した部分はあると思うが、まだまだ道半ばというか、3分の1以下ではないか。次回の改訂への課題を残したと思う」とする。

 一方、同氏は教育現場と実際の医療現場の連携も無視できない観点として指摘する。
 「現場が先をいっていないとコアカリも変わりようがない、という意見も委員からは出ていた。その通りだと思う。心ある活動を進める薬剤師は増えつつあるが、それをきちんと大学教育に反映できているか、またそれを職能団体が覚悟をもってサポートすることができるかも、今後の課題だと思っている」と語る。

編集部コメント

 卒後研修の話題、卒前と卒後の一貫した取り組みの必要性が指摘される中、実業界である医療現場が教育への関わりをさらに強めなければいけない局面であることは、誰もが否定しないであろう。今後の取り組みの進展に期待したい。

この記事のライター

関連する投稿


【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【姫路獨協大学】薬学部医療薬学科の学生募集を停止/令和7年度入学者募集から

【2024.04.02配信】姫路獨協大学(兵庫県姫路市)は4月1日、薬学部医療薬学科の学生募集を停止すると公表した。


【薬学教育カリキュラム改訂】案を了承、パブコメへ

【薬学教育カリキュラム改訂】案を了承、パブコメへ

【2022.11.25配信】文部科学省は11月25日、「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」を開催し、薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂を了承した。今後、パブコメを経て、令和5年3月に確定版を公表、1年間の周知期間をもって、令和6年度から導入される。


【明治薬科大学・越前学長】フォーミュラリの教育現場での活用を提唱/「同種同薬効の中で最善の薬剤を選択する過程を学ぶのに有用」

【明治薬科大学・越前学長】フォーミュラリの教育現場での活用を提唱/「同種同薬効の中で最善の薬剤を選択する過程を学ぶのに有用」

【2021.10.11配信】明治薬科大学学長の越前宏俊氏は10月11日、日本調剤が主催したフォミューラリシリーズ勉強会で講演し、フォーミュラリが薬学教育現場でも活用できることを提唱した。同種同薬効の多数の薬剤の中で、「患者に望ましい医薬品を1つや2つ選択するには薬価収載本やガイドラインでは足りず、フォーミュラリが有用」との考えを示したもの。


最新の投稿


【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【厚労省】“研究用”抗原検査キット、薬機法で取り締まりの方向/該当性判断の上

【2024.07.25配信】厚生労働省は7月25日に「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会」を開催し、体外診断用医薬品の特性を踏まえた制度の見直しについて議論した。その中で「研究等の医療以外の用途を標榜する試薬の提供業者への対応」を議題とした。


【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【日薬】オーバードーズ問題でマニュアル作成を検討中

【2024.07.24配信】日本薬剤師会は7月24日、都道府県会長協議会を開催した。


【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【厚労省】処方箋保存期間の検討を提示/薬局検討会

【2024.07.19配信】厚生労働省は、現在3年間となっている処方箋の保存期間について見直す方針を示した。「第7回薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で提示した。診療録の保存期間が5年となっている中、電子処方箋については処方箋を調剤済みとなった日から5年間保存するサービスを提供しているなどの環境変化を挙げている。今後、制度部会で議題とする方針。


【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【コンソーシアム】大阪市から調剤外部委託で4社8薬局が確認通知受領を公表

【2024.07.19配信】薬局DX推進コンソーシアムは7月19日、大阪市から調剤業務一部委託事業の確認通知を受け取ったと公表した。


【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【日本保険薬局協会】健康サポート薬局と地域連携薬局「違いない」/厚労省検討会に意見書

【2024.07.19配信】日本保険薬局協会は7月19日に開かれた厚労省「第7回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で意見書を提出した。「健康サポート薬局、地域連携薬局、地域支援体制加算届出薬局が描く薬局像は、小異こそあれ、分立させるほどの違いはない」とした。


ランキング


>>総合人気ランキング