山本会長は、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売」、すなわち零売については、もともとは分割販売のことであり、これを整理していく流れであるとの認識を示した。
検討会でもこれまで、零売に関する経緯は資料提出されており、零売(医薬品の分割販売)は古くから薬局間の売買を中心に薬局で行われていたことが示されている。明治時代の「薬品営業並薬品取扱規則」(いわゆる「薬律」)においても零売の用語が用いられていた。薬機法(昭和35年法律第145号)の施行時においても、薬局において分割販売(零売)が可能であることが明記され、要指示医薬品(医師の指示によって販売可能な医薬品)以外の医療用医薬品を薬局において販売することが可能だった。2005(平成17)年から薬事法の施行に伴い、従来の「要指示医薬品」の名称を処方箋医薬品に改め、医師等から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく販売することができないようにするとともに、処方せん医薬品の範囲を明確化した。加えて、「処方せん医薬品の取扱いについて」(平成17年3月30日付け薬食発第0330016号医薬食品局長通知)において、法律上は処方箋によらず販売が可能となっている処方箋医薬品以外の医療用医薬品についても
処方箋に基づく販売を原則とすることや、やむを得ない場合にのみ販売すること、販売の際には医療上の配慮が必要であること等を通知した。平成25年の法改正により、薬局医薬品(処方箋医薬品以外の医療用医薬品が含まれる)を新設し、販売規制(対面による販売等)を明確化。「薬局医薬品の取扱いについて」(平成26年3月18日付け薬食発0318第4号医薬食品局長通知)においても処方箋医薬品、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の考え方は変わらなかった。令和4年8月には、「やむを得ない」場合に限らず、日常的に医療用医薬品の販売を行う薬局が増加し、不適切な販売方法の広告等が見受けられることから、適切な販売方法等について再周知する通知を発出していた。
8月4日の検討会でも事務局は災害時などの「正当な理由」による販売は継続する上で、それと別に「やむを得ない場合」を規定する方針を示していたもの。
山本会長は、これまでの経緯について「分割販売を整理しようという流れの中で、制度としては厳然として残る中で、ただ制度の使い方については一定の基準があったものと認識している」と述べた。
「ただ、それがさまざまな議論を生んでいる。ならばそこは規制をした方がいいのではないか、ということは行政府としては考えること。我々(日薬)としては、そうならないように気にして対応したつもりだ」とした。
「ただ、その考え方は今ある“零売薬局”というものを擁護するものではない。それは邪道だと思っている。本来あるべき姿をどうするのかの議論だと思っている。法律的にはそういうものがあるから、という言い方をされれば、なくした方がいいという議論が出てくる。全体の仕組みで支えている。残ってきた零売をいうものを規制するのであれば、本来の姿に規制するべきで、必要なものまで規制するのは過剰な規制だ。国が当初考えた方向に進んでいないから規制するという議論が起きているという気がしている」と述べた。
「いずれにしても規制するといっても、何を規制するのか。零売そのものを規制することはあり得ないと思っているし、そうはなっていないと思っている。必要な社会制度が閉ざされるなら、国にとっても不幸だ」とした。
具体的な「やむを得ない場合」の要件案への捉え方についても記者から質問が出た。「かかりつけ薬局」や「一時的・最小限度の量」「記録と医療機関への報告」などが要件案として出ている。
これらについては、山本会長は「医療機関への報告については分からないが、かかりつけ薬局で記録を残して、薬局で少ない量を売りました、ということは今まで以上にそれほど大きな規制ではない。どうしてそうしたか、どのくらい売ったか、記録は残すことはあってよい。それは規制されようがされまいが残すもので、過剰な規制ではないと思う。しかし、それに加えて条件を付けられるのは嫌だと思う。かかりつけ薬局でも“このケースは売れない”ということはあるので、そういう判断をするのが薬剤師。条件設定に合っていれば売っていいんだというなら、それはただの機械。薬剤師としてただやってねということを、あえて文に書かれるなら、それはちゃんと仕事をしていなかったのか反省するところもある。書かれていなくても、薬剤師は記録を残しておくんではないか」と述べた。
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