【厚労省・山本史大臣官房審議官】薬剤師の活動「本当に幅広になる」/「どの分野に踏み出すか、それぞれが考えていく時代に」/日本薬局学会で講演

【厚労省・山本史大臣官房審議官】薬剤師の活動「本当に幅広になる」/「どの分野に踏み出すか、それぞれが考えていく時代に」/日本薬局学会で講演

【2021.11.06配信】厚生労働省大臣官房審議官の山本史氏は、11月6日に開かれた日本薬局学会学術総会で基調講演し、今後の薬剤師のあり方について、「地域包括ケアシステムの中で薬剤師がぞれぞれの本来の使命を果たそうとした時には本当に幅広な活動が必要になってくる」と述べた。その上で、「それぞれの薬剤師が自分たちはこの分野に踏み出していこうということを1人1人考えていく時代になっていくかと思っている」とした。


 厚労省の山本史厚生労働省大臣官房審議官は、講演の中で、コロナ禍を取り巻く環境変化や昨今の医療技術の進展などを概説し、社会が大きく変化する中で、「薬剤師さんの役割、あるいは仕事の仕方はさらに変わっていくんだと思っております」と話した。

 地域包括ケアシステムにおいては、医療だけでなく住まいを中心とした介護や生活支援・介護予防など多くの領域があり、「さまざまな役割を持った皆様があった上で地域が構成されております。その中で薬局あるいは薬剤師の皆様がそれぞれ本来の役割を果たそうとした時には本当に幅広な活動をしていくことが必要になってくると思いますし、またそういったことが期待されております」とした。

 「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」のとりまとめに記載のある「今後の薬剤師が目指す姿」の項から以下の2つを抜粋して説明した。

●薬局は民間による運営が大半を占めるが、医療法において医療提供施設とされ、薬機法において医薬品を安定的に供給することが求められている、公的役割を担っている施設である。そのため、その業務を調剤に限ることはあるべき姿ではなく、医薬品の供給拠点としての役割を果たしていく必要がある。(薬機法改正により薬局の定義が改正され、薬局は調剤だけではなく情報提供や薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所であるとともに、医薬品の販売業の業務を行う場所であることとされている。) 

●処方箋枚数は、高齢者人口の増加等により当面は増加するが、将来的には減少すると予測されていることから、これまでのような医薬分業の進展に伴う処方箋の増加に対応したビジネスモデルは成り立たなくなり、薬局の本来の役割を発揮するためには、処方箋を持たなくても住民がアクセスできるような業務を行うべきである。調剤だけが薬局の役割であるかのような「調剤薬局」という名称が用いられる状況は変えていくべきである。

 その上で、「全ての機能をもしかしたら1つの薬局、1人の薬剤師さんが果たすのは本当に難しくなっていることもあります。その時にはそれぞれの薬剤師さんは自分たちはどうしていこうかと、この分野に踏み出していこうということを1人1人考えていく時代にもなっていくかと思っております」とした。

 さらに医療が多様化・複雑化する中で、「どうしても薬剤師さんの研鑽が必要。研鑽を積みながらぜひ活躍していただき、進化していただきたい」と期待を述べた。

OTC医薬品は「使用者の状態に応じて医師と連携」/データヘルス改革は「重複投薬チェックに効力発揮」

 そのほか、講演の中では医薬品の供給不安にも触れ、「後発医薬品を中心に品質の問題で安定供給に相当の影響が出ております。大変ご迷惑をお掛けしていることを申し訳なく思っております」と話し、「後発品企業への品質確保の体制強化を今一生懸命しております。また自治体の方でも査察体制の強化といったことに取り組んでおります」と取り組み状況を説明した。

 認定薬局については、入院や在宅療養などの療養環境が変化する患者にも切れ目なく連携して薬物療法を提供するために機能別の薬局認定制度を導入したのが主な目的と説明した。「認定薬局に向けて取り組んでいただければ大変ありがたいと思っております」と述べた。

 健康サポート薬局に関連してOTC医薬品における各ステークホルダーの役割にも触れ、「OTC医薬品であっても使用者と薬剤師さんの濃いコミュニケーションの中で、薬剤選択、アドバイスをしていただくわけですが、当然に使用者の状態に応じてお医者さんと連携をして健康相談や受診勧奨に大きな役割を果たしていただくのだと思っております」と述べた。

 データヘルス改革については、オンライン資格確認や電子処方箋などの活用によって「幅広く病院あるいは診療所薬局に導入していただくことで、重複投薬チェックという機能も効力を発揮すると思っております」と述べた。さらに電子お薬手帳については、「電子処方箋が目論見通りに整備されるとお薬手帳は要るのか要らないのか、もし必要であれば次世代のお薬手帳はどんな機能が必要になってくるのかということを考える時期にきている」と述べた。

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