【薬剤師養成検討会】医師会宮川氏「変えなければ『分業は失敗だった』となる」

【薬剤師養成検討会】医師会宮川氏「変えなければ『分業は失敗だった』となる」

【2020.12.21配信】厚生労働省は12月18日、「第5回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催し、「薬局薬剤師の業務について」を議論した。この中で、日本医師会常任理事の宮川政昭氏が「議論の芯は地域包括ケアの中で薬局薬剤師の姿が見えないということ。今の薬剤師の業務の範囲などを見直す時期に来ている。それができないのであれば医薬分業は失敗だったというしかなくなってしまう。そうならないために薬剤師自身がこれからどうやっていくのかをあぶりださないと将来はないと思う」と話し、薬局薬剤師に対し危機意識の共有を促した。そのほかの構成員からも「潮目だ」といったコメントが出た。


日薬「病院薬剤師の確保に基金活用を」

 薬剤師の需給調査のほか、薬剤師の養成や資質向上に関して検討を進めている同検討会では現在、テーマごとにブレイクダウンして議論を進めている。これまで「病院薬剤師の業務について」「卒後研修について」「薬学教育について」などが取り上げられてきた。そして、5回目となる今回の議論のテーマは「薬局薬剤師の業務について」である。
 
 今回の検討会は、前回の検討会の追加意見・質問のとりまとめと薬局・薬剤師関係資料について事務局が説明し、日本薬剤師会(日薬)副会長の安部好弘氏と日本保険薬局協会(NPhA)常務理事の藤井江美氏が資料をプレゼン。その後、構成員からの質疑や意見陳述という流れとなった。
 
 まず、事務局が「参考資料1」として薬機法等制度改正に関するとりまとめ」を紹介。16ページ以降に「医薬分業の今後のあり方について」の記載があるため、同日の議論の資料として添付したとした。また、「参考資料2」として、関連する行政資料を「薬局・薬剤師関係資料」としてまとめたことを紹介。このうち、「データヘルス集中改革プラン」に触れ、オンライン資格確認によって特定健診情報や薬剤情報が確認できるようになるほか、電子処方箋の動き、国民自身が幅広い民間PHRも活用することができるようになる流れを説明した。そのほか、薬局と医療機関の連携の動きやコロナ下の薬局の取り組み事例などを紹介した。北海道薬剤師会では、消毒薬不足時に、高濃度エタノールを希釈して無償配布するスキームを実施したという。

 次に、日薬の安部氏が資料を説明した。災害時の活動や健康サポート機能の好事例紹介など、これまでの取り組み状況を解説。「今後の取り組み課題」として、病院勤務薬剤師の確保について地域医療総合確保基金の活用を提案した。例えば奨学金の支給・返済のほか処遇改善などの策があるのではないかとした。また、臨床教育に関しては、卒前と卒後の双方の在り方検討が必要とし、卒後教育の在り方について法整備も含めた早急な検討が必要とした。

 続いて、NPhAの藤井氏が、NPhAでの調査結果を踏まえつつ、在宅業務や地域連携、ポリファーマシー対応、入退院連携、服薬フォローアップ、薬局のシステム化などの現状を紹介した。

JACDS榊原氏「セルフケアも薬剤師の使命」

 質疑・意見陳述では、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)副会長の榊原栄一氏が発言。「薬剤師は高度医療や中度医療にも参画するのも当然だが、かたや医療財源が高騰している中では地域の住民の健康維持増進という部分で、生活の中に入っていって軽度医療のエリアでセルフメディケーション、あるいはセルフケアをしていく、病気にならない、重症にならないようにしていくことも薬剤師薬局の使命の一つだ」と述べ、セルフケアの重要性を指摘した。今後、JACDSとして、薬剤師の資質を向上するため医療的・薬学的・衛生的スキルの向上を支援していきたいとした。

 認定 NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子氏は、安部氏、藤井氏のプレゼンに関して、「好事例はあったが、実施していない薬局に広がっていかないことが問題。薬局が二極化し、乖離している。日常業務の中で患者に何をしているのか理解されていないし、知らせてもいない」と問題意識を吐露した。「ヒヤリハット事例報告も調剤報酬に絡んだとたんに急増した。研修も認定を取得することが目的化していないか。見直しが必要」と話した。その上で、「服薬期間中のフォローアップが見えてくると、患者から見た薬剤師の姿が変わるのではと期待している」とした。「オンライン資格確認や電子処方箋の議論もされている中、大きな流れが変わる、潮目にきている。薬剤師が何を目指すのか、目標を明確にして取り組んでいかなないと実感できる存在になり得ないのではないかと危機感を持っている。何を変えないといけないのかを本気で考えないと、今までと同じでは変わらない」と話した。
 
 こうした意見に対し、日薬の安部氏は、「一元管理だけでなくその上で何を提供するのかが問題になってくる。医療機関にどのような情報を提供できるのか、患者さんにどのようなアウトカムを提供できるのか。日本薬剤師会としても、こうしたことにより多くの薬剤師が取り組めるようにしていきたい」と話した。

 一方で、認定が目的化しているといった意見については、「こうしたことはないとはいえないが、参加してもらうインセンティブがあることで、役割があるのだと気づいてもらう機会になっている。研修をしない人よりもしている人の方が資質は向上すると思う」とした。一方、課題として、研修に来ていない人にどう伝えていくかを挙げ、会員・非会員を問わず取り組んでいきたいと話した。

 大阪薬科大学学長の政田 幹夫氏は2019年から検査値の開示を始めていた事例を紹介しつつ、「検査値だけでなく、一部地域では電子カルテの内容を薬局と共有しているところもある。こうした状況下で、薬局がどのくらい積極的にやっていくのか。薬剤情報の説明は製薬企業の資料でよく、そうではなく、電子カルテの情報などを含め、この患者さんはなぜこの薬剤を飲む必要があるのかということを説明できなくてはいけなくなる」と話した。

 さらに、在宅での往診同行に関しては、病院の論文で医師との同行の方が有害事象が減少することなどが分かっているとし、薬局では往診同行にどう取り組んでいくのかと疑問を呈した。

 検討会座長を務める薬学教育評価機構理事長の西島正弘氏は一般紙の薬局の取り組みを紹介する記事に触れ、「一般の人に薬局薬剤師が薬を渡すだけではないということを知っていただくことも重要」との考えを示した。さらに、健康サポート薬局が目標の1万軒台には遠く、2000超にとどまっていることに関して、今後の見通しをたずねた。

 日薬・安部氏は、健康サポート薬局の研修を受けた人は2万4000人おり、もっと健康サポート薬局が増えてもよい状況とした上で、常に研修を受けた薬剤師がいなければいけないという要件、さらに長時間営業を推進している中で、健康サポート薬局を届け出られない要因になっているのではないかと推察した。今後は研修を増やしていくことで増加にもつなげたいとした。

和歌山県立医科大学客員教授の赤池 昭紀氏は、COML山口氏の意見に賛意を示し、「非常に素晴らしい取り組みをしている薬局がマジョリティなのかどうかが問題。クライアントである患者がどう思っているかが重要で、全体としては不十分だと感じている。検討会では何が不足しているかを議論する必要がある」と話した。さらに「薬局の強みは本来、患者になる前の健康サポート機能であるにもかかわらず調剤に偏重した」とした。

 日本医師会常任理事の宮川 政昭氏は、「さまざま意見や質問が出たが、芯は姿がみえないということではないか。地域包括ケアのパートナーとしての役割がみえない。今の薬剤師の業務の範囲とか見直す時期にきている。それができないのであれば、医薬分業の今後のあり方として、これは失敗だったというしかなくなってしまう。そうならないためには、ここからどうやっていくのか、薬剤師自身があぶりださないと今後の将来はないと思う。健康サポート機能についてもモノを売るということよりも前の段階が重要であり、それから医療機関にかかって、フォローをどうするのかも重要で、処方期間の間にどうやって干渉していくのか。これができないのであれば、全く意味がないので、医薬分業というのはあり得ないのだろうと思う。そうだとすれば、私はこれはいらなくなってしまうと言い切らなければいけない。だから、薬剤師の方々の問題点の把握にかかっているということをご理解いただけなければいけない。真剣に考えなければいけないターニングポイントであると思っている」と話した。

 これに対し、日薬・安部氏はそういった意見を踏まえて薬機法が改正されたとの見方を示し、服薬フォローが義務化されるなどの改正の中身をしっかり理解し、業務に活用できるようにしていきたいと話した。

 日医・宮川氏は、「多職種の中に入っていくのは図々しさも必要なので、そういった図々しさを持った薬局さんが出てくることを期待しているし、地域医療総合確保基金の過去の事例も病院薬剤師の方にも有効活用していただいて、都道府県と相談しながら歯科医師と話し合ったり基金を活用しながらそこを一緒になってやっていければ幸いかなと思う。やるとなれば私も一生懸命お手伝いしたいと思うので、ぜひよろしくお願いしたい」とした。

 日本病院薬剤師会副会長の武田 泰生氏は、病院薬剤師の確保問題に関して、基金活用の提案をもらった日医と日薬に謝意を示した。薬機法改正をきっかけの一つとして薬局薬剤師と病院薬剤師の情報連携を強化拡充していきたい考えを示した。

 NPhAの藤井氏は往診同行に関して、スケジュール調整の関係で必ずしも同行することができないこともあるとし、オンラインを含めてリアルタイムに情報を共有するシステムも含めて検討していきたいとの考えを示した。
 また、点数や法制化がないと取り組まないのかとの意見に関しては、「お恥ずかしながら」としつつも、「法律で義務化されたことにより胸を張って患者さまにお聞きすることができるようになったと現場は喜んでいる。今後は覚悟を持って取り組み、患者にアピールしていく」と話した。

 そのほか、構成員からは、在宅でカレンダーへの薬剤のセットに時間を要しているという意見があることに関し、「それはほかの介護職でもよく、本来の薬剤師の業務は何かをすみわけをしていく必要があるのではないか」と提言された。

 日本精神科病院協会副会長の野木 渡氏は「理想は別として、病院には今、医師と一緒にやっていこうという薬剤師の人材がいない。これでは医師は薬剤師が必要ではないとみなしていく可能性がある。医師と薬剤師が組んで一緒に機能していく現場でないといけない。病院の薬剤師を増やしてもらって外来でやってもらえるようにしていくことが必要。セルフケアも必要だが、病気を治すことが大切」と話した。

 COML山口氏は、「座長から一般紙の記事のお話があったように、薬剤師さんの役割、薬局の役割を周知することも重要ではないか。それによって薬局が選ばれれば薬剤師の資質向上にもつながる。例えば保険者は直接、情報を伝えられる手段を持っている。事務局に提案したい」と話した。
これに対し、事務局は「薬に関しても患者さん、国民の理解があってのこと。薬局が変わろうとしていることを含めて、広報・周知は重要なテーマ。薬の週間などを通して周知を拡充していくことを考えたい。この検討会でも国民へのメッセージについてもご議論いただければ」と回答した。

 東京大学医学部附属病院教授・薬剤部長の鈴木 洋史氏は、「実際に小規模の薬局だと研修に出るのが難しいこともある。地域の中で助け合いながら病院での研修などに出していただけるようなシステムがあるといいと思う。検討をお願いしたい」と話した。

 座長の西島氏が宮川氏に対し、かかりつけ医の普及に関して取り組みを聞くと、日医・宮川氏は、「かかりつけ医は概念であり、かかりつけ薬剤師のように保険の中の話ではない」と話し、患者との信頼関係が築けていればそれがかかりつけ医だとした。
 関連して、COML山口氏は、かかりつけ薬剤師に関して、COMLの電話相談では、指名したい薬剤師がかかりつけの要件に準じていないといわれ落胆したという声があることを紹介し、「かかりつけ薬局があり、いつでも相談に行けば情報を共有されているというのが理想ではないか」とした。

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日薬「卒後教育に関する法整備を」

 今回の検討会で、新たに提示されたポイントは、日薬・安部氏の「病院薬剤師の確保に基金を活用すべき」というものだ。病院薬剤師の確保に関して、財源を含めた具体的な提案がなされたことは光明だ。
 この財源を通して、資料では「国公立等地域の基幹病院の薬剤部人員を増員し、人員確保が困難な病院の業務支援や人材交流などを可能とする仕組みを検討」とも記されており、薬学部人員増と病院薬剤師の支援を絡めて展開していく方途も示された。

 また、今回の資料で卒後研修に関して、日薬が基本的には歓迎する意向を示していることも改めて明らかになった。

 日薬は資料で、「地域・病院におけるチーム医療をより充実させるため、薬局に勤務する薬剤師の病院における病棟等業務の研修、病院に勤務する薬剤師の地域の薬剤師業務の研修は、臨床能力や多職種連携の資質向上に有効」とした上で、「薬剤師の卒後教育の在り方について法整備も含めた早急な検討が必要」とし、「法整備」という踏み込んだ表現を用いた。

 そこに向けては、「薬剤師の資質向上に向けた研修に係る調査・検討」の事業で実施される『免許取得後の薬剤師に対し、医療機関等で卒後研修を行うモデル事業及び共通カリキュラムの作成のための調査・検討』の成果等を参考に議論を深める」必要があるとしている。
そのため、卒後研修の細かな制度設計には、同調査の結果が大きく影響しそうだ。同調査はすでに予算化が決定している。

 当メディアの別項でも紹介するが、今回、安部氏は「前回検討会の追加意見・質問」でも、明解な見解を丁寧に述べており、薬学教育の定員制限に関しても適正化の必要性を明言するなど、日薬としての検討会での役割を大いに果たしているといえる。

 その前提の下ではあるが、残念なのは、薬局の実務実習の質向上の策に関して言及がなかったことだ。

 今回は「薬局・薬剤師の業務」がテーマではあったが、日薬の資料では、「薬局実務実習」の項で「薬学教育に求めること」として、薬学部の入学定員総数の適正化を図る措置ができる新たな制度を提言し、「達成率を確認する評価指標を取り入れ達成度に応じて入学定員の削減も含めた適正化を図る」と具体的な適正化策まで提示してみせた。薬学部において地域枠を設け地域偏在解消の一助とするなどの新たな案も示した。一方で、日薬会員に最も関係する薬局実習の質向上に言及している箇所は見当たらなかった。

 これまでの検討会で薬局実習に関して、受け入れの薬局の評価と学生の評価に乖離があることは明らかになっており、日薬としてもこの改善にどう寄与していくのかの方針を示す必要があるのではないか。

 薬学教育6年制当初と状況は変わっている可能性があり、地域によっては受け入れに余裕のある実習先もあるとされる中、既存の薬局に固定することなく新しい薬局に機会を設ける仕組みと現状の調査も求めたい。
 
 薬剤師の業務が患者から見えづらく、「こんな活動もしている」という好事例紹介やアピールは必要なことだ。ただ、もう一方で、構成員からは現状の課題を自ら提示する姿勢が欲しかったという雰囲気があった。

 現状の問題点の指摘は、日薬の会員からは反発も招くことも予想される部分かもしれない。ただ、現状よりもさらに評価される薬剤師・薬局の姿に向けては不可避ではないだろうか。

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 また、この検討会で明らかになったのは、オンライン資格確認を端緒に、薬局はかかりつけか否かを問わず、否応なしに共有できる情報が増えることだ。そして、日薬・安部氏が指摘した通り、多角的な情報を持った時、どう薬剤師が生かせるのかはこれからの課題になってくる部分だろう。ここに服薬中のフォローが絡んでくる。
 このあたりが薬局薬剤師の「ターニングポイント」であり、今後の評価を左右することになると考えられる。健康サポート機能について、多くの構成員からも発言があり、この機能向上が大きなテーマになってくると考えられる。この点に関しては、当メディア別項で考察する。

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