一般用医薬品のリスク区分については、これまでも薬事審議会の意見を聴いた上で変更することが可能だったが、令和7年に閣議決定された規制改革実施計画や「強い経済を実現する総合経済対策」において定期的に検討する仕組みの検討が求められたことから、医療用からスイッチされ要指導医薬品として3年間が経過した製品を対象に区分変更の要望申出を受け付ける仕組みがつくられた。企業からも見解(区分変更の検討を進めることの適否について)の作成を求めることとしている。
今回の議論はそのスキームに従い、ロキソプロフェンについて指定第2類医薬品への移行要望が提出されたもの。製造企業としては、今回は「ロキソニンS」などを販売する第一三共ヘルスケアから、副作用発現状況や適正使用の状況、仮に区分変更がなされた場合の適正使用の確保や情報提供の徹底施策に関する資料が提出された。新スキームの第1弾といえ、そもそも政治決定色の強い施策ともいえる。
なお、基本的に安全対策調査会として意見をまとめたのちに、安全対策部会で審議をすることはこれまでと変更がなく、ロキソプロフェンについては過去に調査会で指定第2類薬が適当との意見がまとめられたのちに部会で第1類薬が適当と判断が出されたこともある。今回は調査会としての方向性として指定第2類医薬品として条件付きで適当との意見が集約されたもの。
周知の通り、1類薬と2類薬(指定2類薬の区分もある)の大きな違いは、販売できる専門家が薬剤師のみから「薬剤師又は登録販売者」となること。また情報提供に関しても「義務」から「努力義務」へと変わる。
同日の議論では、薬剤師の立場として参考人出席した藤尾絵美氏(株式会社ルミエイル あかね色薬局・代表取締役兼管理薬剤師)から、薬剤師は一般用医薬品の販売時に、患者ごとの状況に応じて販売をしない判断も行っていることや、販売チェックシートを用いた該当性判断ではなく薬剤師の知識を用いて症状と合致しているか、重複薬はないか、どのような使用頻度かーーなどによって判断していることなどを説明した。使いすぎでかえって頭痛の副作用が生じることも説明するなど、副作用や受診勧奨も適宜行っているとした。
全薬協、リスク区分移行に伴う上乗せ制度に否定的見解
参考人として出席した全日本医薬品登録販売者協会理事の今井雄一郎氏は、症状ごとに研修を行っていると現状を説明した。e-ラーニングの活用により、より多くの登録販売者に研修を実施できるよう体制を整えているとした。ロキソプロフェンのリスク区分移行後の研修上乗せには否定的な見解を示し、「今後も研修していく所存だが、すでにさまざまな仕組みが設けられているため、これ以上の制度の上乗せよりもむしろ情報提供規定における努力義務の本来の趣旨について改めて確認することが大事ではないか」と述べた。「研修の受講と情報提供の努力義務の履行について、経営者に対して一層の指導をお願いしたい」とした。
日登会、情報提供や受診勧奨、副作用対応の研修実施している現状から「リスク区分移行でも対応可能」
同じく参考人出席した日本医薬品登録販売者会会長の横山英昭氏は、論点として「登録販売者が使用者に対して適正使用を十分に説明することができるのか」「副作用が疑われる場合に医療機関等への受診勧奨するなど適切な対応ができるのか」という2つがあると指摘した上で、現在、登録販売者は毎年度少なくとも12時間以上の継続的な研修を受講することが義務付けられており、情報提供や受診勧奨、副作用対応について受講していると説明。ロキソプロフェンのリスク区分移行後も適切に情報提供を行い、安全な使用につなげていくことは十分可能との見解を示した。
JACDS、リスク区分移行後も「現在、薬剤師が販売時に実施しているのと同様の対応」行う意向
参考人出席した日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)政策統括の森俊一氏は、ドラッグストアはOTC医薬品市場の90%を占める地域インフラであると指摘した上で、現状の薬剤師によるロキソプロフェン製品の販売フローを説明。「決して形式的な受け渡しではない」とした上で、リスク区分移行後も同様のフローを維持する意向を示した。
フローは企業によっても異なるものの、①書面を用いた販売可否のスクリーニング、②成分特有の適正使用の説明、③使用者の理解度確認ーーを行っているとした。仮にロキソプロフェンが指定第2類となった場合については、「現在、薬剤師が販売時に実施しているのと同様の対応で、引き続き登録販売者でも安全性の確保ができるように努めてまいりたい」と話した。
石井伊都子委員、登録販売者の研修に疑問「実践的研修はあるのか」
調査会委員の石井伊都子氏(千葉大学医学部付属病院薬剤部 教授・薬剤部長)は、「薬剤師のような状況判断が、(登録販売者に)本当にできるのか」と疑問を呈した。「藤井参考人(薬剤師)からは薬学的知識から患者さんの訴えから判断し、医療機関との重複がないようにする、いろんな状況と患者さんの症状から“この人に本当に適切な投与になるのか”ということを判断しながら、薬剤を選択していくというふうな説明があった。一方、登録販売者の皆様からは決められた説明を研修によってしっかりやっていく、だから販売ができるというようにあったが、薬剤師のような状況判断が本当にできるのか、というのが第1点としてある」と話した。
また、研修について「どのような研修なのか。eラーニングという言葉があったが、それ以外に実践のような研修はないのかと」とした。
委員の舟越亮寛氏「NSAIDsにおいては高齢化でトリプルワーミーの問題も大きく」
委員の舟越亮寛氏(亀田総合病院 薬剤管理部長)は、副作用という審議観点や現行の販売制度の成熟度などに疑問を投げかけた。
副作用という論点については、事務局資料に「未知の副作用」についての言及があったことに対し、「未知な副作用については類薬のイブプロフェンに比べて大きな差はないが、一方で、重篤な副作用疾患別対応マニュアルでは、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)といったものがこの薬剤関連であるNSAIDsについては、上位の方に毎年、副作用として挙がっている。重篤な副作用の早期発見も含めて、判断は未知の副作用だけで比較することではないのではないか。このまま2類に落とすという考え方は少し懸念。逆にイブプロフェンを1類に上げるぐらいの副作用がだいぶ出ているなということを今回、まざまざと医療従事者としては感じた。NSAIDsを簡単に、軽率に使っていくことではないんだということを改めて感じている」との考えを示した。
NSAIDsに関しては、ロキソプロフェンが要指導薬になった頃よりも高齢化が進んでいる中にあって、トリプルワーミー(Triple Whammy)の問題も大きくなっているのではないかとの懸念も示した。「ARB、利尿薬を飲んでいる方がOTCでロキソプロフェン等をちょっと2日間飲んで、急性腎障害で救急に運ばれてくるケースが年間でも散見されている。そういった急性腎障害についての議論は当時はなかった。やはりリスクとしてしっかりと確認をしておくべきだと思う」(舟越氏)と述べた。
NSAIDs服用における薬剤性頭痛についても言及。「藤尾参考人からもご説明あったが、NSAIDsに関しては頭痛学会や神経学会においても若い女性で片頭痛に対して使っているケースが指摘されており、薬剤性の、習慣性の頭痛で多重受診されている方々がいらっしゃる」と指摘した。同日の事務局資料でも「薬局ヒヤリハット事例」として、薬剤師のプレアボイドでキャッチされ、保健指導、受診勧奨を行った事例が報告されている。
患者背景としての妊婦については、注意喚起の徹底として外箱だけでなくPTPシートへの印字も「消費者に気づいてもらえるような安全対策としては必要」とした。「一般用医薬品についての包装関係については、箇条書きで通知が出ているが、イメージ図がないため、やはり、きらびやかな箱を(消費者は)見てしまう。安全対策の表示については一丁目一番地としての表示として検討いただきたい」(舟越氏)とした。
加えて現行の販売制度についても疑問を提示。「ネット検索するとロキソプロフェン20箱セットなどが販売されている。先ほど(藤尾委員からご説明のあった)薬局での対面対応であれば、たくさん売るということはないとは思う。ネット販売については制度部会の議論ではあるが、長期服用のリスクがある。ネットを含めて一度整備をされた方がいいと思う」と指摘した。
薬剤師と登録販売者の対応の違いについては、「薬剤師は情報提供は義務であり、その上で指導をしフォローアップのようなものまで充実してきた。登録販売者の方々については、情報提供が努力義務で、質問に応じてというところは義務になっていても、十分な情報提供をして、患者さん・消費者のリテラシーを上げていくようなやり取りをするような部分からすると、併用薬のチェック、疾患のチェックを含めていろんな妥当性の判断が必要。チェックリストの照合だけではNSAIDsの領域は非常に危険だと思っている。制度の努力義務を義務にするぐらいの形を取ることで、薬剤師のレベルの向上に合わせて登録販売者の方々のレベルの向上という形になってくると思う」と話した。
伊藤清美委員(武蔵野大学薬学部薬物動態学研究室 教授)はOTCは配合剤もある点で、薬剤師対応ではなくなった際に懸念があることを示した。
事務局、リスク区分変更に際し条件付与は「可能」
これらの意見を受け、事務局は販売制度の法改正は別の場となるものの、ロキソプロフェンのリスク区分変更において、「薬剤師と同様の対応」とすることや「薬局・店舗販売事業者の開設者への依頼条項」として条件のような形でつける対応は可能との見解を示した。その際は調査会として条件を整理する必要があるとした。
舟越氏「薬局の薬剤師の方の横についてOJTなどはあるか」「態度習得は知識だけでできるものではない」
舟越委員は登録販売者の研修について、「例えば薬局の薬剤師の方の横について、トレーニングをするとか。2類移行した時に1類でやっていた薬剤師の対応内容などを実地で研修するなどは、各社でやられているのか」と質問した。「現場での OJTも含めて、カリキュラムがあると、もう少し薬剤師と登録販売者の連携の教育が(できる)。医学、歯学、薬学も医療コミュニケーションのところについては、知識・技術・態度の中で、態度の部分は一緒に連携しながらやっていかないと、集合研修や知識だけでできるものではないと思っている」(舟越氏)。
これに対してはJACDS森参考人が企業によってスタンスが異なるとの前提に触れた上で、「店舗販売業で薬剤師がいるところに関しては、そういった研修をしている。調剤併設店についても、当然薬剤師がいるので登録販売者への研修はできている。ただ、体系的にどうするか、どういう形にもっていくかは、今後の課題」と話した。
事務局、薬剤師と登録販売者の連携について研修等であり得るとの考え
座長は「区分変更する方向性について異論はないものの、ただし、いろいろな条件を考えるべきだと、そういったような方向性かと思う」と総括。
これを受け、事務局は全体的な合意事項ではないものの、議論の内容のまとめとして次のように述べた。
リスク区分移行に関わる要件としては①製造事業者の対応と、②販売事業者における対応ーーの 2つのポイントがあるとした上で、製造事業者の対応に関しては、必要な注意喚境をしっかり包装等で強調すること、登録販売者への情報提供や研修に関するもの等の資材の提供を継続して行うことなどが考えられるとした。副作用状況等の調査・報告を求めることなども考えられるとした。
一方、販売事業者においては、学習の徹底が必要。販売時の努力義務の規定に関連しては、初めての購入者を筆頭に薬剤師による対応でも求めているチェックリスト等を用いた注意事項の説明を求める。薬剤師と登録販売者間の連携については、店舗の中で連携して対応する方法なども考えられるとした。「必要に応じて、登録販売者が対応できないところは、薬剤師が研修を行うなど店舗でできるような形でお願いするというところはあるのではないか」(事務局)。
これを踏まえ、調査会としては条件付きでロキソプロフェンについて指定第2類医薬品とするということで座長がとりまとめた。
今後、さらに座長と委員で調整した上で必要な条件の詳細を整理し、安全対策部会へ調査会の意見をして示す予定。
なお、日本薬剤師会は調査会の上部審議会である安全対策部会の委員であり、部会で意見表明する見込み。