スギ薬局公式リリースでは同店に関して、『今後はコラボ売り場の展開やインスタグラムを利用したライブイベントを企画、最新情報トレンド発信する』とお知らせしている。新宿エリア内の出店はココカラファイン東京新宿三丁目店がオープンしたのは記憶に新しい。ほぼ同時期に同じようなコンセプトのドラッグストアが生まれたいま、スギ薬局はどう動いていくのか。
1、 新宿で生活する人を意識した使い勝手の良い売り場
今回レポートするために当店を4回ほど利用させて頂いた。
店を訪れるまえ、公式リリースでは化粧品情報中心のアピールであったため、その他カテゴリの品揃えが弱いのではと考えていた。
しかし、実際来店してみると、食品の品揃えも豊富であり、化粧品以外の目的でも十分に利用できる店だということが分かった。実際に使ってみて感じた同店の最大ポイントは『新宿で過ごす人を意識したラインナップと配慮』だ。
1階は医薬品・食品・飲料をメインに取り扱っており、新宿のドラッグストアには珍しく、納豆や豆腐・たまごなどの日配の取扱いがある。
また、冷凍食品やカップ麺・みそ汁などのフリーズドライ・おつまみ・アイスクリームも購入でき、新宿で生活する人をサポートしてくれるラインナップだ。
ベビー用品や血圧計などの取り揃えもあり、店内には調剤薬局も併設、内装はまるでヘルスケア重視の小型スーパーのようなイメージがある。
利用していて一番感じたことは、「スギ薬局新宿三丁目店は『新宿で暮らすひとに寄り添う』をイメージして店舗づくりに励んだのではないか」ということだ。
従来の新宿のドラッグストアは化粧品やインバウンド向けの商品を扱うことが多く、食品メインの店舗はとても少なかった。
どこのお店も外国人旅行客を想定した品揃えであり、新宿で働いたり生活したりしている人に焦点を当てた店舗はほとんどなかったように思える。
ドラッグストアは今や暮らしの要として存在し、医薬品・化粧品だけでなく、食品や飲料などを買い求めるのが当たり前になっていった中、新宿に立地するドラッグストアの多くは日配や食品を重点的に扱うような利便性を追い求めてこなかった。コロナ禍でインバウンドを含む旅行客需要が見込めなくなった現在、新宿に暮らす人を想定したドラッグストアの出店は初めてであり、大変珍しいのではないだろうか。
ビューティケアは地下1階に完全集約。飲食類とビューティ類がしっかり分け隔たれているため、化粧品独特の香りが苦手な方でも買い物しやすい工夫がされているのも嬉しいポイントだ。
個人的な要望として、洗剤やトイレットペーパーなどの生活消耗品がビューティコーナーの隅っこに集約されているので、一階で展開出来たら利便性が高まるのではないかとみている。
ビューティケアに関心のある顧客だけでなく、新宿で生活する人も想定した品揃えは利用者を限定せずとても親切な気遣いだと感じた。
平日は仕事帰りの簡易的スーパーとして、休日はコスメを買いに楽しめるコスメブランド店として活用でき、様々な生活のケースで利用可能だ。
また、お店の出店は地域の人を意識して作っていくものだが、旅行客や繁華街でにぎわいを見せてきた新宿にとって、新宿で生活している人をターゲットにした店舗は一周まわって目新しい。お客さんの要望に合わせて店内がどう変化していくか楽しみだ。
2、バラエティアイテムの豊富さと楽しむ気持ちを邪魔しない通路の広さと工夫
新宿三丁目店最大の目玉であり、スギ薬局最大級の規模を誇るビューティコーナー。
品揃えの豊富さはもちろん、買い物を楽しむためのポイントが散りばめられている。
化粧品フロアにいくまではエスカレーターを使うのだが、そこには大きなスクリーンが設置され、話題の商品についてアナウンス。売り場に向かう道のりすらも楽しませてくれて、ワクワクする気持ちを掻き立ててくれる。
売り場にはオシャレをより楽しんでもらうために、メイク用品だけではなく、ピアスやイヤリングなどアクセサリーの取扱いもある。中には日傘や靴下、ヌーブラなど女性ならではの悩みを汲み取ったような生活雑貨も置いてある。
特別に素敵だと感じたポイントは、車いす利用者でも売り場をぐるりとまわって楽しめる通路の広さだ。店を訪れた日はたまたま車いすの方が来店していた。様子を見ていると、1階と地下1階の行き来はスタッフがサポート。各フロアの通路にはランドリー展開などがなく、移動の妨げになるものがため、移動もスムーズ。細かいアイテムが多い化粧品コーナーでも車いすは問題なく巡回、買い物を楽しんでいるようだ。
このように当店では、車いすのお客さんでもフロア間の行き来以外はスタッフの付き添いが必要ない状態で買い物を楽しむことができ、足が不自由な方でも来店しやすい工夫がされている。
通路の確保はドラッグストアを運営する上で大事なポイントのひとつだ。ドラッグストアの商品陳列のひとつにランドリー展開というものがある。
需要のある日用品などを多箇所に置いてついで買いを促し、売上向上を図る方法だが、通路を狭め、通行の妨げになる可能性を含む。
この手法により、通路が狭くて他のお客さんとすれ違う度に身体や荷物が当たってしまったり、すれ違うスペースもなくそのままUターンしてその通路を通るのを諦めたりする経験がある人も多いと思う。
売上を意識する店側の都合が見え隠れするこの手法をスギ薬局新宿三丁目店は採用していない。
また、元々店内の通路を広く確保しているため買い物しやすく、買い物を楽しんでいる気持ちを途切れさせないような工夫がされている。
シンプルかつ初歩的な工夫のように思えるがこれが実行できないドラッグストアが意外と多い。
少し昔までは雑多で手狭なドラッグストアが多かったが、同店や前回取り上げたココカラファイン東京新宿三丁目店を見てみると、最近のドラッグストアが通路幅を意識し始めているのは間違いない。
今後は歩きやすい通路と車いすの人でも楽しめるようなバリアフリー意識のある店づくりが前提になっていくのではないかと感じた瞬間であった。
最後に
ココカラファイン東京新宿三丁目店とスギ薬局新宿三丁目店がオープンしたと聞いた時、「コンセプトも出店時期も立地条件も被っている。これはどちらかしか生き残れないだろう。」と少し悲観的に見ていた。
しかし、実際に観察してみると新宿で出店する上で考え方やアプローチの仕方に違いがあることがはっきり分かった。
ココカラファインはアミューズメント感あふれる内装と化粧品をフルラインで購入できる品揃えでドラッグストアならではの娯楽を最大出力で提供。スギ薬局はビューティケアに力を入れながらも日常遣いができるように食品を中心とした生活消耗品にも着目、新宿で暮らす人を応援している。
新宿周辺のドラッグストアは数年前から今までにないような特徴ある店舗が増えてきており、業界内での盛り上がりを感じている。SNSを駆使したサービスを提供や最新トレンドの発信…と双方が目指す方向は同じだが、どちらも愛されるドラッグストアに成長し、生き残ってほしいと心から願っている。