前回の版発行後に起きた裁判事例を次の通り、追記、解説している。
2 薬局及び薬剤師への法的責任が問われた事例
(1)平成29年10月30日.東京地方裁判所判決
原告は、平成19年3月14日、A病院を受診し、硫酸アトロピンを処方され、被告が開設する薬局を訪れた。当該薬局の薬剤師は、処方箋に基づき、1包分当たり0.5mgの硫酸アトロピンを調剤すべきところを、誤って0.5g(500mg)調剤し、原告が服用したところ、アトロピン中毒となり入院をした。
原告は、適応障害、不安障害、頭痛、呼吸苦等の症状が残存したため、長期の入通院を余儀なくされ、就労も困難となったとして、7102万7156円の損害を薬局開設者に請求したが、裁判所は、相当因果関係を一部否定し、364万6995円の損害を認めた。
本件のように調剤過誤は明らかであっても、損害の範囲がどこまでかが争点となる場合もある。
(前回の版記載の2を省略)
(3)平28年6月29日.東京地裁判決
慢性腎不全であった原告が、不妊治療のために、薬局において、一般用医薬品である 5 種類の
漢方薬(第二類医薬品)を登録販売者から購入し服用後、服用後尿細管間質性腎炎を発症し末期腎不全となった。
原告は、薬局開設者に対して、本件漢方薬を販売しない義務、登録販売者が保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な情報を提供する義務を怠ったとして、損害賠償を請求した。裁判所は、本件漢方薬を販売してはならない義務を負っていたものとはいえない、原告から相談がなかったことなどから情報提供義務は負っていない等として、原告の請求を棄却した。
本件は登録販売者が販売した事案であるが、このように OTC 医薬品であっても適切に販売を行っていなければ損害賠償などの請求がされる可能性がある。本件では、販売したのが第二類医薬品であり情報提供が努力義務であったことなどから請求は棄却されたが、要指導医薬品や第一類医薬品を販売した場合などは結果が変わる場合もあるだろう。
【日本薬剤師会】ここ5年の裁判事例を追記/「医療安全にかかる法的知識の基礎(第2.1 版)」
【2022.06.29配信】日本薬剤師会は6月29日に会見を開き、「医療安全にかかる法的知識の基礎(第2.1 版)」を作成したことを報告した。先般の改正薬機法に対応したもの。ここ5年の裁判事例を追記している。日本薬剤師会のホームページから誰もが閲覧することができる。https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/chisiki_2022.p
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