【緊急避妊薬のスイッチ化】当の薬局薬剤師はどう考えているのか?<2>

【緊急避妊薬のスイッチ化】当の薬局薬剤師はどう考えているのか?<2>

【2021.06.09配信】厚生労働省は6月7日、「第16回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」(スイッチ検討会議)を開き、緊急避妊薬のスイッチに関して議論を再開することとした。当の薬局薬剤師はどのようにこの問題を捉えているのか。特定非営利活動法人Healthy Aging Projects For Women (NPO法人HAP)の理事長で、女性の生涯にわたる健康支援(ウイメンズヘルスケア)に関する研修を頻繁に行い、コンシェルジェ薬剤師を養成している宮原富士子氏に聞いた。以下、談話形式でお伝えする。


「OTC化に反対はない、でも、誰にもわかりやすいゴールとそれに向けてのロードマップがあるべき。どこで買うかよりも、誰から買えるのかの利用者の選択の視点も大事にしたいです」

  緊急避妊薬をスイッチ化すること、つまり、近未来に要指導医薬品にすることについては、何も反対することはないというところです。賛成します。
 けれど、本来は、要指導医薬品になることによりどのように女性に恩恵があるかのゴールとロードマップがあるべきです。
 ゴールは要指導医薬品になることではなく、緊急避妊薬が広く、かつ安全に、敷居低く入手できる体制を構築し、そのことで、女性の健康を守り、性と健康の権利を尊重できる風土を醸成することにあります。緊急避妊薬を、女性が必要な時に安全に速やかに供給でき、かつその女性のその後の健康や生き方に貢献できるような状態になることがベストです。

 このゴールに向けて、課題と解決策は非常にシンプルです。

1)【かかりつけ婦人科医師】
 今の日本の女性において、敷居が高い産婦人科受診の敷居を下げること。多くの海外の女性は産婦人科のかかりつけを持ち、女性ホルモンにより影響を受ける体や心のマネジメント、月経に関わるマイナートラブルへの対処、避妊・妊娠への対応など、かかりつけ婦人科医のもと体調の管理をしています。女性の人生はホルモンに大きな影響を受けるからです。私は日本の女性も産婦人科医のかかりつけを持つようになるとよいと思っています。現状は妊娠や出産などの時にしか行かない場所というイメージが強く、最初の一歩がなかなか進まない現状があります。どこの婦人科に行ったらよいかもわからない女性もたくさんいます。

2)【緊急避妊薬が主に産婦人科医師による処方箋しか出されない現状】
 一般の医師にも処方を出してもらえるようになることで、日頃のかかりつけ医師あるいは休祝日などの地区ごとの当番医師からの処方箋を出してもらうこともできるようになり、緊急避妊薬というものが医師の中でも特別なものではない、日常生活に必要なものという認識が広まると思います。現在は、添付文書への妊娠の確認という記載もあり、“産婦人科医処方薬”のようになっていて、一般の医師がなかなか処方しづらいものとなっています。この背景の中で、遠方にオンライン診療を依頼せざるを得ないケースも体験しています。これについては、添付文書の改訂の議論が進んでいると聞いていますので、そうした動きによって変化していくと思います。

3)【薬剤師にとっても関係性の希薄、連携しにくい診療科が産婦人科】
 薬局で販売するようになっても、このことがネックで、当事者の避妊や性病等のケアに繋げられない可能性が心配されます。かかりつけ薬剤師という制度と婦人科受診、この連携が大事と考えられます。もし性暴力被害という事態においてもこのことはとても重要です。

4)【価格】
 現在は緊急避妊薬はオリジナル医薬品1万2000円、GE製品6000円程度で、薬局で提供していると思いますが、要指導薬にスイッチするときにはまずオリジナル医薬品が移行しますのでこの高さのままスイッチとなります。価格の面でも、入手のしやすさをどう確保するのかの議論が必要です。

5)【薬局販売の際に薬局でだれが対応するか】
 女性の利用者が、薬剤師を選べる仕組みも大事になります。女性薬剤師を望む場合も、専門性の高い薬剤師を望む場合もありましょう。どの薬剤師でもよい人ももちろんいると思います。いずれにしても利用者がプライバシーが守られ、希望する環境で入手できる体制をどう維持できるかです。


 以上のような課題を1つずつ解決していくことで、緊急避妊薬が何かとても特別な医薬品ではなくて、身近な生活の中で必要とするときに必要なものと感じられるものになっていく、そうゆう風土醸成が必要と思います。緊急避妊薬は副作用が少ないことも知られている薬です。安全に必要な時に、利用者が望む方法で(産婦人科医師の処方なのか、かかりつけ医師からの処方なのか、選べる体制での薬剤師からの購入なのかなど)供給される体制が構築され、併せて本医薬品と関連して、避妊や性病等の情報を入手でき、性暴力被害等の時には支援がうけられる、そういう体制を作ってゆくことが大事だと思っています。

 そういう風土の中で、緊急避妊薬の入手の幅が広がり、そのひとつとして薬局での販売が可能になる。選択肢を増やす環境に持っていくことが必要だと思っています。

産婦人科医の中での議論を待つ必要もある

 市民団体から緊急避妊薬のアクセス改善を求める活動があったことは、とても意味がありました。それにより緊急避妊薬のオンライン診療の初診解禁があり、調剤する薬局薬剤師の知識と体験が増加しました。私もコンシェルジェ薬剤師養成研修を数多く開催しましたが、緊急避妊薬の調剤は知識だけではなく、実際の場面を想定したロールプレイングにより、禁句を学んだりケアの本質を学ぶことが重要だと痛感しています。そして実際に自分が対面して会話をして、処方箋による緊急避妊薬の調達から服薬指導、アフターフォローまでを体験して得るものが大きいと思います。自信のない段階では、24時間薬剤師をフォローする体制で、自分自らが後ろ盾になりOJTをしています。初めての薬剤師の方の服薬指導などを見守ることを数多くしています。それが将来の健全な緊急避妊薬の提供の大きな布石になると思っています。

 多くの関心の高い優秀な薬剤師が研修や体験を通して、女性の健康を支援することの大切さを学んでいると思います。

 そして今回、スイッチの検討会議での再議論も決まりました。
 素晴らしいことだと思いますが、一方で、一般市民の方が提案できるところまで最大限がんばられましたが、一旦ここから先は専門家の中での議論を醸成する段階になると思います。市民と専門家が対立するのではなく、無関心層も巻き込んだ、話し合い、落としどころをロードマップをもとに考えてゆくステップになったのではないでしょうか。一般女性の中にも、様々な意見があると思います。それをくみ取ることも大切だと思います。

 添付文書の改訂の動きも含めて、産婦人科医師の中で、これまで苦労を重ね、より良い方向を議論し、実際に取り組んでくれているオーソリティは多く存在します。その努力も見守りたいところです。

 私は今の流れの中で、産婦人科医師の中から様々な提案が出てきていると感じています。

 それをいますぐに要指導薬へのスイッチだけに話を集約してしまうのは、かなりもったいない話だと感じています。

 産婦人科医師、一般の医師、薬剤師、こうした専門家それぞれの立場への尊重がなければより良い議論にはなるはずがありません。

健康サポート薬局や地域連携薬局での販売も選択肢

 一方、実際にどのような薬局で緊急避妊薬を販売するかについては、地域で健康講座なども開いている健康サポート薬局のほか、薬機法改正で8月から始まる地域連携薬局での販売なども選択肢だと思います。すでに薬機法等に明記されている「健康サポート薬局」、新しく始まる「地域連携薬局」など一定の基準をクリアしている薬局は数多く存在しています。 地域連携薬局の要は、地域の「つなぎ」役になることですから、そういった地域連携薬局が持つ機能が、緊急避妊薬販売でも活用できると思います。

「どこでもらうかより、誰からもらうか」

 医師・薬剤師の二元的販売状態ができてくると、結局、「どこでもらうか」ではなく、「誰からもらうか」が重要になり、利用者の選択の幅が広がります。
 「緊急避妊薬は、誰からもらうかが重要になります」とテーマを掲げた時に、女性が、「え? 誰からもらうってどういう意味だろう? 選べるの? 事前に情報入手できるの?」と、そんな関心を持ってもらい、緊急避妊薬への理解を深めてもらう。そんな姿が私は理想だと思っています。すべては、女性の生涯にわたる健全な健康な過ごし方、生き方のために。

(談)

この記事のライター

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