【薬剤師養成検討会】「調剤業務の見直し」を今後の検討事項に

【薬剤師養成検討会】「調剤業務の見直し」を今後の検討事項に

【2021.06.04配信】厚生労働省は、「第9回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催し、これまでの議論のとりまとめ案を示した。薬学部の新設や入学定員の適正化の議論の必要性、卒後研修の必要性など、これまでの論点を整理したほか、今後、この検討会での検討事項として「調剤業務の見直し」を挙げた。「規制改革推進に関する答申」の中で議論を求められていた事項であり、このテーマが本検討会で議論されることになる。なお、とりまとめに関しては意見を調整した上で、次回の検討会で示す予定。6月中を予定している。


 この検討会では薬剤師の養成と資質向上の2つの柱があるが、現場の薬剤師の関心の高い事項としては、とりまとめ案が示した薬剤師の業務・資質向上の項があるだろう。

 とりまとめの中では、対人業務へのシフトを改めて明記。
 「対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、薬剤師しかできない業務に取り組むべきであり、薬剤師以外でもできる業務は機械の導入や薬剤師以外の者による対応によりタスクシフトを行うべき」とした。

 「薬剤師以外の者による対応」については、大阪医科薬科大学招聘教授政田幹夫氏が「日本ではテクニシャンも制度化されていない中でもう少し踏み込んだ議論が必要ではないか」とした。

 これに対し、日本薬剤師会副会長の安部好弘氏は、「そういった人は不要」と反論した。
 これまでも日本薬剤師会は「テクニシャン」に関しては否定的な意見を示しており、改めてこれを強調した格好。

 一方、安部氏は「そういう人は不要だが、薬剤師以外の人が安全・効率的に業務を行えるようにしていくことは、管理者としての薬剤師の能力として必要なこと」と補足した。


 また、とりまとめ案では、「調剤業務について、医療安全の確保を前提に見直しを検討することが必要ではないか」と明記。6月1日の「規制改革推進に関する答申」で挙げられた項目とほぼ同様の文言になっており、答申に基づく議論が本検討会で行われる見込み。
 調剤業務の見直しをめぐっては、4月20日の規制改革推進会議において「調剤の外部委託」が提言され、その後、答申では「調剤業務の効率化:薬局における薬剤師の対人業務を充実させるため、調剤技術の進歩や医薬品の多様化等の変化を踏まえ、調剤に係る業務プロセスの在り方を含め、医療安全を確保しつつ調剤業務の効率化を進める方策を検討し、必要な見直しを行う」という表現に着地した経緯がある。

 こうした点に関し、厚労省は「調剤業務の議論はかねてからあったこと」と、必ずしも規制改革推進の答申だけが理由ではないとの考えを示すとともに、外部委託がクローズアップされていることについては、「全体の中のトピックの1つでしかない」との見方だ。

 なお、議論する調剤業務の事例としては下記を掲げた。
 ・調剤機器の精度管理などメンテナンス
 ・薬剤師以外の職員に対する研修など資質の確保
 ・調剤の内容の多様化への対応
 ・多剤の適切な服用のための一包化などの作業を含めた対応

 また、とりまとめ案の中で、「調剤業務自体は薬剤師の独占業務であり、医療安全を確保しつつ、適切に調剤を行うことは業務の根幹であることから、薬剤師に関する事項を広く検討課題としている本検討会で引き続き検討することが適当ではないか」との考えを明記した。


 さらに、ICT対応の議論の必要性にも触れている。
 「電子処方箋による処方薬を含む患者情報の共有化、薬剤師業務の質を向上させるための医療機関等との連携方策に取り組むべきではないか。(電子処方箋の早期実現、それにともなう患者情報の活用方策、PBPM の推進など、医療機関等と連携を進めるべきではないか。)電子処方箋により処方薬の情報がリアルタイムで把握可能になると、要指導医薬品・一般用医薬品の情報の管理を含め、服用薬を一元的・継続的に把握するためにお薬手帳の利用方法を変えていく必要ある。特に電子版お薬手帳は電子処方箋システムとの連携により、服薬状況等の様々な情報が簡便に搭載することが可能になることが期待されるため、このような連携が円滑にできるよう検討を進めるべきではないか。また、このような ICT
化により情報の共有化が実現された時代における、かかりつけ薬剤師・薬局の考え方も検討すべきではないか」とした。

 ICT化に関しては、日薬・安部氏が「医療機関と薬局でばらばらで進めると連携において非効率であることが分かっている。基盤のシステムをつくり、薬局もICT投資をしていく必要がある」と語った。
 その一方で、規制改革推進会議で薬局とICT化に関連する議論が起こっていることに警戒感を示し、「専門家の議論を踏まえながら、ICTありきではなく、社会インフラとして薬局を位置づける中でICTの活用があるべき」との見解を示した。

 
  とりまとめ案の中では、「調剤以外の業務」の重要性も指摘。
 「特に薬局は、要指導医薬品・一般用医薬品の提供も前提に、処方箋に依存しない業務に取り組むべきではないか。(例:健康サポート業務、セルフケアを推進する中でのセルフメディケーションを支援する対応、公衆衛生の対応、薬物乱用対策への対応、学校における健康教育など)」とした。

*****
 この検討会の1つの核となっていた「薬剤師の業務」の議論が、今後、さらに深掘りされる見通しとなった。
 これまでの検討会が示したのは、「薬剤師の業務が転換期を迎えている」、その一言に尽きるのではないだろうか。一言で「調剤偏重からの脱却」の必要性が指摘はされてきたが、「調剤以外の業務」として、とりまとめ案に記された範疇は実に広範であることを改めて感じる。「目指すべき姿」の項では、コロナワクチン接種体制への積極的な関与のほか、緊急避妊薬の取扱いにあたって女性の健康に関する相談等の適切な対応もできるようにすべきと記された。社会の変化とともに求められる役割も変化していくことの表れだろう。
 それを実現するために、必要な調剤業務の効率化の議論が進むことは必至で、裏を返せば、効率化された調剤の報酬は逓減していくことが想定される。そこに備えるためにも、この検討会の議論で日々の薬局業務に変化が起きることが、この検討会の最大の結果となるだろう。
 それに資するためであれば、外部委託のテーマが浮上する可能性もあるのではないか。予断を持たない議論が起こる可能性もある。
 今後の検討会の議論から目が離せない。

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