セルフメディケーション前進させる機器設置要件を評価
――令和8年度調剤報酬改定について、受け止めをお願いします。
塚本 調剤報酬改定についてコメントさせていただきます。今回の改定において、同一グループでの店舗数のみを対象とする施設基準の撤廃、これは300店舗ルールですね、それから調剤基本料の3-ハ、こちらへの基本料2点の加点や敷地内薬局に関する一律引き下げである連座制の見送りが実現できたこと。これは現在のチェーン展開や面分業の推進に貢献する内容として高く評価をさせていただきます。
また調剤ベースアップ評価料4点や、調剤物価対応料の新設によって医療従事者の処遇改善や経営安定化への寄与が期待されているということで、大変ありがたく思っています。そして地域支援・医薬品供給対応体制加算、そこにおけるセルフメディケーション機器の設置。血圧計や体重計などの設置が要件となりましたが、これは予防医療、それからセルフメディケーションに対して大きく前進していける施策と受け止めており、ありがたく、この点についても評価したいと思っています。それともう1つは在宅関連の点数の拡充です。われわれが目指す地域医療機能の強化とも完全に一致しているというところで、今お話したところが良かったなという点でございます。
よって、薬剤師が調剤はもとより調剤の体制整備と医薬品安定供給について貢献をしていかなければいけないということと、もう1つはセルフメディケーションに対してどのような取り組みをしていくのかという方向性、さらには在宅への取り組みという方向性が示されたと理解をしております。
「月40万回」をどう外していくかもテーマ
塚本 ここから先は、“しかしながら”、というところですけれども、同一グループの300店以上の要件の削除というところはあるのですけれども、一方で処方箋受付回数が月40万回というところが残ったので、これは一歩前進というか、半歩前進ではあるのですけれども、40万回というところが1つのネックになっています。今後、どうこの40万回も外していくかが、われわれチェーンとしては課題となります。
1つの薬局の質や機能への評価をわれわれはずっと主張、提言しているところではありますけれども、さらにそこを推し進めていただいて、企業グループのトータル規模、枚数によっての基本料が下がるみたいなところではなくて、1つ1つの薬局の質、それから機能でもって評価すべきであるというところを、団体として主張していきたいと思っています。
それから新規の開局規制、ここは門前等の立地と、あと都市部に関してです。都市部における新規開局抑制という名目の規定は、調剤報酬を通じた事実上距離制限にほかならず、ここについては断固反対をいたします。新規参入の抑制、それから患者様、薬局の選択の自由や利便性を損なうだけではなく、医療の中に競争原理を持ってくるかどうかということはまた別の議論があるかと思うのですけれども、やはり質を向上していく、あるいは生活者、患者様にとってより利便性を発揮するという面では、健全な競争が必要だと思うので、そこの点についても距離規制等で規制をすべきではないというのがわれわれの主張であります。
処方箋調剤と同時に提供するセルフケア・セルフメディケーションに注力
塚本 個々の調剤薬局の質と機能に対する正当な評価への仕組みへの展開というところについて注目していきたいと考えています。経営効率化や規模拡大は、ドラッグストアチェーンが今まで重ねてきた企業努力の結果、成果であると思っているので、これを否定する制度は業界の発展を阻害して、ひいては国が推進する医療費適正化等の妨げにもなってしまう。こうした主張に関して、ロビー活動をしていきたいと考えています。
もう1つの大きなテーマとしては、面分業の推進、それとセルフケア、セルフメディケーション体制の強化というところです。私どもはセルフケア、セルフメディケーション、ここは処方箋調剤と同時に提供していくことによって、予防から未病対策について、われわれはさらに強力に取り組んでいきたいと考えています。
もう1つ、薬剤師の資質向上と医薬品登録販売者の資質向上についての取り組みを一層進めていきたいと考えています。患者様1人1人の、あるいは生活者1人1人の悩みに寄り添って、この人なら安心して相談できると感じていただけるような専門家の育成について、さらに注力していきたいと考えています。
単に専門家は薬を販売する、あるいは薬の服用法を説明するだけではなくて、NPhAの藤井会長からもアウトカム評価を求めていきたいというご提言がありましたけれども、このお薬を飲んでこういう形で成果が出る、いわゆる治療に貢献ができるというところまで関わっていきながら、どうやって1人の生活者の治療成果を上げていくのか、あるいは予防と未病に対する成果を上げていくのか、そういったところに薬剤師を中心として、医薬品登録販売者、それから管理栄養士等の知見も生かしながら、生活者そのものの生活全般に関わっていくということを進めていきたいと考えています。
つい最近、健康サポート薬局から健康増進支援薬局へというようなビジョンも示されましたけれども、当協会としてはそれに近い“リテールヘルスケア”と言いますか、「ドラッグストア=リテールのヘルスケア」、そんなふうに認識していただけるような取り組みを推進します。「健康生活拠点」というような言い方もありますけれども、治療から予防まで、その範囲でどう薬の専門家が関わっているかということが浸透していくよう取り組んでまいりたいと思います。
ドラッグストアには利便性があり、アクセスしやすいという利点があります。アクセスは物理的に生活の近くに存在すること、医薬品に対するアクセスもそうですが、専門家に対するアクセスも提供できます。こうしたアクセスを確保しながら、どうやって医薬品の適正使用を守っていくのか、アクセスだけではない適正使用確保、この両方が実現できて初めて医療提供者、あるいはファーマシューティカルケアの担い手になれると思います。よって、より信頼される薬剤師なり医薬品登録販売者を養成していくためには、それなりの知識や、最新の医薬品情報等も学んでいかなければいけないので、その資質向上に向けた取り組みは欠かせないと思います。
投資による効率化に対し、結果的にマイナス算定になることへの問題意識
――これら取り組みを進めるための政策提言についてはいかがですか。
塚本 チェーン企業としてDX投資やAI薬歴などに投資し業務を効率化すれば、薬剤師が患者様と向き合う時間が増え、同時にセルフケア、セルフメディケーションへの質も上がります。しかし、そうして利益を出しても、制度上調剤報酬が下げられ、利益が相殺されてしまう。これでは企業としての投資意欲が削がれてしまいます。効率化を実現した企業が評価されるどころかマイナス査定されるのは絶対におかしい。個々の薬局の質や機能を正当に評価すべきだという主張は、今後も強く続けていきます。
求める政策提言としては、スイッチOTC化の推進が挙げられます。加えて、スイッチOTC化を推進したものについては、薬剤師が販売実勢を積み重ねていきながら、その効果と安全性を高めていき、アクセスについてエビデンスが確立されたものについては、医薬品登録販売者にタスクシェアをしていく。これはリスク区分の変更にもつながっていくと考えます。そういう健全な流れを作っていくということが望ましいのではないかと思います。
処方箋枚数は「1人当たりの枚数減少」となればわれわれの成果である
塚本 処方箋発行枚数が50年ぶりに減少へと転じた背景には、高齢化や人口減少の影響が大きいと推測されるが、予防医療や未病ケアが結実し、1人当たりの処方箋枚数の減少に繋がれば、国民の全体的な疾患リスクの低減、健康寿命の延伸にも寄与することにもなり、薬剤師の皆様には国民の健康に貢献することへの誇りを持っていただきたい。薬剤師はファーマシューティカルケアの担い手として、地域の方に対して食の好みや体質を含めた生活全般に関わっていきながら治療効果を上げていくことに関与していける。処方箋枚数が減ってしまったら収益が減るという考え方ではなくて、それは診療報酬とか調剤報酬という形とは違うものの収益化にもつながっていくかもしれません。
「攻めの予防医療」という言葉もありますけれども、ワクチンは予防に入っていると思うので、そこに薬剤師がどう関与していくのかということも、処方箋枚数を減らすことに貢献をすることにつながってくるとも思えるので、処方箋枚数が50年ぶりにマイナスになったということだけではなくて、一人当たりの枚数が1年間でどれだけ減ったのかというところはわれわれの評価である、成果であるというところも訴えかけていきたいなと思っています。
薬剤師職能の向上にともに取り組む
――他団体との連携に関して、お考えをお願いします。
塚本 これまでお話ししたように、日本薬剤師会様、それからNPhA様、そして当協会の連携に関しては、薬剤師職能に対してどう今まで以上に貢献できるのかというところを一緒に取り組むことが一番分かりやすいと思います。職能の拡大も含めて、それから職能の質の向上も含めて、協力し合っていくのが理想ではないかと思います。
それから対物ということに関しては今回、日本薬剤師会様が音頭を取っていただいて、地域の医薬品の在庫と供給を見える化していくという取り組みが進んでいることは、地域の患者様にとって、生活者にとって有意義なことだと思っています。そういうことについての協力をより一層深めていく必要があろうかと思います。
医薬品の安定供給に関しては、(日薬の)岩月会長からもお話がありましたが、医薬品だけではなくて、予防、それから未病に生かすことができるようなサプリメントや、機能性食品のようなものも含めて、地域でどこにどのような品ぞろえがあって、どういうふうにお困りごとを解決できる機能があるのか、お互いにお互いを知り、対物ということに対しても、より興味を持って能動的に知っていこうという姿勢が大切だと思っています。
「血圧測ろうぜ!」共同企画のように連携で規模感がつくれる
塚本 最近、私は「血圧測ろうぜ、測ろうぜ」って言っています。「あいつはすぐそのことを話す」と思われているかもしれませんが、私はすごくいい活動だなと思っているのです(編集部注:7月・8月に薬局・ドラッグストア・病院企画である「血圧測ろうぜ!」を実施)。個店別にみると取り組みの濃淡があるのですけど、実際には治療していない高血圧の患者様がいる中で、“薬局に行ったら血圧の話をしてくれた”とか、“ひょっとしたら私、治療したほうがいいんじゃないか”というタッチポイントを地域の中でどれだけ持てるかが大切だと思うのです。それが日本全国で3万カ所ぐらいになってきた時、“あれ?血圧、ちょっと舐めてたけど、これ、よからぬことが将来起こるんじゃないか?”と感じてくれる生活者が出てくれば、そこで早期治療ができるわけです。早期発見もできて、もしかしたら薬を使わなくても、そのほかのもので治療というか、QOLを維持できる行動変容が起こるのではないかと思います。
将来の処方箋枚数を減らすことにつながるかもしれないけれど、その方たちのQOLを維持することに貢献ができる。薬局経営もそうだしドラッグストア経営も、調剤チェーン経営においても医薬品以外のところで関わりが増えていくことになる。処方箋だけに関わるのではなくて、より多岐にわたって、店頭で相談ができる、そういう拠点を作っていくことについて協力し合うのが必要だなと考えます。
生産性を上げることは優秀な人材を呼び込むためにも必要
塚本 それから社会保障との関連も重要です。今、社会保障をどう維持していくのかということを国民お一人お一人が考えていく中で、調剤に関わる部分を含めて医療費は重要な位置を占めています。薬剤師、そしてそのほか医薬品登録販売者もそうだし、この産業に関わるという人たちにおいて、生産性が上がらなければ給料も上がっていかないですよね。
今回は(調剤報酬ではベースアップ評価料という働き手についての)評価がありました。評価していただいたのですが、効率性を高めていくということが非常に重要だと私は思っています。例えば製造業がここ30年どれだけ生産性を上げてきたか。医療や介護、ここに関わっている産業はここ30年、1人当たりの生産性はフラットです。そうなってくると、今の日本、国そのものを税収も含めて維持していくという面では、ほかの産業に人がいかなくなって、医療や介護の従事者が増えていく一面もあります。やはり、ここはDX化とか効率性を高めていきながら生産性を上げて、社会全体がよくなるような構造を産業自体がとらなければ、結局は行き詰まってしまいます。
――重要なご指摘ですよね。そこのジレンマを上手く組み合わせていく議論が進めばいいのかなと思いました。
塚本 私は、「リテールヘルスケア」であるドラッグストア産業を、イノベーションを起こせる人材が新卒で第1希望として目指すような産業になるよう、そんな環境づくりも必要であると考えています。