【中医協】健保連・幸野氏退任挨拶/“思い残すこと”にフォーミュラリ/「後発薬80%は究極の目的ではなく必要なのは新薬の処方のあり方」

【中医協】健保連・幸野氏退任挨拶/“思い残すこと”にフォーミュラリ/「後発薬80%は究極の目的ではなく必要なのは新薬の処方のあり方」

【2021.10.27配信】厚生労働省は10月27日に中央社会保険医療協議会 総会(第493回)を開いた。この中で同会をもって中医協委員を退任する健康保険組合連合会(健保連)理事の幸野庄司氏が退任に際した挨拶を行い、“思い残すこと”の一つとしてフォーミュラリを挙げた。「後発医薬品使用80%は究極の目的だとは思っていない。本当に必要なのは患者の多い生活習慣病の新薬の処方のあり方、フォーミュラリだ」と述べた。


 健保連理事の幸野庄司氏は中医協委員を退任することにあたって6年間を振り返り、「医療に関係のない航空会社で30年間勤務してきた私を今まで温かく時には厳しく指導いただいた。成長させていただいた」と関係者に謝意を述べた。
 「支払側として常に患者の視点に立って、質の高い医療の追求を基軸にぶれない態度で発言してきた。1号側(支払側)と2号側(診療側)、それぞれ立場が異なるので、意見が相反するのは当然。もっと言えば相反しなければ妥協の産物を生み出すだけで本質は見出せないと思っている。ただ、言えることは質の高い医療の追求と、国民皆保険の堅持は1号側・2号側共通の理念であり中医協の使命だ。立場の異なる両者が議論を交わす中で、最適な解を見出していくのが中医脇だと思っている」と総括した。

 その上で、「思い残すことはないと言いたいところだが、思い残すことはたくさんある」と述べ、3点について「今後のしっかりした議論をお願いしたい」とした。

 1つ目は、入院医療における急性期病床のあり方を挙げた。
 「コロナ禍においても多くの課題を顕在化させた。真に急性期を名乗る病院がいかにあるべきか。日本が直面する高齢化、人口減少の中で地域に存在する急性期病床をいかに集約していくか。入院医療の機能分化の大きな課題だ」と述べた。

 2つ目は、外来医療におけるかかりつけ医機能を挙げた。
 「コロナ禍の中で国民の受領行動も変化し、感染症拡大時のみならず平時においても、いつでも安心で安全な医療を受けるためにかかりつけ医への関心・期待が高まっていることは事実。一方、国民が持っているかかりつけ医のイメージはそれぞればらばらなイメージを持っているのも事実ではないか。国民全員が自らかかりつけ医を持つような環境整備を診療報酬においてもしっかり構築してほしい」とした。

 3つ目に、「医薬品の統制」を挙げた。
 「医薬品の統制はP(プライス)とQ(クオンティティ=量)の両面で行っていくべきだと思う。プライスの観点では製薬企業の創薬力の確保のためにイノベーションを評価しつつ、役割を終えた医薬品はすみやかに後発医薬品に道を譲るというメリハリのついた制度が必要。クオンティティは、医薬品の適正使用の観点となる。現在、供給に問題を生じているが早期の解決を願っている。後発医薬品の使用割合80%は究極の目的だとは思っていない。本当に必要なのは、特に患者の多い生活習慣病における新薬の処方のあり方、いわゆるフォーミュラリのあり方だ。日本国中にいかにフォーミュラリを浸透させるか。これは大きな課題だと思っている」とした。

 幸野氏は中医協の委員を退任するが、医政局の外来医療の検討会や地域医療構想のワーキンググループは引き続き委員を務める。
 
 中医協の委員の幸野氏の後任は、健保連理事の松本真人氏が務める予定。松本氏は川崎重工業健保組合常務理事などを務めてきた。

この記事のライター

関連するキーワード


中医協 幸野庄司

関連する投稿


【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【中医協】日薬・森氏、後発薬加算「カットオフ値」の急減店舗の発生を問題視、対応求める

【2025.04.23配信】厚生労働省は4月23日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で日本薬剤師会副会長の森昌平氏は、後発医薬品調剤体制加算の要件である「カットオフ値」が急減している店舗があることを説明し、問題視。対応を求めた。


【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【後発薬調剤割合】「90%以上」の薬局が66.1%に/前年33.3%から倍増/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、後発医薬品調剤割合について、「90%以上」の薬局が前年の調査から倍増していることがわかった。令和5年度調査では33.3%だったものが、今回の令和6年調査では66.1%となった


【リフィル処方箋】処方箋割合0.07%/令和6年7月時点/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【リフィル処方箋】処方箋割合0.07%/令和6年7月時点/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、リフィル処方箋に関連して、リフィル処方箋の割合は令和6年7月診療分で0.07%だったとのデータを示した。


【リフィル処方箋】地域支援体制加算との関連データ提示/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【リフィル処方箋】地域支援体制加算との関連データ提示/中医協・診療報酬改定結果検証部会

【2025.04.09配信】厚生労働省は4月9日、中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会を開催し、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の報告書案」について説明した。このうち、リフィル処方箋に関連して、地域支援体制加算、およびかかりつけ薬剤師指導料との関連データが提示された。


【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【厚労省_中医協】“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上

【2025.03.12配信】厚生労働省は3月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開いた。この中で医薬品の安定供給確保に関連する薬機法改正案について報告された。“国産原薬”の薬剤について薬価上の措置が中長期的課題に浮上している。


最新の投稿


【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【日本チェーンドラッグストア協会】「300店舗以上の区分廃止を」/調剤報酬改定で声明公表

【2025.10.17配信】日本チェーンドラッグストア協会は10月17日に定例会見を開き、調剤報酬改定における「300店舗区分」の見直しを求める声明を公表した。


【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【日薬・NPhA・JACDS】「安心を守る」薬剤師の役割で共同広告

【2025.10.16配信】公益社団法人日本薬剤師会(日薬)、一般社団法人日本保険薬局協会(NPhA)、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の3団体は、「国民の健康維持・増進を支援する」ため、薬剤師の役割と機能を広く発信する共同広告企画を実施する。


【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【ジェネリック学会OTC分科会】生活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書公表

【2025.10.13配信】日本ジェネリック・バイオシミラー学会のOTC医薬品分科会(分科会⾧・武藤正樹氏)はこのほど、活習慣病薬のスイッチOTC化の推進で提言書を公表した。10月11日に盛岡市で開催された「日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 第19回学術総会」「OTC医薬品分科会」のシンポジウムの場で示したもの。シンポジウムは日本OTC医薬品協会当の共催。


【日本薬剤師会】地域連携薬局「基本的な考え方」で質疑/奈良県薬・後岡会長

【日本薬剤師会】地域連携薬局「基本的な考え方」で質疑/奈良県薬・後岡会長

【2025.10.11配信】日本薬剤師会は10月11日、都道府県会長協議会を開催。質疑の中で地域連携薬局の「基本的考え方」について質問が出た。奈良県薬剤師会会長の後岡伸爾氏が質問した。


【日本薬剤師会】高市新総裁誕生にコメント/岩月会長

【日本薬剤師会】高市新総裁誕生にコメント/岩月会長

【2025.10.08配信】日本薬剤師会は10月8日に会見を開いた。この中で自民党新総裁に高市早苗氏が就任したことについてコメントした。