【薬局での栄養指導】トレーシングレポートの足がかり→認定薬局の“月30回報告”にも【JACPフォーラム】

【薬局での栄養指導】トレーシングレポートの足がかり→認定薬局の“月30回報告”にも【JACPフォーラム】

【2021.08.31配信】日本コミュニティファーマシー協会(JACP)は8月29日に、「第8回コミュニティファーマシーフォーラム」を開催。その中で、薬局での管理栄養士による食事栄養指導が、トレーシングレポートの足がかりとなり、地域連携薬局の基準である医療機関などへの“月30回”の報告実績にもつながっているとの報告がされた。


 今回のフォーラムでは、「薬剤師と栄養士がタッグを組んで生活者支援」と題して、フォーラル、アポクリート、杏林堂薬局の3社から会員報告が行われた。

 フォーラルでは、78名の栄養士がおり、医療事務を兼任する形で1店舗に2〜3名が所属しているという。日頃から店舗で勤務していることで、薬局の仕組みへの理解が進むほか、店舗薬剤師との情報連携もしやすいメリットがあるという。
 指導実施は3パターンあるといい、1つは調剤待ち時間の活用、2つ目は服薬指導中に栄養に関する質問が患者から出た時にバトンタッチ、3つ目が店内掲示物を見た患者からの問い合わせという。
 服薬指導の内容や栄養指導の内容はお互いに共有しているという。
 事例としては、服薬指導中に吐き気があり、薬局内で長い時間をかけることができなかった患者に対し、電話でフォローを行ったケースがあるという。電話の確認により水分摂取や食事に問題が生じていることがわかり栄養士から指導を行った。薬剤師の方からは以前、この患者においてナウゼリン服薬で吐き気がおさまったとの記録があったため、栄養士のフィードバック情報と含めてトレーシングレポートを医療機関に提出したという。
 報告を行った管理栄養士からは、「トレーシングレポートは地域連携薬局の基準である月30回の医療機関等への報告にもつながり、間接的ではあるが栄養士がこうした取り組みに貢献できる」と指摘していた。
 食事栄養指導においては患者における担当栄養士を決めているといい、このことが協働している薬剤師のかかりつけ薬剤師の同意につながることもあるという。フォーラルでは「あなたがいるから、この薬局に来た」をコンセプトにしているといい、栄養士の担当制もこのコンセプトに基づくものとしている。

 アポクリートでは、クリニックからの依頼で栄養指導を行っているケースがあるという。
 食事の指導などを行うことで、クリニックから「これまで下がらなかった数値に変化があった」との話をもらうなど、医療機関の医師や看護師との信頼関係構築に寄与しているという。
 食事に配慮が必要な人に向けた製品を活用したレシピなども開発しているという。
 今後の課題として、限られた人数の栄養士では担当しきれないものもあることからDXを取り入れ、リモートでの栄養指導を検討しているという。

 杏林堂薬局では、栄養士は店舗スタッフとして勤務しているという。
 同社は健診バスを誘致して健診を行っているほか、管理栄養士による特定保健指導も行っている。
 指導の体制は整ってはいても広くそのサービスを知ってもらうことが重要として、服薬指導時にも薬剤師から声かけをし、同意が得られた場合には作成している栄養に関する情報シールを貼るなど、栄養に関心をもってもらう取り組みを展開しているとした。店内では同社栄養士がYouTube配信をしている「気軽にできる筋力トレーニング」動画を流しており、栄養士の存在の認知度アップを図っているという。 

実績の積み重ねが重要

 フォーラム後の会見で、記者から「栄養指導の収入の後ろ盾はどのようになっているのか」との質問が出ると、同協会代表理事の吉岡ゆうこ氏は、「現在は無料のところが多い」としつつも、「栄養ケア・ステーションでは診療報酬で評価されているケースもあるので、こうした取り組みが評価されることにつながる可能性はあるのではないか」と話した。
 一部の薬局では相談を有料化しているといい、年額により何回でも相談できる“サブスク”を導入している薬局もあると紹介した。 

 また、同協会理事の島田光明氏は「まずは実績を積み重ねていくことが重要だ」との考えを示していた。

この記事のライター

関連する投稿


【コミュニティファーマシー協会】8月29日にWEBフォーラム開催/「薬剤師と栄養士のタッグ」をテーマに

【コミュニティファーマシー協会】8月29日にWEBフォーラム開催/「薬剤師と栄養士のタッグ」をテーマに

【2021.06.02配信】日本コミュニティーファーマシー協会は、8月29日に「第8回コミュニティファーマシーフォーラム」を開催する。テーマは、「薬剤師と栄養士がタッグを組む新たな薬局業界の未来~ ヘルスケア・デザイン~」。


【コロナと薬剤師】国のリーダーシップ強固な台湾、薬剤師会が積極活動のフィリピン/JACPセミナーから

【コロナと薬剤師】国のリーダーシップ強固な台湾、薬剤師会が積極活動のフィリピン/JACPセミナーから

【2020.09.07配信】新型コロナウイルス感染症拡大下で薬剤師はどのような役割を果たしたのか。台湾、フィリピン、ドイツなど世界の薬剤師の活動を知ることができるセミナーが開かれた。日本コミュニティファーマシー協会(JACP)が8月30日に開いたもの。台湾では国のリーダーシップが強固なことが印象的だった。フィリピンでは薬剤師会が国民への情報提供で積極的に活動。そのほか郵送を有効活用したドイツの例や、国内では医療機関と連携しながら糖尿病患者への感染予防で役割を果たした薬局恵比寿ファーマシーなどの取り組みが紹介された。


最新の投稿


【日本保険薬局協会】中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【日本保険薬局協会】中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【2025.09.11配信】日本保険薬局協会は9月11日、定例会見を開いた。この中で9月10日に開かれた中央社会保険医療協議会総会の「調剤について」の議論の中で病院薬剤師の不足に関して多くの意見が出たことについてコメントした。


【日本薬剤師会】岩月会長、中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【日本薬剤師会】岩月会長、中医協「調剤」での「病院薬剤師」議論にコメント

【2025.09.11配信】日本薬剤師会は9月11日に定例会見を開いた。その中で岩月進会長は、10日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、「調剤」の議題の中で「病院薬剤師」について多くの意見が挙がったことについてコメントした。


【日本薬剤師会】薬剤師PR資材を制作/「親子で知る薬剤師のお仕事」

【日本薬剤師会】薬剤師PR資材を制作/「親子で知る薬剤師のお仕事」

【2025.09.11配信】日本薬剤師会は9月11日に定例会見を開き、その中で薬剤師PR資材「親子で知る薬剤師のお仕事」を制作したと説明した。リーフレットのほか、短編動画も制作した。


AIエージェント活用したレセコン・薬歴開発へ/三菱電機デジタルイノベーション

AIエージェント活用したレセコン・薬歴開発へ/三菱電機デジタルイノベーション

【2025.09.10配信】三菱電機デジタルイノベーション株式会社(東京都千代田区、代表取締役 取締役社長:武田 聡氏)は、「AI エージェントが生みだす新たな薬局体験」をコンセプトとし、レセプトコンピュータ(以下「レセコン」)と電子薬歴を融合した「保険薬局向けオールインワンプラットフォーム」の開発に着手したと公表した。本サービスのプロトタイプを、2025年10月12日から開催される「第58回 日本薬剤師会学術大会」に参考出展する予定。


【厚労省】緊急避妊薬のスイッチOTC薬を承認へ/改正薬機法初の「特定要指導医薬品」に指定

【厚労省】緊急避妊薬のスイッチOTC薬を承認へ/改正薬機法初の「特定要指導医薬品」に指定

【2025.08.29配信】厚生労働省は8月29日、薬事審議会「要指導・一般用医薬品部会」を開催。緊急避妊薬「レボノルゲストレル」(一般名、あすか製薬)のスイッチOTC化を了承した。改正薬機法で規定する「特定要指導医薬品」として初めて指定した。


ランキング


>>総合人気ランキング