【コロナと薬剤師】国のリーダーシップ強固な台湾、薬剤師会が積極活動のフィリピン/JACPセミナーから

【コロナと薬剤師】国のリーダーシップ強固な台湾、薬剤師会が積極活動のフィリピン/JACPセミナーから

【2020.09.07配信】新型コロナウイルス感染症拡大下で薬剤師はどのような役割を果たしたのか。台湾、フィリピン、ドイツなど世界の薬剤師の活動を知ることができるセミナーが開かれた。日本コミュニティファーマシー協会(JACP)が8月30日に開いたもの。台湾では国のリーダーシップが強固なことが印象的だった。フィリピンでは薬剤師会が国民への情報提供で積極的に活動。そのほか郵送を有効活用したドイツの例や、国内では医療機関と連携しながら糖尿病患者への感染予防で役割を果たした薬局恵比寿ファーマシーなどの取り組みが紹介された。


テーマは「♯コロナに負けるな!」

 新型コロナウイルス感染症拡大下で薬剤師はどのような役割を果たしたのか。台湾、フィリピン、ドイツなど世界の薬剤師の活動を知ることができるセミナーが開かれた。日本コミュニティファーマシー協会(JACP)が8月30日に開いたもの。台湾では国のリーダーシップが強固なことが印象的だった。フィリピンでは薬剤師会が国民への情報提供で積極的に活動。そのほか郵送を有効活用したドイツの例や、国内では医療機関と連携しながら糖尿病患者への感染予防で役割を果たした薬局恵比寿ファーマシーなどの取り組みが紹介された。
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 8月30日、日本コミュニティファーマシー協会(JACP)は、「♯コロナに負けるな!」というテーマでWEBフォーラムを開催した。世界の薬剤師たちは新型コロナウイルスとどう向き合っているのか、そしてポストコロナ時代に向けて新しい生活様式(ニューノーマル)を創るためにはどうしたらよいのかなどをテーマに、IT事業者や薬局関係者が報告・提言を行った。
 登壇したのは、以下の人たちだ。
 フィリピンからは、Yolanda Robles氏(フィリピン薬剤師会会長)。
 台湾からはHsuan Lee氏(Tri-medical Pharmacy)。
 ドイツからはアッセンハイマー慶子氏(セントラルアポテーケ開設者・JACP理事)。
 日本からは岡田浩氏(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)のほか、薬局としては、マスカット薬局(岡山)「のぞみ薬局(広島)、薬局恵比寿ファーマシー(東京)。
 モデレーターは山村重雄氏(城西国際大学薬学部教授・JACP理事)、浜田康次氏(株式会社日本アポック顧問・JACP理事)、吉岡ゆうこ氏(JACP代表理事)が務めた。

台湾:35歳以下の薬剤師の参画を推進

 台湾の報告では、医療用マスクの供給に関して、地域薬局が役割を果たしたことが報告された。
 ITエンジニアによりアプリがつくられ、地域ごとにマスクの在庫量が調べることができたという。
 また、国民健康保険カードによって、国民は1週間当たり1人2枚のマスクを買うことができた。1枚18円程度の値段だったという(0.17USD)。
 さらに、リフィル処方が推進された。公衆衛生の最前線で地域薬局は役割を果たしたと、Yolanda Robles氏は報告した。
 こうした取り組みは国の強力なリーダーシップが発揮されたことを印象づけた。Yolanda Robles氏が「35歳以下の若い薬剤師のボランティア参加を推進する取り組みを展開した」と話したことも、台湾が若い世代の力を取りこんでいることを感じさせた。

フィリピン:SNSを駆使して情報提供

 フィリピンからは薬剤師会の積極的な活動が報告された。
 3月10日にfacebookに薬剤師会の対策班のページを作成。そのページを通して国民への正確な情報提供に努めた。対策班には地域薬局薬剤師のほか、病院の薬剤師、製薬業界、行政機関が参加したという。
 抗マラリア薬など供給規制がかかった医薬品等に関しては、適切な調剤や医薬品の慎重な提供と管理を勧告した。勧告は、地域の支部、関連団体、大手薬局、ソーシャルメディアプラットフォーム(ウェブサイト、フェイスブック、メッセンジャー)を通じて発行し、配布された。
 また、薬剤師会支部が医薬品に関して、どのような懸念を持っているかが調査された。

ドイツ:配達の医薬品に手書きのメッセージ

 ドイツからは、「不安と闘いながらの4Bの取り組み」が紹介された。4Bとは、「Beliefern(医薬品の供給、自宅への配送)、「Beraten(相談・提案・助言)、「Betreuen(お世話)」、「Beruhigen(不安を取り除く)」だ。
 ドイツでは医薬品の配達に特別加算が認められ、1配達当たり600円程度(5ユーロ)の保険請求ができるようになったと述べた。配達した医薬品に手書きの励ましのメッセージを加えたり、花の種を配ったりしたという。
 アッセンハイマー慶子氏は、「医師に調剤権のない完全分業のドイツでは薬局が機能しないと医療が成り立たない。ロックダウン中も薬局は営業を継続した」と話した。
 日本の取り組みでは、岡田浩氏(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野)が京都大学SPH (School of Public Health) 薬局情報グループを立ち上げ、「薬局 COVID-19 防御対策 チェックリスト」などの情報発信を行った経緯などを報告した。同グループでは、その後、FIP(国際薬剤師・薬学連合)のガイドの翻訳も手掛け、「臨床情報と治療ガイドライン」や「薬剤師と薬局従事者のためのガイドライン」、「よくある質問と迷信的な話や不安に対するアドバイス」などをホームページ上で提供している。
 さらに、薬局恵比寿ファーマシー(東京)は、医療機関と連携しながら、糖尿病患者の感染予防に注力したことを報告した。糖尿病予備群の早期発見のために検体測定室も活用したという。
 マスカット薬局(岡山)は、小学校で手洗い教室を開催したことを報告。また、のぞみ薬局(広島)は、屋外から医薬品を受け取りやすい臨時投薬窓口を設けたことなどを紹介した。

フィリピンでは薬剤師会がSNSを積極的に活用し、国民への情報発信に努めた

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