【調剤報酬改定と薬局薬剤師への期待】 紀平哲也薬剤管理官「主語を“薬剤師”から“患者”に置き換えた改定だった」/1万字インタビュー

【調剤報酬改定と薬局薬剤師への期待】 紀平哲也薬剤管理官「主語を“薬剤師”から“患者”に置き換えた改定だった」/1万字インタビュー

【2022.06.27配信】厚生労働省 保険局 医療課 薬剤管理官の紀平哲也氏に、「調剤報酬改定と薬局薬剤師への期待」についてインタビューした。紀平氏は今年4月の調剤報酬改定について、「主語を“薬剤師”から“患者”に置き換えた改定だった」と語った。


 ――改めてですが、今年4月の調剤報酬改定をどのように総括されていますか。

 紀平 基本的には、「患者のための薬局ビジョン」が出て以降のこれまでの調剤報酬改定と同じ方向を向いている内容であったと思っています。
 その中で、いろいろなところからいただいている指摘について、どこまで対応できるかということを考えて行ったものだということかと思っています。

 若干、独り歩きしている様子がある「対物業務から対人業務へ」というキーワードは、今回の改定の説明でも使っている言葉ですけど、改めて思ったのは、やはり“患者に対するサービス”についてどう評価をするのかということが今回の改定の目指したところ、勘所だったのではないかと思っています。

 どういうことかというと、調剤料とか薬歴管理料という、これまでの点数の付け方は“薬剤師が行った業務”に対する評価で、主語が“薬剤師”なんですよね。今回の見直しでは、処方箋を受け付けた時、いろんな情報の確認・整理、お薬を間違いなく渡すこと、服薬指導をすることという流れの中で作った点数というのは、要は、患者に対して直接的・間接的にどんなことが提供されるのか、ということを整理したものといえるのではないかと。主語を患者に置き換えたという見方ができるのではないかなということを、改めて思いました。

調剤管理料は“なぜ分業にして薬局にわざわざ行かなきゃいけないんですか?”という問いに対する答え

 ――たしかに調剤管理料は、“専門家が頭の中でやっていること”という、ある意味で説明を加えたような項目だったと感じました。

 紀平 薬の取り揃え以外の部分が見えにくいということが、いろんな批判の根っこにあったのではないかなと思っています。それを切り出して見える化したのが調剤管理料ということになります。それは、“なぜ分業にして薬局にわざわざ行かなきゃいけないんですか?”という問いに対する答えであって、それをきちんと目に見える形にしたというのが調剤管理料だったのではないかなとは思います。

 薬剤師にとっては、ある意味当たり前のことだったと思うのですが、これまではそれがきちんと伝えられていなかったということはまず一つあります。また、処方箋の内容をぱっと見て、知識と経験で無意識のうちにやってしまっているようなことも、実際に頭の中を分解すればこういうことやっているんですよということだったとも言えるのではないかということです。
 もう一つは、例えば、地域の管理者から“とにかく処方箋を捌け”と言われ、現場を回すために、本来やらなければいけなかったにもかかわらず、やれていないということもゼロではないんだろうと思います。改めて、薬局で処方箋を受ける価値は何なのかということを整理したというのが、今回の調整管理料というものだったというふうに思います。

対人へのシフト要求は「改定の見直しだけでは足りない」/“伝える”必要

 ――常に周辺からの批判に対して説明を求められているような状況になっているわけですが、今回も、はやくも改定後に財務省は、“対人への構造転換に資する体系的見直しと評価することは困難”との見解を示しています。これにどう応えていくことができるのでしょうか。

 紀平 いくつかあって、今回、“調剤報酬を見直したから対人業務をやっています”という説明になるかというと、それだけでは足りないのは当たり前なんですよね。そういう意識で調剤報酬の体系は見直したにしても、結局、その価値をきちんと伝えること、理解してもらうことができなければ、批判は終わらないので。

 現場の方からは、国や厚労省からも理解してもらえる広報を、と言われるのですが、やっぱり一番理解してもらわなければいけないのは患者さんたちで、現場で目の前の患者さんに納得してもらえることが説得力を持つんですよね。だから、処方箋を持ってきてもらって、こういうことを変更しましたよと、問題がある時だけ伝えるのではなくて、これだけのことを確認してこうでした、これは問題ないですねとかっていうこともきちんと伝えていくことが大事なのではないかと思っています。調剤管理料の業務は、ある意味で間接的なサービスなので、患者さんに対しては伝えないと伝わらない。それを伝えることというのは、現場でも取り組んでいただく必要があるんだと思います。

 一方で、先日、薬剤師の方から、「調剤に取り組む意識は大きく変わりました。単に錠剤をすりつぶしているのではなく、必要な量と安全性を考えながら、患者さんのために再製剤化しているのだと思うととても高級な取り組みのように感じております。」というコメントをいただきましたけど、そういった意識こそ、調剤管理料や薬剤調製料といった報酬の形よりも大事なんだと思います。

リフィル処方箋で問われているのは「お薬を出した患者さんのその後を、薬剤師に一定程度任せてもいいのか」という信頼感

 ――最近話題のリフィル処方箋についてです。今回の骨太方針でも推進方針が明確にされましたが、薬局、薬剤師の取り組みについてどのようにみていますか。

 紀平 処方箋を持ってきた患者さんにお薬を渡して、その後、その患者さんにどう関わっていくんですか、ということが、前回の薬機法改正におけるフォローアップに関する議論以降、ずっと問われてることなんですよね。

 その意味においては、リフィルであろうがリフィルでなかろうが、やらなければいけないことは変わらないのではないですか、ということは関係者のみなさんが指摘していることです。ですから、リフィルについて“薬剤師は何をしなければいけないんですか”と聞かれれば、“薬剤師に任せても大丈夫だよね”という信頼感を患者さんと医師にどう持ってもらえるかですねとお答えしてます。

 さきほどの調剤管理料が「わざわざ薬局に処方箋を持っていくということの価値は何ですか」だとすると、リフィル処方箋は「薬剤師はお薬を出した患者さんのその後にどう関わっていくのか」、「薬剤師に一定程度任せても大丈夫なのか」が問われていて、そう思ってもらえるかどうかの話ですね。それは、本来はリフィル処方箋だけの課題ではないはずです。
 その部分をリフィルに関わらず、やるべきことをやっていたら、「一定程度任せます」と言ってもらえていた可能性はあると思っています。リフィル処方箋はそこが目に見える形で関わっていかなければいけない。薬剤師の取り組み次第によって、変わってくるのではないかなとは思います。
逆に、“いや、やっぱり薬剤師に任せたら駄目じゃないか”みたいなことが起きれば、当然マイナス方向にゆれるので、国の政策だけの話ではないと思います。

リフィルでやったことをリフィル以外の患者さんにも応用していくことが重要

 ――リフィル処方箋に関して、他に感じていることはありますか。

 紀平 話がそれるかもしれないですけれど、制度が始まってから何をしようか、という議論が起こっているとすると、やはり順番は逆だと思うんですよね。ワクチン接種の時にも指摘のあった部分ですが、端的にいうと準備が足りてないということです。ワクチン接種は制度論が関係するのでまた別の課題がありますけど、少なくともリフィル処方箋については、今までの処方箋の対応の中で、本来もっとやっていればよかったことがたくさんあった中で、それが足りてないからこそ、“リフィルだからこうしなきゃ”みたいな話になっている面があるのではないでしょうか。

リフィル処方箋で取り組むこと、お薬を渡したあとの業務については、リフィル処方箋でなくても、普通の処方箋の患者さんに対しても応用していくということは、大事なのではないでしょうか。

「サービス業であれば報酬いかんではなくアフターサービスはあるのでは」

 ――この辺りは取材していても悩みどころですが、報酬のないプラスアルファの業務をした時に、薬局を企業として考えると、手間が増えて収入がないわけなので、取り組むインセンティブがないのかなと思うのですが。

 紀平 他のサービス業では、自分たちで料金設定ができるから別なのかもしれないですけれど、商品を販売した後のアフターサービスって普通ありますよね。販売後に何か持ち込んだ時に、“それはお金もらわなきゃできません”だけではなくて、対応してもらえることはあると思います。修理とか部品交換であれば実費は求められるんでしょうけれど。それを報酬がないと次のことはできませんというのは、サービス業として考えた時に、少なくとも患者から求められたときにどう対応していたんですか、という気はしますよね。

 例えば90日の処方箋がきた時に、90日分丸ごとドンって渡して大丈夫な患者さんなのか、分けて確認しながら渡した方がいいような患者さんなのかというのは、当然現場ではあったはずなんですよね。それを分割調剤という点数から話に入ろうとするのは、やっぱり順番が逆ですよね。他の小売店とかサービス業と比較しながら考えてるようにしてますけど、なぜ薬局という業界はこうなんだろうというのは思いますね。

 ――立地が薬局の選択基準で大きいということも関係しているかもしれませんね。また、報酬内容ではなくて、1薬局当たりの処方箋枚数が減っていっているということもあり、そのあたりは変化していかざるを得ない部分になると感じています。サービス業としての考え方の面が強くなっていくという。

 紀平 そのあたりを考えていきましょう、というのが健康サポート薬局だったはずなんですが、そこは趣旨が伝わっていない感はあります。

 ――そうですね。健康サポート薬局は、ヒント提示みたいな側面が強いと思っています。

 紀平 少なくとも行政が何かしてください、と押し付けているものではありませんけど、提供されているサービスが有用だとなれば、報酬でなくても自治体や保険者の事業などで利用されていくことはあると思います。

「薬局という箱と、薬剤師という専門職で、議論の切り分けを」

 紀平 いろんな話が混同して議論されているのかなとは思いますね。分けて話をするように気をつけているつもりなのですが、薬局という箱の話と、薬剤師という専門職の話と、きちんと分けなければいけないと思っています。

 加えて、薬剤師の話も混在しているなと思うのは、資格者としての薬剤師の仕事、管理薬剤師のような薬機法で定められた責任を果たさなきゃいけない立場としての仕事、それから、会社という組織の中での社員としての役割の話が混じるんですよね。薬局の取組という議論の中で厚労省が想定しているのは、医療資格者としての薬剤師の話が中心になるんですけど、会社として業務をどう回すのかっていうのは、人員配置やオペレーションの話なので、そこをきちんと分けて整理して議論しなきゃいけないかなと思います。

 ――それは常に感じますね。「今、専門職としてのかかりつけの話をしたのですが、なぜ、会社の回し方の話をしてくるんだろう…」みたいな。そこはご指摘の通りで、議論を切り分けて行う必要があるんですね。一方で、どちらかというと、“会社の組織員として”の意見が多いのも気になるところなんです。今回の薬機法改正でも、現場の管理薬剤師が組織である薬局に意見具申をする責任が規定されました。これは、専門職、国家資格者たる薬剤師の責任に、ある意味で光が当たったと思っています。

 紀平 法律上で責任が問われるのは、管理薬剤師ですからね。薬機法による管理薬剤師としての責任が問われ、結果として刑罰を受けた場合には、薬剤師法により個人の薬剤師の資格も行政処分で停止されることがあります。それだけの責任を負っている自覚を持っているかどうかによるのかもしれません。
 そういった法律上の重みも考慮して、薬機法のガイドラインでは管理薬剤師の要件について、実務経験5年以上が適当であるとしています。医師でいえば、5年というと、ようやく後期研修が終わるタイミングになります。医師とは違うという意見もあるかもしれませんが、管理薬剤師が個人資格としての薬剤師の責任も負っているということを会社や薬剤師自身がどこまで理解しているかという話ではあると思います。

連携強化加算は“薬局政策”

 ――個別項目になりますが、連携強化加算についてです。調剤報酬の要件に、PCR検査などの調剤ではない項目は入ったのは、すごく珍しいというか、新しい潮目なのかなと感じています。

 紀平 基本は医科との並びで考えていたことで、今回コロナ対応で平時からの準備といった課題がトピックとしてあって、いろんな点数の整備がされています。その中の一つとして医科で外来感染対策向上加算という項目ができたんですよね。それが今回だと発熱外来を行っている医療機関で、要件としては自治体からの要請に応じて、となっていて、自治体のホームページに掲載されていること、と。それの薬局版を作ったのが連携強化加算なんです。
ですから、先ほど申し上げたように、“薬局が何をやるか”という、薬局が主体になることがメインだった中で、行政や自治体からの要請に応じて対応しているところ、という見方を今回はある意味で作ったということになるとは思いますね。
 ただ、これは報酬として要件を考えるという話ではなくて、薬局としての政策、端的に言えば医薬局の政策に基づいて考えていく点数、報酬だと思うので、要件については、今後の見直しも含めて医薬局と相談しています。

地域貢献活動は以前から要件にあった

 ――私の理解なんですけれど、薬局のやるべきことや薬局への社会からの要請が、コロナで広がったというように感じます。

 紀平 むしろ、逆の見方もできるかもしれませんね。健康サポート薬局や地域連携薬局、かかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算の要件などには、従来から地域活動は入っていました。ですが、自治体から要請された時に「やります」と実際はなったのでしょうか、という見方もできると思っています。

 ラゲブリオなどは供給の制限があった中でしたが、PCR検査などは手上げ式でしたので、対応した薬局を評価するという観点で要件に入れました。例えば店舗が小さくて無料検査対応できません、あるいはその地域との兼ね合いでできませんという致し方ない薬局もあったと思うんですけど、今まで手を挙げてなかったのに、点数が付くとなったとたんに手を挙げたところがあったとしたら、先ほどの話のように、順序が逆なのでは、と問いかけたいですね。

 ――「報酬がつかないことはやらないですよね」という議論ですね。

 紀平 それはもう散々繰り返されてきた議論です。ヒヤリ・ハットが要件に入ったら登録件数が一気に増えました。研修認定薬剤師がかかりつけの要件になったら突然数が増えました。報酬がついたら動くということがこれまでに繰り返されてきているのは事実で、その姿勢自体が問われているんですね。
 形が決まってからでしかやらないと。しかし、それは薬剤師としてやらなければいけないことはなんなのか。会社から求められていることだけとは違うと思います。資格者として求められていること・できると思われていることと実際にできることとのギャップがあって、だからこそ研修というものをきちんともう1度見直さなければいけないという議論も出てきているのだと思います。

 ――企業の論理と、専門職としての薬剤師の問題は、今後もさらにクローズアップされてくるように感じています。

“調剤報酬算定のための”セミナーではどんどんずれていく

 ――処方箋40枚規制に関連してですが、薬剤師ワーキンググループでも、今後、対人業務のプロセスやアウトカム評価にしていくのが理想的とされましたが、大きな潮流みたいなものは変化していくんでしょうか。

 紀平 それはもう変わっているんですよ。基本はアウトカム評価なんですよ。ただ、アウトカムで評価をして点数をつけるという時に、服用薬剤調製支援料1のようにアウトカムそのものを要件にするのか、服薬情報等提供料のようにプロセスを要件にするのか、地域支援体制加算のようにストラクチャーとプロセスを組み合わせて要件とするのかは、要件の設定次第ということですね。

 薬剤師が責められるような論調になりがちですけど、やっぱり現場の薬剤師はすごく頑張っていると思うんですよ。
 ただ、何をどう頑張っているかっていうところですれ違いが起こってるんじゃないかと思ってます。ちゃんと一生懸命やっていて、それが患者さんにも伝わって、納得・理解してもらってる方達がいる中で、同じようにやっているんだけれども、それが伝わってない、伝わりきってないパターンもあるんだと思います。ほかにも、頑張っているつもりなんだけど、ちょっと方向性がずれていて、薬剤師としての価値と違うところですごく時間をとられちゃっているパターンもあるでしょうね。もう一つは、やっぱり本当にやるべきことがされていないパターンもあるのではないかと。いろんなパターンがあると思います。

 他の職種の人たちでできないことをやるというのが薬剤師としての価値なんでしょうし、他の職種の人たちと同じことをやるにしても、より付加価値の高いことを提供することが薬剤師の価値なのだとすれば、それをどういうふうにやっていくかというところがまず一つ。
 もう一つは、やることについての価値をいかに患者さんに分かってもらえるかだと思うんですよね。例えば処方箋の監査だと、“こういうことを確認してこうだからこうです”みたいな説明をしろという話になりかねないんですけど、薬剤師の説明は患者の理解にお構いなく一方通行、という指摘も昔あったんですよね。患者さんに分かりやすい形で、個々の患者さんごとに理解してもらえるように説明の内容と方法を選んで使い分けるコミュニケーションスキルが重要なのだと思います。

 薬剤師と患者さんの相性だってあるはずなんですよ。ここは具体論をマニュアル化しようとしても難しいと思います。例えば具体的にイチから起承転結での説明を好む人もいれば、結論からの説明を好む人もいるので。説明者側の得手不得手もありますし、受ける方の好みもあるでしょうし。

 そもそもの薬剤師としての薬学的な知識とか技能の向上がベースにありつつ、それをどう伝えるのかのコミュニケーションスキルの話ですね。

 ――6年制の薬剤師の方々ががんのレジメンの話を基礎的知識として持って卒業してくる中で、それが現場で生かされる話ですと、10年スパンの話になると思う一方、今、現場にすでに出ている薬剤師の方々は何をすべきかも重要だと思っています。

 紀平 “私達は何をすればいいですか”という質問をいただくことがあるのですが、“目の前の患者さんに聞いてみてください”が回答かなと思っているんですよ。その患者さんが何に困っていて、どうすればいいのか、しかも患者本人が気づいてない困りごと、何をすればよりよい、いいことができるのかというのは、目の前の患者さんを見て探すことだと思います。
 そしたらもっとこういう薬の勉強をしなきゃとか、この病気についてもうちょっと詳しく知らなきゃとかっていうのは出るはずなんですよ。それを積み重ねていけばいいんだと思うんです。
それは逆に言うと、残念ながら、今それしかやりようがないのかもしれません。もっと体系的に修得できるようなもの、教科書があればいいんでしょうけれど、そういうものがないのが臨床薬学や実践薬学における課題ですよね。コンサル企業が研修でやるとなると、“調剤報酬算定のための”という修飾がつくんですよね。最初の話に戻りますが、本来は薬歴にしても情報提供にしても、報酬のためのものではないはずなんです。報酬の観点から考えていくと、どんどん本質からずれていくので、薬剤師としてやるべき患者さんに対すること、記録として残して次に使わなきゃいけないこと、医師に伝えなきゃいけないこと、しかも医師に伝えるのは、ちゃんと受け手が役に立つ内容を伝えることっていうのが大事だと思っています。

自ら調べて、自ら発信して、皆で共有するというサイクルを回すことが大事

 ――日薬の政策提言2022ですが、文書の中に「母子健康手帳」という記載があったことに感銘を受けました。私も一男一女の母なのですが、一番、母子健康手帳を使う機会はワクチンの接種スケジュール管理なんですね。今はアプリとかもありますが、一方で、打つべきか否か、動機付けなどには薬剤師さんが一番向いていると思っていて。“打ち手”の議論以上に、そういう“全ての医薬品”を“全人的に”関わっていくことはとても価値があると思いました。

 紀平 価値はあると思います。その前提として、ワクチンの知識を薬剤師の方々が備えている必要がありますよね。これまではワクチンは供給を担っていないから、ワクチンのことはあまり詳しくない薬剤師も多いと思います。定期接種で使われている生ワクチンと不活化ワクチン、アジュバントといった従来からあるものに加えて、新型コロナではmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンが出てきた中、その正しい理解こそ薬剤師の基礎知識が生かされるんじゃないでしょうか。モノとして薬局で扱っていなくても、患者さんが使っている薬としてワクチンをちゃんと説明できるようになるということは、おっしゃる通りできた方がいいんですよね。それをどういうツールでどう勉強しますかという話にもなると思います。

 例えば、“週刊誌にこんな記事が出ていましけど、私、この薬飲んで大丈夫なんですか?”と疑問をぶつけられる場面は、日頃患者さんに対応している中であることだと思うんですね。それを個別対応で終わらせるんじゃなくて、まとめて、例えば“うちの薬局ではこうしましょう”、“薬剤師会ではこうしましょう”というところまでもっと出てきてもいいと思います。

 自ら調べて、自らが発信して、皆で共有するというサイクルを回すことが薬剤師相互のレベルアップに繋がっていくんだと思うんですよね。

 ――個々の薬剤師さんからその動きをつくるのはハードルが高いイメージがあります。日薬さんとかがリーダーシップを発揮してほしいと思っている薬剤師さんが多いイメージです。

 紀平 そうですか? ○○薬局新聞みたいなのを作っている薬局さんはけっこうありますよね。そういう単位からの発信でもいいと思います。現場の人達が、自分たちがやっていることを引っ張り出して、みんなでこうやりましょうって言えば、それはまさしく地域活動なんだと思います。地域活動って地域住民に対することだけじゃなくて、地域の中での薬局という集団みんなでこうやりましょうよっていうのも地域活動です。それは別に薬剤師会という看板がなくてもいいんですよ、薬局同士・薬剤師同士ででもやれば。
 最近だったら、SNSでもいいし、やろうと思ったら発信できるツールはあるんだと思います。

 とにかく、“私は頑張っています”と、内にこもっていては外からは誰も評価してくれないということが今の図式に繋がっているので、とにかくどんな形であれ発信していかないといけないんだと思うんですね。
 加えて、そこから、“じゃあ、せっかくだからこういうこともやってほしい”と言われた時に、逃げずにできるかどうかですよね。

やりたかったのは「現場の取り組みが報酬につながる」こと

 紀平 やはり、今回の調剤報酬改定でやりたかったこととして、現場で頑張っていることを評価するというのが、診療報酬の本来的な形なんですよね。今回できたこととしては、医療的ケア児について、手間暇かかっていることをきちんとやっているところ、それから在宅の麻薬ポンプとか在宅中心静脈栄養法のところを点数化できたこと。地域支援体制加算も段差をつけて、よりやっているところにも点数を作ったというのは、やっていることを形にするという、診療報酬の本来のあり方だったんだと思っています。

 報酬がない取組を現場でやっていただけたら、こういう報酬に繋がっていくんだということを形として示せたと思うので、今後も患者視点での新しい取組を進めていっていただきたいと思っています。
 その時に“やっています”だけではなくて、“やった結果こうなっています”というアウトプットのところまで話をしてもらえると、次の話に繋がりやすいということだと思います。
 
 ――分かりました。ありがとうございました。

厚生労働省 保険局 医療課 薬剤管理官 紀平哲也氏

きひら・てつなり●1995 年 大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了。同年に厚生省(当時)入省。医薬・生活衛生局や保険局に在籍。新薬の承認審査、薬価算定・調剤報酬、薬剤師・薬局関連施策等を担当。そのほか、科学技術庁、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国食品医薬品局(FDA)、富山県へ出向。2018 年 8 月より PMDA ワクチン等審査部長。2020 年 8 月より現職

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