【日病薬】「地域医療連携実例集(Vol.3)」を公表/ICTを活用し連携実績を可視化した事例など

【日病薬】「地域医療連携実例集(Vol.3)」を公表/ICTを活用し連携実績を可視化した事例など

【2022.06.13配信】日本病院薬剤師会は6月9日、「地域医療連携実例集(Vol.3)」を公表した。ICTを活用し連携実績を可視化した事例などを掲載している。HPから誰でも見ることができる。


 日本病院薬剤師会の地域医療委員会では、以前より地域医療連携を積極的に進めている事例を収集し、その考え方や具体的な取り組みについて紹介してきた。
 今回は、コロナ禍の中、WEBシステムを活用し、リモート取材の上、「地域医療連携実例集(Vol.3)」として公表することになったという。

 事例集では、ICTを活用し連携実績を可視化した事例、トレーシングレポート・診療情報提供書など連携ツールを活用した事例、教育研修を通じて連携の輪を広げていった事例などを掲載。

 日本病院薬剤師会では、「どの事例も、地域の資源を把握し、多くの人が関わりながら、未来を見据えた連携が実践されています。会員各位におかれましては、本実例集を通じ、地域医療における薬剤師の役割を再考し、関係者の方々で議論をする資料としてご活用いただければ幸いです」としている。

多様なPBPMを地域で展開して医療の質を担保する「ひたちなか総合病院」

 「多様なPBPMを地域で展開して、医療の質を担保」と題されたひたちなか総合病院の事例では、地元のひたちなか市・東海村地区を基盤とし 81 の会員薬局が加盟する「ひたちなか薬剤師会」も参画。2014 年には「ひたちなか健康 IT ネットワーク」を介した情報共有により、「薬物治療管理プロトコール」を開始。以降、残薬、経口抗がん剤のプロトコール、吸入指導や腎機能監査の標準化など、薬剤師会とともに PBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)を広く展開し、地域包括ケアシステムの質の担保と充実に取り組んでいると紹介されている。

精神疾患患者の社会復帰を地域で支えていくために多面的な連携をもとに精神科薬物療法の最適化をめざす「社会医療法人居仁会総合心療センターひなが」

 「精神疾患患者の社会復帰を地域で支えていくために多面的な連携をもとに精神科薬物療法の最適化をめざす」と題された「社会医療法人居仁会総合心療センターひなが」の事例では、積極的に院内、院外の関連施設等との多面的な連携体制を構築している。薬物治療における大きな柱としては、①長期入院患者の退院時共同指導並びに病棟看護師・精神保健福祉士との協働による訪問薬剤管理指導、②薬局薬剤師との連携による重点フォローアップ体制、③治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン導入に関する他精神科病院との連携、④大学との連携によるクロザピンに関するトランスレーショナル・リサーチがあり、精神疾患患者の社会復帰も地域で支えていくために地域の精神科薬物治療の最適化をめざしている。
 退院時共同指導を行った患者のフォローアップのため、保険薬局との連携ツールとして、日本病院薬剤師会作成「薬剤管理サマリー(改訂版)」を参考に作成した「退院時共同指導サマリー」を保険薬局側に提供している。逆に、保険薬局側からは、退院後 3 か月間、同院独自の「施設間薬剤情報連絡票」を介した情報共有を保険薬局毎に行っている。なお、トレーシングレポート(TR)については、外来患者の残薬問題等の調整の際に活用されている。

 そのほかにも、「365日徹底的に入院患者へ関与し、薬剤師が薬物療法をつなぐ、都会の激戦区で院内外の連携にこだわりキラッと光る中小病院を目指す」とした「医療法人社団洛和会洛和会丸太町病院」の事例や、「吸入指導から始まった院内連携と地域薬局連携を礎に近隣大規模病院や地域医師会・薬剤師会を巻き込む連携システムへ発展」とする「社会福祉法人恩賜財団済生会支部大阪府済生会中津病院」の事例、「高いコミュニケーション力で地域医療を推進 !!時代のニーズに合わせ、がん治療支える地域の薬剤師を広く育成」とする「中津市立中津市民病院」の事例、「地域の薬剤師会・病院薬剤師会が事業として『カフェ』を展開、職種や地域、世代間をつなぐ“対話・交流の場”提供」とする「やくやくCafe@とかち/十勝病院薬剤師会・北海道薬剤師会十勝支部」の事例などが紹介されている。

この記事のライター

関連するキーワード


日本病院薬剤師会

関連する投稿


【病院薬剤師会】対人業務充実効果を確認/「薬剤業務向上加算」で出向先に調査

【病院薬剤師会】対人業務充実効果を確認/「薬剤業務向上加算」で出向先に調査

【2025.04.02配信】日本病院薬剤師会は4月2日に定例会見を開いた。この中で、令和6年度診療報酬改定で新設された薬剤業務向上加算についての調査結果を報告した。今回は出向先の薬剤部長に聞いた。


【日本病院薬剤師会】薬学生リクルートコーナー実施/3月の日本薬学会年会で

【日本病院薬剤師会】薬学生リクルートコーナー実施/3月の日本薬学会年会で

【2025.02.27配信】日本病院薬剤師会は2月26日に定例会見を開き、薬学生向けのリクルートコーナーの実施について説明した。今年3月に開かれる日本薬学会第145年会(福岡)で出展する。昨年12月の会見でも開催を報告していたが、今回、完成した薬学生向け案内チラシを公表。独立行政法人国立病院機構(NHO) や、複数の大学医学部附属病院の出展も決定している。


【日本病院薬剤師会】入院時の薬局との連携/診療報酬上も働きかけの評価軸を要望

【日本病院薬剤師会】入院時の薬局との連携/診療報酬上も働きかけの評価軸を要望

【2025.02.26配信】日本病院薬剤師会は2月26日に定例会見を開き、令和8年度診療報酬改定要望事項(たたき台)について説明した。


【日本病院薬剤師会】日本薬学会で薬学生向けリクルートコーナー出展/2025年3月

【日本病院薬剤師会】日本薬学会で薬学生向けリクルートコーナー出展/2025年3月

【2024.12.11配信】日本病院薬剤師会は12月11日、会見を開き、2025年3月27日〜29日に開かれる日本薬学会の年会で、薬学生向けのリクルートコーナーを出展することを報告した。


【日本病院薬剤師会】令和8年度診療報酬改定へ向けて特別調査実施/新設の薬剤師外来業務の状況など

【日本病院薬剤師会】令和8年度診療報酬改定へ向けて特別調査実施/新設の薬剤師外来業務の状況など

【2024.12.11配信】日本病院薬剤師会は12月11日に会見を開いた。この中で、令和8年度診療報酬改定へ向けて特別調査を実施することを報告した。新設の薬剤師外来業務の状況などの項目を設けている。


最新の投稿


【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【規制改革WG】事前処方・調剤の質疑への回答公表/在宅医療における円滑な薬物治療の提供で

【2025.05.01配信】規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ(第5回)」が5月1日、開催された。その中で令和7年3月14日に開催された「第2回健康・医療・介護 WG」に関する委員・専門委員からの追加質疑・意見に対する厚生労働省の回答を公表した。


【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【東京都薬務課】健康食品試買調査結果、79%が違反/効能効果の標榜に販売店のチラシなども注意

【2025.04.30配信】東京都薬務課は4月30日に定例会見を開き、都が毎年行っている健康食品試買調査の結果を説明した。124製品中、98製品、79%に不適正な表示、広告が発見されたという。医薬品的な効能効果の標榜を禁止している薬機法違反も多いが、景品表示法、食品表示法、特定商取引法などの違反も見られる、都では複数の法律で規制されている健康食品を取り扱う事業者に向けて講習会を開いており、講習会参加なども生かして法令遵守に取り組んでほしいとしている。


【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【厚労省_疑義解釈(その24)】DX加算のマイナ保険証利用率について

【2025.04.28配信】厚生労働省は4月25日、診療報酬改定についての「疑義解釈(その24)」を発出した。「医療DX推進体制整備加算」の施設基準の1つであるマイナ保険証利用率について回答。4月については在宅患者を分母から引いて構わないとしている。現在は通常の外来患者がマイナ保険証を利用した場合のみが反映されているため。5月以降については、居宅同意取得型のオンライン資格確認によるマイナ保険証利用件数が社会保険診療報酬支払基金から通 知するマイナ保険証利用率集計に含まれる予定。


【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【日本薬剤師会】電子お薬手帳ビューワー、他職種への周知を依頼

【2025.04.26配信】日本薬剤師会は電子おくすり手帳簡易ビューワーアプリ「e薬 SCAN」について、他職種への周知依頼を都道府県薬剤師会宛てに発出した。


【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【財政審】 後発薬調剤体制加算等、政策目標の達成状況を踏まえ「必要に応じ報酬体系の再編を」

【2025.04.23配信】財務省は4月23日に財政制度等審議会「財政制度分科会」を開催した。


ランキング


>>総合人気ランキング