【官民対話】医薬品の「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」へ

【官民対話】医薬品の「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」へ

【2021.08.24配信】厚生労働省は8月24日、「医薬品産業ビジョン策定に向けた官民対話」を開き、ビジョン案の中で、医薬品の「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」を明記した。


 この日の官民対話では、8年ぶりの改訂となる「医薬品産業ビジョン」の厚労省案が提示された。革新的創薬などの産業育成が主たるテーマとなるのは変わらないが、前回と大きく違うのは、不祥事の起きた後発医薬品と、コロナ禍で明らかとなった安定供給の問題がクローズアップされていることだ。

 後発医薬品に関しては、後発医薬品企業の安定供給に関する責任強化などの施策が盛り込まれている。

 安定供給に関しては、「供給不足に係る情報収集・公表の仕組みの構築」を明記。

 現在、安定供給問題は、コロナ禍で顕在化した原材料物資や製品の特定国依存等によるサプライチェーン上の欠品リスクと、後発医薬品企業の不祥事による供給不足と、多層化しているが、いずれにせよ医療上必要不可欠な医薬品に関するテーマが優先的に取り組まれている。
 厚労省では2021年3月に「安定確保医薬品リスト」と「安定確保スキーム」を策定している。
 これらをベースに、供給不安情報の早期把握と対応策を進めることをビジョンでも明記している。
 具体的には海外規制当局との情報交換による事前把握、供給不安事例の情報提供の在り方検討、優先度の高い安定確保医薬品に関する緊急時の流通在庫等把握スキームの検討、ワクチン、輸液、血液製剤、生薬・漢方製剤、外用製剤などのうち安定供給が必要な品目等についての流通上の配慮を進めるとした。

 一方で、薬局現場で供給不安を招いている医薬品は多岐にわたっており、これらに関しての情報収集や開示に関して検討するのかとの記者の質問に対し、厚労省医政局経済課長の林俊宏氏は検討の余地があることは否定しなかったものの、情報収集と開示が簡単なことではないとの考えを示した。

 背景には現状、企業において情報開示はもとより、安定供給を求める法的な後ろ盾がないことがある。さらには欠品や出荷調整の情報を開示することで不安をあおる結果を招くリスクもあり、それが結果的に目的とは逆の流通のさらなる混乱につながる可能性もある。

 林課長は「組み方は難しい」と話していた。

この記事のライター

関連する投稿


【医療用解熱鎮痛薬等110番】10月10日から去痰薬を追加/地域の薬剤師会単位での相談も受付へ

【医療用解熱鎮痛薬等110番】10月10日から去痰薬を追加/地域の薬剤師会単位での相談も受付へ

【2023.10.10配信】厚生労働省は10月10日、医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)について、10月10日より去痰薬を追加すると公表した。同省は医療用解熱鎮痛薬等について、各メーカーが限定出荷を行っている状況を踏まえ、平時と比較して需要が増加した医療機関や小規模な薬局等に優先して供給を行うよう医薬品卸売業者に依頼をしているが、それでもなお解熱鎮痛薬等を購入できないなどのケースに対応するため、相談窓口を開設している。


【東京都薬剤師会】最新・後発薬流通状況調査公表/1年前より「納品滞り」悪化、70%超える

【東京都薬剤師会】最新・後発薬流通状況調査公表/1年前より「納品滞り」悪化、70%超える

【2022.11.04配信】東京都薬剤師会(都薬)は11月4日に定例会見を開き、後発医薬品の流通状況に関する調査結果を報告した。1年前の令和3年6月に行った第1回目、同年8月の第2回目に続き、3回目の調査となる。今回の結果では「納品が滞っている」との回答が第1回目調査では65%だったところ、72%と上昇している。影響の出ている品目は変化していることもうかがえ、都薬では「品目が変化しながら薬局では厳しい状況が続いていることがうかがえる」としている。


【後発医薬品】厚労省医政局経済課・課長通知、発注は「1カ月分程度の在庫量」または「従来の購入量の 110%以内」を目安に

【後発医薬品】厚労省医政局経済課・課長通知、発注は「1カ月分程度の在庫量」または「従来の購入量の 110%以内」を目安に

【2022.01.27配信】厚生労働省医政局経済課は、1月25日に課長通知「『医療用医薬品の供給不足に係る対応について』の別添1に係る医薬品の適切な流通について(協力依頼)」を発出した。1カ月分程度の在庫量または従来の購入量の 110%以内を目安として、必要最低限の発注とすることを要請している。


【後発薬の供給状況】5割の薬局で後発薬使用率減少/入手困難な医薬品は3173 品目/薬剤師会調べ

【後発薬の供給状況】5割の薬局で後発薬使用率減少/入手困難な医薬品は3173 品目/薬剤師会調べ

【2021.08.06配信】日本薬剤師会は8月25日に、「後発医薬品の供給状況に関するアンケート結果について【速報】」を公表した。令和 3 年 1 月と 7 月それぞれの単月使用率を比較したところ、5割以上の薬局で減少していた。使用率が最も減少した薬局では、約10%の下げ幅となっている。入手困難な医薬品のうち、その要因の約7割は「出荷調整」。


【官民対話】「セルフケアの推進と適切なセルフメディケーションの実施」を明記/スイッチOTCのKPIはなし

【官民対話】「セルフケアの推進と適切なセルフメディケーションの実施」を明記/スイッチOTCのKPIはなし

【2021.08.24配信】厚生労働省は8月24日、「医薬品産業ビジョン策定に向けた官民対話」を開いた。ビジョン案の中で、「セルフケアの推進と適切なセルフメディケーションの実施」を明記した。一方、スイッチOTCのKPIの明記はなかった。これに関し、厚労省医政局経済課長の林俊宏氏は「望ましいKPIは何かを含めて今後、議論をしていく」と話した。


最新の投稿


【日本薬剤師会】「薬価乖離率5.2%でもまだこれまでの中間年改定続けるのか」/岩月会長

【日本薬剤師会】「薬価乖離率5.2%でもまだこれまでの中間年改定続けるのか」/岩月会長

【2024.12.04配信】日本薬剤師会は12月4日、定例会見を開いた。この中で、同日、薬価乖離率の速報値が公表されたことについて記者から質問が出た。


【厚労省】薬価調査の速報値公表/乖離率5.2%/前回6.0%から0.8ポイント圧縮

【厚労省】薬価調査の速報値公表/乖離率5.2%/前回6.0%から0.8ポイント圧縮

【2024.12.04配信】厚生労働省は12月4日、薬価調査の速報値を公表した。


【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【医薬品供給状況】不足カテゴリートップは抗生剤/株式会社イヤクル調査

【2024.12.03配信】株式会社イヤクル(本社:北海道、代表取締役:佐孝尚氏)は、薬剤師を対象に「医薬品供給不足に関するアンケート調査」を実施。その結果、出荷調整品のカテゴリーでは抗生剤がトップだった。


【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【八戸薬剤師会】緊急避妊薬の供給体制HPをバージョンアップ/医療機関リストも整備

【2024.12.02配信】八戸薬剤師会(青森県、阿達昌亮会長)は12月2日までに同会HP上の緊急避妊薬の供給体制サイトをバージョンアップした。産婦人科医会の了解を得て、受診できる医療機関リストも整備した。


【財政審_建議】薬価改定「原則全ての医薬品対象」/除外するなら「安定供給確保」や「真に革新的な」医薬品

【財政審_建議】薬価改定「原則全ての医薬品対象」/除外するなら「安定供給確保」や「真に革新的な」医薬品

【2024.11.29配信】財務省の財政制度等審議会は11月29日、「令和7年度予算の編成等に関する建議」を公表した。