この日の官民対話では、8年ぶりの改訂となる「医薬品産業ビジョン」の厚労省案が提示された。革新的創薬などの産業育成が主たるテーマとなるのは変わらないが、前回と大きく違うのは、不祥事の起きた後発医薬品と、コロナ禍で明らかとなった安定供給の問題がクローズアップされていることだ。
後発医薬品に関しては、後発医薬品企業の安定供給に関する責任強化などの施策が盛り込まれている。
安定供給に関しては、「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」を明記。
現在、安定供給問題は、コロナ禍で顕在化した原材料物資や製品の特定国依存等によるサプライチェーン上の欠品リスクと、後発医薬品企業の不祥事による供給不足と、多層化しているが、いずれにせよ医療上必要不可欠な医薬品に関するテーマが優先的に取り組まれている。
厚労省では2021年3月に「安定確保医薬品リスト」と「安定確保スキーム」を策定している。
これらをベースに、供給不安情報の早期把握と対応策を進めることをビジョンでも明記している。
具体的には海外規制当局との情報交換による事前把握、供給不安事例の情報提供の在り方検討、優先度の高い安定確保医薬品に関する緊急時の流通在庫等把握スキームの検討、ワクチン、輸液、血液製剤、生薬・漢方製剤、外用製剤などのうち安定供給が必要な品目等についての流通上の配慮を進めるとした。
一方で、薬局現場で供給不安を招いている医薬品は多岐にわたっており、これらに関しての情報収集や開示に関して検討するのかとの記者の質問に対し、厚労省医政局経済課長の林俊宏氏は検討の余地があることは否定しなかったものの、情報収集と開示が簡単なことではないとの考えを示した。
背景には現状、企業において情報開示はもとより、安定供給を求める法的な後ろ盾がないことがある。さらには欠品や出荷調整の情報を開示することで不安をあおる結果を招くリスクもあり、それが結果的に目的とは逆の流通のさらなる混乱につながる可能性もある。
林課長は「組み方は難しい」と話していた。
【官民対話】医薬品の「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」へ
【2021.08.24配信】厚生労働省は8月24日、「医薬品産業ビジョン策定に向けた官民対話」を開き、ビジョン案の中で、医薬品の「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」を明記した。
関連する投稿
【医療用解熱鎮痛薬等110番】10月10日から去痰薬を追加/地域の薬剤師会単位での相談も受付へ
【2023.10.10配信】厚生労働省は10月10日、医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)について、10月10日より去痰薬を追加すると公表した。同省は医療用解熱鎮痛薬等について、各メーカーが限定出荷を行っている状況を踏まえ、平時と比較して需要が増加した医療機関や小規模な薬局等に優先して供給を行うよう医薬品卸売業者に依頼をしているが、それでもなお解熱鎮痛薬等を購入できないなどのケースに対応するため、相談窓口を開設している。
【東京都薬剤師会】最新・後発薬流通状況調査公表/1年前より「納品滞り」悪化、70%超える
【2022.11.04配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月4日に定例会見を開き、後発医薬品の流通状況に関する調査結果を報告した。1年前の令和3年6月に行った第1回目、同年8月の第2回目に続き、3回目の調査となる。今回の結果では「納品が滞っている」との回答が第1回目調査では65%だったところ、72%と上昇している。影響の出ている品目は変化していることもうかがえ、都薬では「品目が変化しながら薬局では厳しい状況が続いていることがうかがえる」としている。
【後発医薬品】厚労省医政局経済課・課長通知、発注は「1カ月分程度の在庫量」または「従来の購入量の 110%以内」を目安に
【2022.01.27配信】厚生労働省医政局経済課は、1月25日に課長通知「『医療用医薬品の供給不足に係る対応について』の別添1に係る医薬品の適切な流通について(協力依頼)」を発出した。1カ月分程度の在庫量または従来の購入量の 110%以内を目安として、必要最低限の発注とすることを要請している。
【後発薬の供給状況】5割の薬局で後発薬使用率減少/入手困難な医薬品は3173 品目/薬剤師会調べ
【2021.08.06配信】日本薬剤師会は8月25日に、「後発医薬品の供給状況に関するアンケート結果について【速報】」を公表した。令和 3 年 1 月と 7 月それぞれの単月使用率を比較したところ、5割以上の薬局で減少していた。使用率が最も減少した薬局では、約10%の下げ幅となっている。入手困難な医薬品のうち、その要因の約7割は「出荷調整」。
【官民対話】「セルフケアの推進と適切なセルフメディケーションの実施」を明記/スイッチOTCのKPIはなし
【2021.08.24配信】厚生労働省は8月24日、「医薬品産業ビジョン策定に向けた官民対話」を開いた。ビジョン案の中で、「セルフケアの推進と適切なセルフメディケーションの実施」を明記した。一方、スイッチOTCのKPIの明記はなかった。これに関し、厚労省医政局経済課長の林俊宏氏は「望ましいKPIは何かを含めて今後、議論をしていく」と話した。
最新の投稿
【保険薬局協会】地域加算「基本料1」と「それ以外」で点数・実績要件統一を/次期改定要望
【2025.12.11配信】日本保険薬局協会は12月11日に定例会見を開き、会長の三木田慎也氏が次期調剤報酬改定の要望事項を説明した。調剤基本料に紐づいて区分のある地域支援体制加算について、「基本料1」と「それ以外」での要件や点数を統一することを求めた。
【病院薬剤師会】診療報酬改定議論「期待」/転所時評価などの要望反映で
【2025,12.10配信】日本病院薬剤師会(日病薬)は12月10日に定例会見を開き、厚労省中医協で議論の進んでいる次期診療報酬改定について、期待できるとの見方を示した。日病薬が要望事項に挙げていた転所時の情報共有への評価などが俎上にのっていることなどを評価した。
【2025.12.07配信】東京都薬剤師会(都薬)は12月5日に定例会見を開き、中医協で規模の小さな薬局が該当することが多い「調剤基本料1」の除外範囲を拡大するとの議論について言及。特に大阪府と東京都に該当地域のある「特別区」が名指しされていることについて、都薬会長の髙橋正夫氏は、「大阪府薬が会見で“絶対に許さない”と表明されているが、都薬も同じ考えだ」と話した。
【ドラッグストア協会】かかりつけ薬剤師「在籍年数」延長に反対
【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。かかりつけ薬剤師指導料の要件見直しについても要望した。
【ドラッグストア協会】敷地内薬局「ただし書き」撤廃でも、「新規開局に限定を」
【2025.12.06配信】日本チェーンドラッグストア協会は12月5日に定例会見を開き、調剤報酬改定への要望を説明した。敷地内薬局について、施設基準において「ただし、当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合を除く」という「ただし書き」を削除すべきとの意見が出ていることに対し、撤廃でされたとしても新規開局に限定すべきといった要望を表明した。