健保連理事の幸野庄司氏は中医協委員を退任することにあたって6年間を振り返り、「医療に関係のない航空会社で30年間勤務してきた私を今まで温かく時には厳しく指導いただいた。成長させていただいた」と関係者に謝意を述べた。
「支払側として常に患者の視点に立って、質の高い医療の追求を基軸にぶれない態度で発言してきた。1号側(支払側)と2号側(診療側)、それぞれ立場が異なるので、意見が相反するのは当然。もっと言えば相反しなければ妥協の産物を生み出すだけで本質は見出せないと思っている。ただ、言えることは質の高い医療の追求と、国民皆保険の堅持は1号側・2号側共通の理念であり中医協の使命だ。立場の異なる両者が議論を交わす中で、最適な解を見出していくのが中医脇だと思っている」と総括した。
その上で、「思い残すことはないと言いたいところだが、思い残すことはたくさんある」と述べ、3点について「今後のしっかりした議論をお願いしたい」とした。
1つ目は、入院医療における急性期病床のあり方を挙げた。
「コロナ禍においても多くの課題を顕在化させた。真に急性期を名乗る病院がいかにあるべきか。日本が直面する高齢化、人口減少の中で地域に存在する急性期病床をいかに集約していくか。入院医療の機能分化の大きな課題だ」と述べた。
2つ目は、外来医療におけるかかりつけ医機能を挙げた。
「コロナ禍の中で国民の受領行動も変化し、感染症拡大時のみならず平時においても、いつでも安心で安全な医療を受けるためにかかりつけ医への関心・期待が高まっていることは事実。一方、国民が持っているかかりつけ医のイメージはそれぞればらばらなイメージを持っているのも事実ではないか。国民全員が自らかかりつけ医を持つような環境整備を診療報酬においてもしっかり構築してほしい」とした。
3つ目に、「医薬品の統制」を挙げた。
「医薬品の統制はP(プライス)とQ(クオンティティ=量)の両面で行っていくべきだと思う。プライスの観点では製薬企業の創薬力の確保のためにイノベーションを評価しつつ、役割を終えた医薬品はすみやかに後発医薬品に道を譲るというメリハリのついた制度が必要。クオンティティは、医薬品の適正使用の観点となる。現在、供給に問題を生じているが早期の解決を願っている。後発医薬品の使用割合80%は究極の目的だとは思っていない。本当に必要なのは、特に患者の多い生活習慣病における新薬の処方のあり方、いわゆるフォーミュラリのあり方だ。日本国中にいかにフォーミュラリを浸透させるか。これは大きな課題だと思っている」とした。
幸野氏は中医協の委員を退任するが、医政局の外来医療の検討会や地域医療構想のワーキンググループは引き続き委員を務める。
中医協の委員の幸野氏の後任は、健保連理事の松本真人氏が務める予定。松本氏は川崎重工業健保組合常務理事などを務めてきた。