「いつもの薬局と連絡とれない」、困った事例の相談窓口に
この事業は、「地域において国民が必要とする医薬品を提供できる体制の構築・維持」を目的に、47都道府県薬剤師会が実施してきたもの。医薬品の供給不足や在宅医療ニーズの拡大に伴う対応などが背景にあり、これまで個々の薬局の対応で充足してきた地域のニーズに対して、薬局が連携し“面”として対応する必要性が高まっている。それを支える基盤の1つに、全国津々浦々まで組織化されている薬剤師会の存在がある。
地域によって「地域で流通する医薬品情報・在庫情報等の把握・共有」や「在宅医療における医薬品提供体制に係る取組」など取り組みは多彩だが、各地で医薬品の分譲システムや麻薬小売業者間譲渡グループ化など、構築により地域住民が“困ってしまう”事例の減少に取り組んでいる。
そのうちの1つである埼玉県薬剤師会の取り組みをみてみると、5地域7地区に在宅医療連携薬局グループを構築し、グループごとに拠点薬局を設置した。
拠点薬局は、地域の医療機関から困りごとがあった場合に相談窓口になるなど“外部”への対応と、薬局同士の連携をしやすい環境をつくる“内部”の役割の双方を担う。実際に「いつもの薬局と連絡がとれない」といった相談を拠点が受け、当該薬局との連絡をつないだり、場合によっては拠点薬局が代わりに対応することを提案するなどの取り組みを行っている。グループ間の医薬品譲渡・譲受が2カ月間で4件発生した。
この取り組みは「今後の方向性の一つとなるのではないか」。埼玉県薬剤師会副会長の池田里江子氏は、拠点薬局が地域に果たす役割についてそう語り、今後、取り組みの深化や他地域への拡大を目指したいとする。
ただ、参画に強制はできない。在宅医とタッグを組む薬局の多い地域では、“自己”完結意向も強くグループ化の必要性を感じないという薬局の多い地域もある。適材適所ニーズのある地域に対しどうアプローチするかも課題だ。これについて池田氏は、始まった取り組みをまずはしっかり根付かせ、地域から評価を得ていくことが1つの策だとの考えを示した。
「グループ化の必要性を感じない」といっても、地域住民全体からすれば“穴”となってしまうエリアや時間帯、緊急の対応など、対応に困る事例が発生しないとは限らない。同様に、いくら自社グループ間で医薬品の融通がきくチェーン薬局であっても、近隣の薬局から融通を受けた方が患者にとって利便性があるケースは考えられる。それでも、“地域ごと”の取り組みへの参画に消極的なチェーン薬局もある。
今回の厚労省事業でも埼玉県薬剤師会は在宅医の方へ、こうした取り組みが始まっていることを積極的に周知した。その結果、在宅医が今回構築したグループの薬局に処方を出す際、グループがつくっていた「共通備蓄医薬品リスト」から医薬品を処方した事例があったという。リストの医薬品であれば原則、グループの薬局では在庫していることをチラシに記載している。「医師からも仕組みを理解していただいていると感じた事例だ」(池田氏)。
相談できる拠点があることで、地域の患者が困る事例を減らすことは地域共通のメリットといえる。
埼玉県薬剤師会の「在宅医療連携薬局グループ」(HCG)のチラシ
埼玉県薬剤師会の「在宅医療連携薬局グループ」(HCG)の薬局リスト例
(一部編集部改変)
オンラインで取材に応えた埼玉県薬剤師会副会長の池田里江子氏