急速な成長の一方で管理部門の成熟が追いついていない実情を産業全体が真摯に受け止め行動を
報道は中日新聞と、連携している東京新聞が初めに報道した。5月10日の市への取材を経て、11日朝に報道した。
その後、11日に市が謝罪会見をしたことから、一般紙各紙が報道、N H Kニュースでも報道された。コロナワクチンに関連して連日会見を行っている加藤勝信官房長官も会見の中で遺憾とするコメントを発するなど、時間を追うごとに波紋は大きくなった。
11日夜になって、スギホールディングスは経緯とともに謝罪文を公表した。会長夫妻を慮った秘書の使命感が背景にあると説明し、「このような事態を引き起こしましたことを深く反省し、頂戴いたしました、多くのご意見・ご指摘を真摯に受け止め、今後このようなことがなきよう努めてまいります」とした。
コンプライアンス違反であり、一早いコロナワクチン接種を望む人が思うように受けられていない情勢を考えれば、著しく社会的な感覚を逸脱した行為だったことは否定できない。
一方で、こうしたことを起こしてしまうリスクは、当該社だけでなく多くのドラッグストア企業・薬局企業に秘められているのではないか。
コロナ禍でヘルスケア産業に向けられている社会の関心度はかつてないほどに高まっているからだ。一つ一つの社員の行動が、社会的にどのような意味を持つのか、今一度、慎重に検証することが求められる。
メディアの立場からすると、広報をはじめ、素晴らしい管理部門を持つ企業もあるが、製薬企業などに比較すると、相対的にドラッグストア企業・薬局企業の管理部門の脆弱さを感じることは少なくない。ドラッグストア企業や薬局企業が、急速に成長した産業であることの一つの影ともいえる。
コロナ禍でも営業を継続し、地域社会に大きな貢献を果たしてきた、そして、今この時間も貢献を続けている産業だからこそ、早急にコンプライアンスに関わる社員の外部研修をより充実させ、もう一段、成熟した産業へと発展することを願いたい。今回の騒動を対岸の火事と捉えることなく、産業全体が危機意識を高め、より信頼される産業へと発展する教訓とするべきではないだろうか。