【薬剤師養成検討会第2回】需給調査結果がすでに見えた“厚労省が示したある図”

【薬剤師養成検討会第2回】需給調査結果がすでに見えた“厚労省が示したある図”

【2020.09.13配信】厚生労働省は、薬剤師の養成や需給調査、在るべき姿などを話し合う「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」第2回を開催した。今回の議事進行は、前回を振り返り、薬剤師の「業務(役割)」「需給(調査)」「教育(養成)」の3つの観点から、委員に追加意見を求めることから始まり、今回のハイライトである需給調査の方法に対する賛同を得た形。


 厚生労働省は、薬剤師の養成や需給調査、在るべき姿などを話し合う「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」第2回を開催した。今回の議事進行は、前回を振り返り、薬剤師の「業務(役割)」「需給(調査)」「教育(養成)」の3つの観点から、委員に追加意見を求めることから始まり、今回のハイライトである需給調査の方法に対する賛同を得た形。さらに、今後の議事の進め方について新たな提案があった。テーマが広範に及ぶことから、今後は月に1回程度開催し、その都度、テーマを狭めて議論することが決まった。さらに、委員から「この場の議論がどのように生かされるのか」との質問があったことに対応し、各テーマの“出口”となる可能性のある対応について、次回会議で事務局から提示することとなった。例えば、薬剤師の国家試験の問題にかかわるテーマであれば厚労省内の「医道審議会・薬剤師国家試験制度改善検討部会」などにつなげる可能性がある、といった具合だ。
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COML山口氏「制度部会とりまとめ活用を」

 会の冒頭、座長の西島正弘氏(一般社団法人薬学教育評価機構理事長)は前回提示された委員の意見を参考にしつつ、「業務(役割)」「需給(調査)」「教育(養成)」の3つの観点から、委員に追加意見を求めた。
 まず、薬剤師の業務(役割)に関して、山口育子氏(認定 NPO 法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長)は、薬機法等制度改正に関する検討会として、厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会でとりまとめにも関わってきた経験から、制度部会のとりまとめの中にすでに薬剤師の在り方について文章化されたものがあるため、こういった既存の資料も本検討会に活用していくといいのではないかとの意見を示した。「話し合いの中で直接的に薬機法につながらない内容であっても、薬剤師の役割について議論が紛糾した部分もあり、とりまとめでは今後の在り方について文章化したものがある。その中に業務についていろいろな意見をとりまとめたものがあり、薬剤師の免許取得後についても触れられている。これらは今後に生かすという話でもあったので、役立てていただきたい」と話した。
 これに対し、事務局は次回の議論以降、参考資料として添付したい考えを示した。
 また、前回の検討会では、薬剤師の就職先の一つである製薬業界からの意見がなかったとして、西島座長は日本製薬団体連合会(日薬連)から推薦を受けて検討会に参加している平野秀之氏(第一三共株式会社執行役員渉外管掌)に、現状について意見を求めた。
 平野氏は、製薬企業における薬剤師の実情について、大きな流れとして、薬学教育に6年制が導入してから、製薬業界への志望者は減少傾向にあるとした。その要因として、病院や薬局では実習を通して将来の具体的な業務をイメージする場があるのに対し、製薬業界にはそういった機会がないことを挙げた。
 これに対し、後藤 輝明氏(日本チェーンドラッグストア協会常任理事)は製薬企業では新薬のチームが作られるが、特許切れなどに伴いチームが解散され、退職するという人がいることも考慮すべきではないかとの意見を示した。
 平野氏は「タスクチームの在り方などは企業によって異なる部分もあり、製薬業界全体としての傾向といえるかどうかは難しいところ」と応えた。

病院薬剤師会・武田氏「医師のタスクシフト」に言及

 続いて、武田泰生氏(一般社団法人日本病院薬剤師会副会長)は、服薬管理が点から線になる中で、薬局の業務が見えづらくなる部分が出てくる可能性もあるのではないかと指摘した。さらに、病院の機能分化が進む中、それぞれの機能に応じた薬剤業務はどういうものか、どのような連携が必要なのか、ほかの職種との連携、薬学的に必要な業務についても検討していただきたい、と要望を示した。オンラインや機械化の話のほかに、そういった今後必要となる業務についての議論を求めた。「医師のタスクシフティングの話も出ている中、病院の薬剤業務も考えていただきたい。それによって需給が見えてくる部分もあるのではないか」と話した。
 政田 幹夫氏(大阪薬科大学学長)は国公立大学の医学部教授兼付属病院薬剤部長を務めてきた経験から、国公立大学では、薬学の人が医学部教授になるということが進んでいるが、私学ではまだまだ浸透していないのではないか、と問題提起した。医療のチームとして医師と薬剤師がそれぞれの役割を理解することが教育の現場がなされなければ、「形だけで病棟にいってお薬をみても、医師と本当にかかわっているのか。教育の現場で医師に薬剤師が何をする人か教えていなければ、医師が薬剤師の役割を認知していないということになるのではないか」と指摘した。実際に一部業界紙で医師が薬剤師の業務を知らないと語っている記事を引用した。
 鈴木 洋史氏(東京大学医学部附属病院教授・薬剤部長)は、「前回の検討会で病棟で薬剤師がかなり高度な業務まで行っており、今や病棟業務は薬剤師がいなければ回らなくなっていることはお話しした通り」と指摘。その上で、「ただし、それが全国の中小、規模を問わず展開できているかというと、まだそうではないと思うので、今後、国公立大学から人材を送って広げていくことも必要ではないか」と話した。
 COML山口氏も、自身が特定機能病院に集中的にヒアリングを行った経験から、「他職種の人が薬剤部が何をしているのか知らないということはうかがえた。それが調査から5年経った今も大きくは変わっていないように思う。患者の理解もそうだが、他職種からも理解されていないことも問題」と話した。

病院側は「テクニシャン」に言及

 次にテーマは「需給(調査)」に移った。
 武田 泰生氏(一般社団法人日本病院薬剤師会副会長)は、地方の会員からは特に不足しているという訴えがあり、会としても対策を検討している現状を説明。しかし、「強制的に地域に勤めていただくわけにもいかない。例えば検討会で薬剤師だけでなく、薬学生の意識調査などをしていただけると有難い」と話した。
 早乙女 芳明氏(東京都福祉保健局健康安全部薬務課長)も、少数職種である行政薬剤師の立場から、東京都内でも23区とそれ以外でもだいぶ需給状況が違うと指摘。「エリアに関してはきめの細かな調査をお願いしたい。もう1つは少数職種にも一定の議論のスポットを当てていただきたい」と話した。
 政田 幹夫氏(大阪薬科大学学長)はOECD内でも突出して人口対比でみても日本の薬剤師が多い現状に関し、厚労省の見解を質した。
 事務局は「各国の医療制度も異なるため、この数字をもって比較は難しいのではないか」との考えを示した。「日本の薬剤師の業務をどう考えるかという視点も含め、需給調査を行っていきたい」と話した。
 これに対し、政田氏は「テクニシャンの問題もあるのではないか。諸外国ではテクニシャンを生かして、薬剤師は能力に応じた本来の業務を行っているのではないか。わが国でも真剣に考えていかないといけない」と話した。
 テクニシャンに関しては野木 渡氏(公益社団法人日本精神科病院協会副会長)も言及。「アメリカなどでは薬剤師がテクニシャンとチームを組んでやっている。今のままでは病院では薬剤師が足りないので、抗がん剤の投与など、いろいろな業務がある時に地方では対応できなくなるのではないかと、深刻に受け止めている」と話した。
 そのほか、宮川 政昭氏(公益社団法人日本医師会常任理事)は、薬剤師の就職先のデータを参照し、「薬局への就職が近年急増している一方、ほか(病院や診療所など)はほぼ横並びである」と指摘。勤務先別の偏在も「見定めていく必要がある」と話した。
 安部 好弘氏(公益社団法人日本薬剤師会副会長)は、薬機法などで薬局は継続的にモニタリングを行うような現状もあるとし、「(人口対比の薬剤師数の)数字が多いことは事実だが、どうモニタリングの中で連携していくかなどの現状を整理していくべき」と指摘。また、薬局に勤務する薬剤師の多さに関しては、診療所の数なども併記して考慮すべきで、薬局の人数だけを出して多寡を議論するのは適当ではないとの考えを示した。
 武田 泰生氏(一般社団法人日本病院薬剤師会副会長)は、病院だけでなく、薬剤師がどういう業務をやるのか、薬剤師でなければいけない業務を、厚労省の通知「調剤業務の在り方について」なども踏まえて議論していくべき、と指摘。「それが一層固まると、需給の問題もはっきりしていくのではないか。何でも薬剤師がやるというのは職能としては不安になる。質の高い薬剤師がどれだけ必要かという議論をしてほしい」と話した。

和歌山県立大・赤池氏「地域によっては薬学部新設も」 /日医・宮川氏「ドラストに就職しながら診療所で研修を」

 次に、テーマは「教育(研修)」に移った。
 COML山口氏は、前回の検討会で「薬剤師の国試に通らなかった人に何らかの資格を設けてほしい」という意見が出たことに関連して、「そもそも薬剤師を養成すべきなのが大学の使命。大学の入り口や、質が保てるかどうか疑問を持つような定員を設けている、そういったことが問題の本質ではないか」と指摘した。現在においても薬学部を新設しようとしている大学があるという動きに対し、「薬学部に入れば薬剤師になれると思っている保護者や学生は多いのではないか。そのような現実ではない中、新設を認めてきたことは議論すべき」と警鐘を鳴らした。
 その上で、「医師の臨床研修のように一緒に臨床研修を行っていく必要がある」と指摘した。
 後藤 輝明氏(日本チェーンドラッグストア協会常任理事)は、「大学から、臨床教育が現場で必要なのは理解しているがカリキュラム上、これ以上、臨床は増やせないという意見をいただいたことがある。文科省と厚労省がそれぞれに議論していることもあると思うので、ここは厚労省と文科省が連携しつつ厚労省にリーダーシップを発揮して中心的に議論を進めてもらうようにしてほしい」と話した。さらに、「大学が臨床研修をする時に、各地域の医療機関にさらなる協力をお願いしたいと思う」と話した。
 赤池 昭紀氏(和歌山県立医科大学客員教授)は、「地域によって薬学部がない都道府県もあり、薬学部の新設が望まれている状況もある。いたずらには慎むべきだが、地域によっては新設も必要ではないか」と話した。
 鈴木 洋史氏(東京大学医学部附属病院教授・薬剤部長)は、「教育段階では科学に基づく論理的な思考が求められる。今はデータサイエンスが必要になっているので、このあたりの拡充が必要だと思う。これにはAIも含まれる」との考えを示した。
 政田 幹夫氏(大阪薬科大学学長)は、「臨床を分かっている教官がどれだけいるのか。多いとは思わない。薬学部のある大学で医学部を持っている大学も多くない。これで臨床、臨床といってもお題目だけになっているのではないか」と話した。
 宮川 政昭氏(公益社団法人日本医師会常任理事)は、「研修に関して、医師会がアシストできる部分として卒後がある。卒後研修の中で診療所から医療の中を知るということ、患者さんをみることができる。卒後1年でも2年でも、すぐにドラッグストアに行くのではないということになれば、いろいろな患者さんのことをしっかり分かって患者さんに接することができる。例えば就職した中で1年など、これは分割してもいいと思うが、診療所の中で卒後研修をする。ここにはドラッグストア企業さんの協力もなければいけないし、製薬業界が社会貢献としてどうアシストするかも必要になる」と指摘した。

3つを調査「タイムスタディ」「先進事例」「働き方」

 次に今回のハイライトである需給調査の方法が説明された。
 事務局は、推計規模は25年後の2045年までとすること、需要の変動要因として、①将来の医療需要変化、②業務の変化、③薬剤師の働き方を加味するとした。
 一部、これまでの統計情報を活用できるが、新たに調査が必要となる項目として、以下の3つがある。1つ目が薬剤師の業務の実態を把握するための「タイムスタディ調査」。2つ目が機械化やIT化などの「先進事例調査」。3つ目が常勤・非常勤・勤務時間などの「働き方調査」である。
 このうち、「タイムスタディ調査」に関しては、医療機関も含めて10以上の施設での調査を予定している。
 調べるのは①外来で処方箋1枚に対応する時間、②在宅医療の患者に対する業務、③健康サポート機能に関わる業務、④その他(在庫管理、教育等)の業務――である。
 「先進事例調査」では、ICTの活用や機械化により、対人業務の充実とともに調剤業務の効率化に取り組んでいる施設、薬剤師の働き方改革に取り組んでいる施設を対象。薬局10施設程度、医療機関5施設程度を調査する。
 「働き方調査」では、薬局5000施設程度、医療機関1000施設程度、および各施設に従事する薬剤師2万5000人程度を対象に、勤務薬剤師数(常勤・非常勤別、男女別)や雇用形態別の勤務時間、産休、育休の取得状況、勤続年数、調査日における調剤等の業務に要した時間(外来、入院、在宅)を調査する。

日薬・安部氏「“なぜ”につながる調査を」

 これに対し、藤井 江美氏(一般社団法人日本保険薬局協会常務理事)は、「今般、服薬フォローアップなど業務に変化もあるので、そのあたりも反映していただきながら測ってほしい」と要望した。
 安部 好弘氏(公益社団法人日本薬剤師会副会長)は、業務時間調査に関して、「開局時間は薬剤師が常駐するので、調査項目に開局時間の要素をいれてほしい。また薬局は24時間の相談対応が求められているので、やり方はいろいろあると思うが、かかりつけ薬剤師のための業務、在宅の業務での24時間対応にかかっている労力についても調査してほしい」と要望した。
 宮川 政昭氏(公益社団法人日本医師会常任理事)は、「薬局とドラッグストアで携わる趣変わってくるのではないか。ドラッグストア企業では化粧品販売に従事する場合もあると思う。そういった業種の区別というものの入ってくるのではないか」と指摘した。
 武田 泰生氏(一般社団法人日本病院薬剤師会副会長)は、病院薬剤師1人が1病棟に対応しているとなると算定はできていても十分に業務展開されているか疑問のあるところ。業務内容は時間をかけるだけ濃くなるので、かかった時間だけでなく業務がどの程度できているのかも検討してほしい」と要望した。
 なお、先進事例の調査対象に関しては、現在決定しておらず、委員の意見なども取り入れつつ、検討されるということが事務局から説明された。
 安部 好弘氏(公益社団法人日本薬剤師会副会長)は、先進事例調査に関連して、ICT化は賛成との立場を表明した上で、「効率化に視点が集中している気がしており、ヒューマンエラーの防止等、質の向上の観点も加味してほしい。さらに調査対象が薬局10、医療5なので、大多数の薬局に当てはまるということではない可能性がある。それぞれの環境やニーズに合ってこそ、効果が期待できるので、導入するとよいという単純なミスリードにつながらないよう、調査対象については立地、地域特性を合わせて結果として紹介できるような調査にしていただきたい」と話した。
 働き方調査に関連して、藤井 江美氏(一般社団法人日本保険薬局協会常務理事)は、自社の調査を紹介。自社172薬局からの回答の結果として、1薬局の勤務薬剤師は8時間換算で5.3人だが、常勤換算では4.8人だったとした。「時短勤務の人も多数いるので、実人数だけでなく、常勤換算すると何人かを考慮をしていただきたい」と話した。なお、鑑査システムに関しては66%が導入済みという結果も示し、「実調査にプラスしてアンケート調査を取り入れることも行っていただきたい」と要望した。
 安部 好弘氏(公益社団法人日本薬剤師会副会長)は、「調査票のそれぞれの項目が何の目的で調べるのか、どういう関連性があるのか整理していただく必要性がある。細かなことだが、産休育休があるが、そもそも有休は取得されているかといった労働環境は非常に重要。長く働きたいと思われる薬局かが重要で、データを規模や薬剤師数とクロス集計することで何らかの解析ができるのではないか」と指摘。さらに、「地域偏在などの指摘も出ているが、働き方の調査の中で“なぜなのか”という要因が紐解けるような要素があるといい。雇用の状況でも、募集するタイミング、例えば欠員が出てから募集しているのか、どんな時に募集しているのか、就業で満足している点はどこなのか、不満足はどこなのか、偏在を改善するヒントになるのではないか」と話した。
 武田 泰生氏(一般社団法人日本病院薬剤師会副会長)は、「タイムスタディ調査においては、薬剤師以外の人のタイムスタディも調べていただく必要がある」と指摘した。

年明けにも調査結果を公表。今後はテーマごとに月1回開催

 今後の予定に関して、事務局は年度内に新たに調査が必要なものに関して、年明けごろまでに報告し、その結果を持って、需給の分析を行いたい考えを示した。データは年明けにも示されるが、データに分析を加えるのは検討会の役割となる。その後、年度明け、4月にも検討会として、一定の需給に関するとりまとめが行われる見込み。
 宮川 政昭氏(公益社団法人日本医師会常任理事)は、議論のテーマが文科省にかかわる部分もあり、検討会には、オブザーバーとして文部科学省高等教育局医学教育課も出席しているが、本検討会の議論は、文科省でどう生かされるのか質した。
 これに対し、文科省からの参加者は、「会議の内容についてはまだ議論の過程ということもあるが、文科省内には議論の過程を報告している。今後、とりまとめの内容に応じて対応していくことも考えている」と応じた。
 最後に事務局は、今後の議事の進め方に関連して、「テーマが広範にわたるという面もあるため、月に1回程度、それぞれテーマを絞った開催を検討したい」と提案し、了承された。また、検討会の構成員についてもテーマに応じて必要があれば、オブザーバーを追加しながら議論を深めたいと話した。

すでに見えた薬局の需給調査の結果

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