【中医協】オンライン診療の評価、対面の9割水準か/対面診療との「適切な組み合わせ」で決着

【中医協】オンライン診療の評価、対面の9割水準か/対面診療との「適切な組み合わせ」で決着

【2022.01.26配信】厚生労働省は中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、2022年度診療報酬改定について「個別改定項目」を提示した。オンライン診療の要件や評価基準に関して、診療側と支払側の意見の溝が大きかったため、公益側から裁定案が提示され、了承された。オンライン診療の評価に関しては、「特例対応」初診料 214 点と「対面診療」初診料288 点の「中間程度」とされ、「対面」の9割程度の評価となることが見込まれる。時間・距離要件や実施割合の上限は撤廃する方針。一方、「指針」にも「対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」とされていることから、「保険医療機関において、対面診療を提供できる体制を有すること」とする。


 オンライン診療に関しては1号側(支払い側)から「指針を超える制限を設けるべきではない」「点数の水準は対面と同様も含め引き上げ」といった意見があった。
 2号側(診療側)からは、「オンライン診療は対面診療の補完である」「一定時間内に通院又は訪問が可能な患者に利用を限定」「オンライン診療の実施割合に係る上限設定は維持」「点数水準は特例対応を維持」といった意見が示された。

公益側裁定案「医師が必要と判断した場合にはオンライン診療ではなく、対面診療が行われることも重要」

  双方の意見の隔たりが大きいことから、公益側から以下の裁定案が示された。

・「指針」に基づいて見直しを行うことが今回の検討の前提であり、また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下において、オンライン診療が活用されてきたことも踏まえれば、患者が適切にオン
ライン診療を受けることができる環境を整備することが重要となる。一方、オンライン診療の質を確保し、医師が必要と判断した場合にはオンライン診療ではなく、対面診療が行われることも重要である。

公益側裁定案「時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限については要件として設定しないことが適切」

・以上を踏まえると、オンライン診療の算定要件及び施設基準については、「指針」の規定を前提とし、その趣旨を明確化する観点から設定すべきである。「指針」において、「対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」とされていることから、保険医療機関において、対面診療を提供できる体制を有すること、また、「指針」において、「オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる」とされていることから、患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他の医療機関と連携して対応できる体制を有することを求めることが適切である。これらも含め、「指針」に準拠した診療の実施を要件化することを前提として、医療機関と患者との間の時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限については要件として設定しないことが適切である。なお、今後、オンライン診療の実態の把握・検証が可能となるよう、施設基準の定例報告において、オンライン診療の実態についての報告項目を盛り込むなど、必要な対応を講じるべきである。

公益側裁定案「対面診療の点数水準と特例対応の点数水準の中間程度の水準とすることが適当」

・点数水準については、「時限的・特例的な対応」の初診料が 214 点に設定され、対面診療の場合の初診料 288 点と比較して、約 74%の水準となっている。

・オンライン診療では、対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことを踏まえると、点数水準に一定程度の差を設けることは妥当であると考えられる。一方、オンライン診療のみで診療を終え得ることや、国民にオンラインでも適切に診療を届けていくことの重要性も勘案すると、オンライン診療に係る初診料については、対面診療の点数水準と「時限的・特例的な対応」の点数水準の中間程度の水準とすることが適当である。

・また、医学管理料については、対面診療の場合の点数が 87 点から 1,681 点までであるところ、オンライン診療の場合では一律 100 点に設定されている。また、「時限的・特例的な対応」においては一律 147 点となっている。オンライン診療に係る医学管理料の点数水準についても、オンライン診療の初診料の対面診療に対する割合と整合的に設定することが適当である。

・今後、今回改定の影響を調査・検証し、オンライン診療に係る適切な評価等の在り方について、引き続き、今後の診療報酬改定に向けて検討を行うこととする。

編集部コメント/オンライン服薬指導で行方が不透明な「対面との組み合わせ」

 今回了承された文書にはオンライン服薬指導については触れられていないが、同様の考え方が用いられる可能性が高いだろう。
 例えば、月に1回の算定としていた指導料については、「個別項目」内ですでに「受付1回につき」に変更が提示されている。
 
 ただ、1点、「対面との組み合わせ」については服薬指導にも用いられるのかどうかは「個別改定項目」にも記載がなく今日現在、不透明だ。オンライン服薬指導においては対面との組み合わせが適用されない可能性もあるだろう。

この記事のライター

関連するキーワード


中医協 オンライン診療

関連する投稿


【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【2025.04.23配信】厚生労働省は4月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、後発医薬品調剤体制加算の要件である「カットオフ値」が急減している店舗があることを説明し、問題視。対応を求めた。


【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、後発医薬品調剤割合について、「90%以上」の薬局が前年の調査から倍増していることがわかった。令和5年度調査では33.3%だったものが、今回の令和6年調査では66.1%となった


【リフィル処方箋】処方箋割合0.07%/令和6年7月時点/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【リフィル処方箋】処方箋割合0.07%/令和6年7月時点/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、リフィル処方箋に関連して、リフィル処方箋の割合は令和6年7月診療分で0.07%だったとのデータを示した。


【リフィル処方箋】地域支援体制加算との関連データ提示/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【リフィル処方箋】地域支援体制加算との関連データ提示/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、リフィル処方箋に関連して、地域支援体制加算、およびかかりつけ薬剤師指導料との関連データが提示された。


【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【2025.03.12配信】厚生労働省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で医薬品の安定供給確保に関連する薬機法改正案について報告された。“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上している。


最新の投稿


【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【販売中止】「フルナーゼ点鼻液」/グラクソ・スミスクライン

【2025.06.16配信】グラクソ・スミスクラインは6月16日、同社が販売する「フルナーゼ点鼻液」について、年内を目途に販売を中止することを公表した。


【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【大木ヘルスケアHD】“推し活”キーに医薬品需要に気付き/目薬や喉ケア/秋冬商品提案で

【2025.06.15配信】ヘルスケア卸大手の大木ヘルスケアホールディングスは6月11日に、事業部説明会を開催した。来る6月17日(火)~6月18日(水)にTRC 東京流通センターで開く「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会2025 年 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」の事前説明会の位置付け。OTC医薬品に関しては、“推し活”市場の拡大を背景に、“推し活”をきっかけに需要に気付きを与える提案を実施することを説明した。


【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【骨太方針_閣議決定】「高齢化の伸び」に経済・物価動向の増加分を加算

【2025.06.13配信】政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針 2025」、いわゆる骨太方針を閣議決定した。医療・介護に関連しては、「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と記載した。これまでは、社会保障関係費の伸びを高齢化の範囲内に抑える方針がとられてきた。薬剤師で参議院議員の神谷政幸氏はXで「税収増を踏まえた経営の安定化や確実な賃上げに繋がる対応がついに反映」と投稿。医療介護業界の声が届いたとの考えを示唆した。


【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【奈良県薬剤師会】「健康ハートの日 2025」に協賛/気になる“nara”測ろう血圧ポスター作成

【2025.06.12配信】奈良県薬剤師会(後岡伸爾会長)は、「健康ハートの日 2025」に協賛する。


【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【マイナ保険証】活用で「多重受診・過剰処方」発見効果/日本保険薬局協会調査

【2025.06.12配信】日本保険薬局協会は6月12日に定例会見を開き、「保険薬局における医療DX活用と業務貢献等の実態調査」の結果を説明した。「多重受診・過剰処方」の発見など効果がみられた。