【厚労省】医療用医薬品の流通改善ガイドライン改訂を発出

【厚労省】医療用医薬品の流通改善ガイドライン改訂を発出

【2024.03.01配信】厚生労働省は3月1日、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドラインの改訂について」を発出した。「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会報告書」(令和5年6月9日)に基づき、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」での議論を踏まえ、医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差等を是正し、適切な流通取引が行われる環境を整備することにより、さらなる流通改善を図っていくため、流通改善ガイドラインの改訂を行ったとしている。現行からの主な追加、変更点は以下の通り。


医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差、薬価差の偏在の是正を図る

 「(2)改訂について」において、ガイドライン改訂に至った経緯や趣旨を追記している。
 令和2年末に発覚した後発医薬品企業の不祥事を端緒とした一連の供給不安や、いわゆるドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス2と呼ばれている事象が顕在化した結果、国民に必要な医薬品が届かないという保健衛生上極めて重大な問題が生じている現状を踏まえ、「革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市」、「医薬品の安定供給」を確保する観点から、流通や薬価制度、産業構造の検証などの幅広い議論を行うため、令和4年9月、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(以下「有識者検討会」という。)を立ち上げ、13 回にわたり検討を行い、令和5年6月、それまでの検討結果をまとめた報告書が提出されたと経緯を説明。

 その上で、同報告書では、医薬品の取引において、メーカー、卸売業者、保険医療機関及び保険薬局といった流通関係者全員が、流通改善ガイドラインを遵守し、医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差、薬価差の偏在の是正を図り、適切な流通取引が行われる環境を整備していくべきであるとされており、さらなる流通改善を図るため、今般、流通改善ガイドラインの改訂を行うとした。

医療上の必要性の高い医薬品については「別枠」に

 「3 卸売業者と保険医療機関・保険薬局との関係において留意する事項」では、以下の通り、医療上の必要性の高い医薬品については「別枠」とすることとした。

○ 「医薬品の安定供給」を確保する観点から、特に医療上の必要性の高い医薬品として基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定品、血液製剤、麻薬、覚醒剤及び覚醒剤原料については、価格交渉の段階から別枠とし、個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉とすること。
○ これまでも単品単価交渉を行ってきた新薬創出等加算品等についても、引き続き単品単価交渉を行うものとし、流通改善が後戻りすることのないようにすること。

根拠と妥当性に関して、「地域差や物価上昇等を考慮した人件費や流通コスト等」を追記

 さらに、根拠と妥当性に関して、「地域差や物価上昇等を考慮した人件費や流通コスト等」と追記した。

 ○ 医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉は、個々の医薬品の価値を反映した銘柄別の薬価収載を行う現行の薬価制度とは相容れない行為である。また、安定供給に必要な流通コストを考慮しない値引き交渉6を行うことは、一次売差マイナスの一因となり、医薬品の安定供給や卸売業者の経営に影響を及ぼしかねない。
○ こうした観点から、卸売業者は、個々の医薬品の仕切価に安定供給に必要なコスト(地域差や物価上昇等を考慮した人件費や流通コスト等)を踏まえた適切な価格設定を行うとともに、交渉を行う双方が、その根拠と妥当性を説明するなどにより、価格交渉を進めること。

“同一の納入単価”での取引を各卸売業者に求める交渉などは厳に慎むこと

 「ベンチマーク」を用いた交渉については、「一方的な」を追記したとともに、「同一の納入単価」での取引を各卸売業者に求める交渉などは厳に慎むこととした。

○ 取引条件等を考慮せずにベンチマークを用いての一方的な値引き交渉や取引品目等の相違を無視して同一の総値引率を用いた交渉、取引条件等を考慮せずに同一の納入単価での取引を各卸売業者に求める交渉などは厳に慎むこと。
○ 価格交渉を代行する者に価格交渉を依頼するに当たっては、価格交渉を代行する者がこうした交渉を行うことがないよう流通改善ガイドラインを遵守させること。

返品を「慎む」ものを列記/「厳格な温度管理を要する医薬品」など

 「4 流通当事者間で共通して留意する事項」で返品の扱いに関して、特に慎むものを列記した。

(1)返品の扱い
○ 品質の確保された医薬品の安定供給、不動在庫・廃棄コスト増による経営への影響、さらに偽造品流通防止の観点から、返品の取扱いに関する流改懇の提言(平成 18 年)を踏まえた対応を行うこと。
○ 特に、以下に該当する医薬品の返品は、卸売業者及び保険医療機関・保険薬局等とも互いに慎むこと。
① 厳格な温度管理を要する医薬品の返品
② 有効期限を経過した医薬品の返品
③ 開封された医薬品の返品
④ 汚損、破損した医薬品の返品
⑤ 卸売業者と保険医療機関・保険薬局等との契約により「返品不能」と指定されている医薬品の返品
⑥ その他、価値、安全性等が棄損されている又はそのおそれがあると合理的に認められる医薬品の返品
⑦ 在庫調整を目的とした医薬品の返品

「保険薬局は、自らの店舗で不足している医薬品について、系列店舗や地域における連携により、可能な限り不足している医薬品の調整に努める」

 「一社流通」や供給不足時に関して、さらにはGS1 識別コードの利活用推進も記載。
○ 一社流通を行うメーカーは、自ら又は卸売業者と協力し、その理由について、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと。また、一社流通を行うメーカー及び卸売業者は、その医薬品の安定供給を行うこと。
○ 医薬品の供給量が不足している状況においては、流通関係者は、以下の項目について留意すること。
・ メーカー及び卸売業者は、在庫の偏在防止に努める。
・ 卸売業者及び保険医療機関・保険薬局は、必要な患者に必要な医薬品が行き渡るよう、過剰な発注は控え、当面の必要量に見合う量のみの購入を行う。
・ 保険薬局は、自らの店舗で不足している医薬品について、系列店舗や地域における連携により、可能な限り不足している医薬品の調整に努める。
○ 変動情報を含んだ医療用医薬品特定用符号表示について、医療安全(取り違え防止)、トレーサビリティ確保(回収等)、流通効率化、さらに偽造品流通防止の観点から、変動情報を含む GS1 識別コードを適切に表示するとともに、製品の商品コードを一般財団法人医療情報システム開発センターに登録すること。流通関係者は、医療安全の観点から GS1 識別コードの利活用を推進すること。

新たにウェブサイトでの公表措置を明記

 「第2 厚生労働省による関与」では、新たにウェブサイトでの公表措置を明記した。

○ 公表後に同様の事案を繰り返し行うなど改善の見込が無く、適正な医薬品流通に支障を来すものと厚生労働省が判断した事案については、ヒアリングや指導を行い、その詳細について流改懇への報告や厚生労働省のウェブサイトで公表するなど必要な措置をとる。

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