【医療経済実態調査】小規模薬局法人の経営悪化鮮明/20店舗以上薬局法人は損益率上昇

【医療経済実態調査】小規模薬局法人の経営悪化鮮明/20店舗以上薬局法人は損益率上昇

【2021.11.24配信】厚生労働省は11月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)調査実施小委員会を開き、診療報酬改定の基礎資料となる医療経済実態調査の結果を報告した。法人立保険薬局の損益率は6.6%から6.4%に減少したが、補助金を足すと令和元年度と同様の水準だった。一方、薬局法人の店舗数別では、「1店舗」「2〜5店舗」「6〜19店舗」で損益率が悪化しているのに対し、「20店舗以上」では逆に損益率が上昇していた。


法人立保険薬局の損益率は6.6%→6.4%に減少/補助金を足すと令和元年度と同様の水準

 11月24日に公表した医療経済実態調査によると、法人立の保険薬局における令和2年度の経営状況は、損益率が6.4%となり、令和元年度の同6.6%から0.2ポイントの減少となった。

 上記はコロナ関連補助金を含めないものとなっており、「新型コロナウイルス感染症関連の補助金」を含めた損益率は6.6%となり、令和元年度と同様の水準になった。

 回答施設数は863。
 収益が減少、介護収益が上昇。費用が減少しており、経費圧縮に取り組んだこともみてとれる。1施設当たりの処方箋枚数は1万7019枚(年間)で令和元年度(1万7393枚)から減少している。

損益率は「1店舗」が2.4%→0.6%に悪化、「20店舗以上」は8.4%→9.3%に上昇

 法人立薬局の店舗数別では、傾向が分かれている。
 「1店舗」「2〜5店舗」「6〜19店舗」で損益率が悪化しているのに対し、「20店舗以上」では逆に損益率が上昇していた。

 「同一グループの保険調剤を行っている店舗数別」の法人立薬局では、「1店舗」では損益率が令和2年度は0.6%となり、令和元年の2.4%から4分の1まで悪化している。補助金を含めた損益率(令和2年度)は0.8%。回答施設数は95。

 同様に「2〜5店舗」では損益率は令和2年度は2.9%となり、令和元年度の4.0%から1.1ポイントの減少となっている。補助金を含めた損益率(令和2年度)は3.1%。回答施設数は256。

 「6〜19店舗」では損益率は令和2年度は6.3%となり、令和元年度の7.5%から1.2ポイント減少している。補助金を含めた損益率(令和2年度)は6.5%。回答施設数は161。

 「20店舗以上」では損益率は令和2年度は9.3%となり、令和元年度の8.4%から0.9ポイント上昇していた。補助金を含めた損益率(令和2年度)は9.5%。回答施設数は351。

 なお、法人立以外に個人立の薬局の経営実態も調査されているが回答数は41と多くはない。個人立薬局の損益率は令和2年度は9.9%となり、令和元年度の11.4%から1.5ポイントの減少となっている。補助金を含めた損益率(令和2年度)は10.4%。

病院は経営状況悪化も補助金で持ち直し傾向/診療所は補助金を足しても若干の減少

 ちなみに、病院では令和2年度の損益率が悪化している傾向だが、コロナ関連補助金を足すと損益率は令和元年度と同程度まで持ち直している数値が散見された。補助金の結果、令和元年度の損益率よりも上昇しているケースもあった。

 診療所の令和2年度の損益率は悪化傾向で、補助金を足しても令和元年度の損益率よりも若干下回っている数値だった。

診療側・支払い側ともに精査した上で次回以降に見解表明の意向

 結果の説明を受けて、日本医師会の委員は「見解は次回以降の中医協の場で述べる」と方針を示した上で、「コロナの影響が多くの医療機関において大きかったことは分かった。補助金でぎりぎり対応している。地域医療の確保に尽力したことがデータからも読み取れる」とした。

 支払側の健康保険組合連合会の委員も、「データは分析した上で議論させていただく。この場ではコメントしない」とした上で、「回答数は前回同様であり、非常に重要なデータだ。一方で、回答数が満足のいくレベルかについては、引き続きの課題だ」と述べた。

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